中小企業が成長する組織図の作り方③~組織図を書く前に

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なぜ組織が必要なのか

中小企業が成長する組織図の作り方②で、「企業が一定の規模になれば、経営者は箱に持たせる役割や管理職に与える責任と権限を再考し、それぞれの箱の責任者が、与えられた権限内で判断・決断できる組織を作る必要がある」と説明しました。

組織を作る際は、現在在籍している人をベースとするのではなく本来あるべき組織を考え、そこに人を配置するという考え方が正しいのでしょうが、中小企業でそれを行うのは難しいのが現実です。「本来あるべき組織」は今年1年を乗り切るための組織ではなく、例えば3年先の成長を見据えた組織となりますが、人的資源が限られる中小企業がその通りに組織を作ることはまずできないのではないかと思います。

企業が組織を作る理由は、経営者が一人で全てを行うことができないからです。逆に言えば、経営者が全ての役割を一人でこなす企業が組織の究極的な姿です。例えば一人で起業した場合、経営者は営業から経理事務まで全て自分で行います。事業が成長しても、一人で全てができるならば、従業員など雇う必要はありません。しかし実際は営業する範囲が広がり、仕入れする商材も増えると、それに伴う事務作業も増えます。EC販売が中心であっても、事業の拡大に伴ってオーダーの管理や商品の発送業務が増えます。更に売上を増やす為には、顧客の管理、リピートを促すアプローチ、新たな領域の商品開発やマーケティングも必要となるはずです。もちろん、これらを外部の企業に委託することもできますが、ある程度の規模になり、更に成長を目指すには組織内にスキルやノウハウを蓄積する必要が出てきます。

このように、事業が拡大するにつれ、経営者一人では手が回らなくなった部署の役割を誰かに任せること、それが企業の組織となります。しかし、多くの中小企業では部署に責任者はいるものの、経営者がほとんどの指示を出す、文鎮型の組織となっているのが実態です。

中小企業が成長する組織図の作り方①で、ラリー・グレイナー博士が唱えた企業の発展段階の図を引用し、企業が発展するには、第2段階の「革命の段階」を乗り越え、第3段階の「権限委譲による成長」に進む必要がある。そのために経営者は文鎮型マネジメントを辞め、自らの権限と責任の一部を社員に委譲する必要があると書きました。しかしこうしたマネジメントを長く続けた中小企業では、社員は経営者の指示に従うだけの「指示待ち人間」となってしまっています。いきなり「社員に権限と責任を委譲せよ」と言われても、経営者も社員も困ってしまうかもしれません。

共通目的、協働意欲、コミュニケーション

アメリカの経営者で「近代組織論の父」と称されるチェスター・I・バーナードは、組織を成立させる必要十分条件として、①共通目的、②協働意欲、③コミュニケーションの3つを上げ、これを確保することが経営者の役割であるとしています。更に、組織が存続するためには、この3つに加え「組織の目的が達成できたかという結果」と「協働意欲が確保され、個人の動機が満たされるためのプロセス」が必要となり、この協働意欲の確保のためには、メンバーが、組織に貢献したいと思えるようなもの(経済的には、例えば金銭的報酬、非経済的には、役職や社会的なつながり、所属していることへの満足等)を供与する必要があると指摘しています。

組織が「革命の段階」を乗り越え、「権限移譲による成長」の過程に進むことはもちろん大事ですが、そもそも組織を成立・存続させるには、経営者は組織に対し、共通の目的(MissionやVision)を示し、社員が「働きたい!(貢献したい)」と思えるような仕組みや、コミュニケーションができる環境になっているかを常に確認する必要があります。その中でも、バーナードは特にコミュニケーションを重要視しています。彼の言うコミュニケーションとは、指示や命令を受けた人がそれを受け入れるかどうかと定義しています。つまり、経営者が一方的に社員に指示をしても、社員がそれを受け入れなければコミュニケーションが成り立たないということです。これぞまさに「相手が聞いていなければ、言ったことにはならない」ということですね。ここは私も強く共感するところです。

「社員がちっとも自分で考えない」、「うちの社員は指示待ち人間ばかり」、こう嘆く経営者は、組織図を見直す前に、まず自分が組織に対して共通の目的を示しているか、社員が働きたいと思える環境や仕組みを作っているか、社内が双方向のコミュニケーションが可能な環境になっているかを見直すことから始めるべきだと考えます。

⇨ 企業は社風を変えられるのか(14)~多様化が組織にもたらすもの

⇦ 中小企業が成長する組織図の作り方②

⇦ 企業は社風を変えられるのか(13)~「もったいないお化け」を退治しよう

チェスター・I・バーナード 「経営者の役割 (経営名著シリーズ 2)」

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翻訳の問題なのか、それとも元々の文章が難解なのか、ちょっと読み解くのに苦労しますが、経営者や企業の管理職であればわかる部分がかなりあると思います。私個人は、企業の再生や成長を図る際に、①共通目的、②協働意欲、③コミュニケーションの3つは本当に大事だと思いますし、これまで何度もブログの中でお伝えしてきたことが書いてあるので、基本はやはり同じだなと改めて思った次第です。

ご興味がある方は是非。

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