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欧州代理店との取引条件改善により長年の赤字体質を脱却

 

A社(工具メーカー) 

大型工具メーカーのA社は、欧州での製品販売は、古くから付き合いのある欧州各国の代理店経由で行い、ドイツに設立したA社の子会社が各国の代理店管理を行ってきた。しかし「欧州では安価な中国製品との競合が年々激化している」といる理由でこれらの老舗代理店からは常に価格の引き下げを要求され、事業利益は赤字が続いていた。

調査結果

  1. まずは現地で顧客や代理店に直接ヒアリングを行った。その結果、A社製品と実質的に競合する製品は欧州製品であり、価格も中国製品の約2倍であることがわかった。
  2. A社の海外事業部は欧州の代理店や、代理店を統括する現地法人社長(ドイツ人)の話を鵜呑みにし、市場調査を長年していなかった。また調査の結果、欧州の競合先は隔年で継続して製品の値上げを行っていることも判明した。
  3. 長年A社と取引をしてきた各国の代理店は、A社製品や部品販売で、かなりの粗利を稼いでいた。毎年A社に対しては値下げを要求する一方で、市場でA社製品を販売する努力は全く行っていなかった。代理店のオーナーは高齢で、積極的な販売には興味がなく、既存顧客への継続販売とメンテナンスだけで十分な利益を稼いでいた。

対応

  1. 欧州の全代理店にA社の現状を説明した上で、過去5年間値上げしていないことを理由に製品、部品共に大幅値上を提示。受け入れられない場合は代理店を変更するつもりで交渉した。この結果、全代理店が要求を受け入れた。
  2. 今後は、基本的にA社の欧州子会社が販売の主導権(戦略等)を握り、代理店には販売できた際のマージンを落とすこと、また現地でのメンテナンス、部品交換を引き続き行ってもらうことを承諾してもらった。この結果欧州地域の業績は劇的に回復、初の営業利益黒字化を達成できた。
  3. 欧州子会社の現地人社長は解任。新たな社長が採用できる迄の期間は本社の担当マネージャーが長期出張で対応した。解雇に際しては現地弁護士と事前に打ち合わせ、若干の退職金支払いで決着をした。

ポイント

  1. 現場で広く情報を集めたことが一番のポイント。初回往訪時にオーナー達に自宅に招かれて話しをする中で、欧州各国の代理店オーナーが横でつながり、情報共有をしていること、複数の不動産や高級車を所有する等、A社製品の販売でかなり潤っていることがわかった。
  2. 歴史ある企業の場合、当初代理店開拓を行った人物が経営陣になっていることが多く、現場の責任者が、海外代理店への取引条件改善申し入れに躊躇することがある。当社の場合、先代社長が欧州市場を開拓したため、その後は赤字にも関わらず誰も取引改善を図ろうとしていなかった。
  3. 本件は、第三者である私たちが、現地で掴んだ事実や数字をベースに交渉後に想定される業績インパクトを明らかにし、代理店が離反した場合の対応等までも提案。経営陣の理解を得て、実行したことがポイント。