”ゼルダ休み”の報告~有給休暇を上司に認めてもらうって

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管理能力がないから?

“ゼルダ休み”を報告するゲームファンが続出。「だって発売日にやりたいから」広がるゲーム休暇、企業が認めるケースも」という記事が掲載されていたので、「ゼルダの伝説ってまだあるんだ、懐かしい」と思って読んでみました。

すると驚いたことがひとつ。それは、

「いまだに有給休暇取得の理由を言わせる企業が多いらしい」ということです。

私が働いている企業でも、以前は、従業員が有給休暇を取得する際は、「○○なのでお休みします」と上司に理由を報告していました。この企業、元々は財閥系企業の事業部門だったこともあり、「ずいぶんと体質が古いもんだ」と、着任した時に思ったのですが、この記事によると、どうやらかなりの企業が、いまだに理由を報告させているということにちょっと驚きました。

本来、有給休暇は従業員の権利なので、休む日程や期間以外に、その内容まで報告する必要はありません。企業側の事情で休暇をずらして欲しい場合は、上司と本人が話し合えば良いだけです。
海外で勤務していた時は当然のこと、銀行で働いていた時も、私は、休暇の理由を報告したことも求められたこともありません。では、企業はなぜ有給休暇を取る際に理由を聞くのでしょうか。

記事では、「ゲームをするための休暇(「推し休暇」)を快く認める企業も出てきている」とありますが、有給休暇は、従業員が休みを取ることでリフレッシュし、また仕事に向かうためのもの。言わば、従業員の生産性を上げるためのものです。ですから、その手段がゲームであろうが、家族との旅行であろうが、何となく休みたいであろうが、生産性さえ上がれば、事業運営には何の影響もないはずです。

理由を報告させるのは、「本当に休みが必要かどうかを上司が判断するため」、或いは、「報告させることで休む回数を少なくさせたい」と言う意図があるからでしょう。上司からすると、少ない人数で業務を行っているのに、部下に勝手に休まれたらたまらないということかもしれません。

本来、そんな理由で報告させる管理職は、「自ら能力がないことを公言しているようなもの」と言われそうですが、日本企業の場合、管理職が有給休暇の取得を管理しないと、取得する人としない人に差ができてしまい、それが組織運営に悪影響を及ぼすことを恐れているのかもしれません。

制度の問題、運用の問題

有給休暇取得率が高い欧米企業と日本企業を比較すると、かなり大雑把に言うと、欧米企業は人事制度がジョブ型なので、与えられた仕事ができるかできないかで従業員の評価が決まります。休みを取ろうが残業して働こうが、仕事ができれば問題ないですし、仕事ができないと判断されれば解雇されることもある。それに対して、メンバーシップ型の日本企業では、個人よりも、どちらかというと部署や会社として結果を求められる比重が大きい仕組みになっています。もちろん、昨今の人事評価制度では、個人の努力や成果が反映される制度にはなっていますが、実際にその評価制度を厳格に運営している企業は少ないはずです。そもそも日本の企業では、仕事で結果が出せなかったからと言って解雇されることはまずありません。

このため、「有給休暇は取らなきゃ損」と思う人は、有給休暇を100%取得します。有給休暇を取らずに働いたからと言って職位や給料が上がるわけでもなく、仕事で成果を上げてない人が有給休暇を100%取っても、大きく評価が下がったり、辞めさせられるわけでもないわけですから。(もちろん、有給休暇の取得は人事評価とは全く関係ありません)
その反対に、取らない人は、「上司への印象を悪くすると昇給や昇格に影響する」と思っていたり「自分が休むことで周りに迷惑をかけたくない」という人が多いようです。

休む人がいれば、その仕事を誰かがフォローしなければなりません。それがあまりに頻繁に起こると、「何であの人は休んでばかりなのか!」という不満が出て組織運営に支障が出ます。そういうこともあって、管理職は、有給休暇の取得理由を都度確認することで、従業員に対する有給休暇取得の心理的ハードルを上げているのかもしれません。

本来、有給休暇を100%取得する人は、優秀で生産性が高く、同じ仕事をしていて休みを取らない人は、休暇を取得する人に比べて生産性が低いはずです。しかし、高度なスキルや経験が求められないような職場、従業員間でそれほど能力の差が出ないような仕事をしている職場であるほど、こうした「どうしてあいつは休んでばかりなのか問題」は起こりやすくなります。

そのような職場では、生産性が高い人が評価される仕組みがない、上司が部下の評価をシビアに行わない(感覚的にB評価が基準)、上司が個々の仕事の中身をあまり理解していない、ことが多いようです。このような、「日本的な人事評価制度の運用」を続ける限り、有給休暇取得の理由を聞く管理職はいなくならないのかもしれません。

尚、エクスペディアは毎年、各国の有給休暇の取得に関するデータを発表しています。(☞ エクスペディア 世界16地域 有給休暇・国際比較 2022発表!
各国と比較した、日本人の有給休暇に対する考え方を知ることができて面白いので、興味がある方は是非ご覧ください。

 

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