企業は社風を変えられるのか(11)~自分より2つ上の役職の視点で考えてみる

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属人化している職場

製造業の現場で良く遭遇するのが、「与えられた仕事をきっちりやっているのに評価されていない」と思っている管理職です。ファンドが投資したメーカーには、マネジメントを入れ替えるだけで業績が大きく伸びる可能性を持つ企業があります。そのような企業の管理職にインタビューすると、こうした考え方をしている人が結構多いのですが、話を聞いているとまるで、自分の役割を超えて何かをすると損をするかのように考えている人が多いことに驚かされます。ジョブ型の企業であればいざ知らず、メンバーシップ型雇用が主の日本の企業で、「それは私の仕事ではありません」と平気で言う管理職がいることが、最初の頃は衝撃でした。

もちろん、製造現場では決められたことを決められた通りに行う必要があるので、社員や管理職の多くが、そのように考えるのも当たり前なのかもしれません。しかし、管理職が任された範囲のことだけを考えて業務を行っているような企業は絶対に伸びません。

例えば、私が支援したある企業には、給与体系が120パターンもありました。3交代24時間の現場は、部署によってスタートが8:00、8:15、8:30とまちまち。各シフトの勤務時間は、7時間15分の職場もあれば、10時間の職場もあり、交代時の引継ぎ時間は15分~45分とさまざま。更には休憩時間まで15分単位でバラバラです。理由を聞くと、各現場なりに人数を如何に抑え効率的に仕事をするかを考えてこれらのシフトを組んでいるのですが、部署間で勤務形態が大きく異なるため人の異動ができず、多能工化どころか、仕事が属人化してしまっていることで技術の伝承すらできていません。従業員はずっと同じ職場で同じ仕事を繰り返しているため、新たなスキルの習得もほとんどできません。そんな環境ですから、中途採用で入ってきた人が仕事のやり方を変えて効率化を図ろうとしても、「俺たちの職場は他とは違って特殊なんだ、素人は余計な口出しをするな」と言われてしまいます。

経営者の視点で見ると、こうした働き方を続けることは全くナンセンスですが、現場で働いている人にとっては自分たちが考えられるベストの働き方であるわけです。しかしこれでは、「各職場にとっては最適」なのかもしれませんが「全体にとっての最適」にはなりません。業績が悪化している企業では、経営者までもが近視眼的になってしまい、如何に眼先のコストを削って今を乗り切るかだけを考えた結果、自分たちが非効率な働き方をしていることに気が付かず、更なる業績悪化に陥ってしまうことも多いのです。

二つ上の視点で考える

こうした事態を防ぐためには、従業員に「任されている仕事を二つ上の役職から考えさせる」ことが効果的です。担当者であれば係長ではなく課長、課長であれば部長ではなく本部長や担当役員、部長であれば社長の視点を持って、自分の任された仕事をどのように判断するかを考えさせる「訓練」をするのです。

なぜ「一つ上」ではなく「二つ上」の視点なのでしょうか。それは、一つ上の視点では見える範囲が今とそれほど違わないからです。例えば営業員が主任の立場になったとしても、どちらも基本的な仕事は今期の営業目標を達成することです。課員と主任の間にそれほど考え方の違いはありません。しかし、これが営業課長になるとどうでしょうか?課長になると、自分の課のマネジメントという視点が必要になります。単に今期の営業成績を追いかけるだけでなく、今いる人材をどのように育成するか、Aさんはどのような能力がある人で、力を伸ばすためには何が必要か、X社の担当はBさんが良いのかCさんにするべきか、来期の目標を見据え、今どんな種をまいておくべきなのか、等々。各営業員に任せるべき仕事の内容や目標、どのように彼らのエンゲージメントを高め、課の業績を上げるかを考えなければなりません。

製造現場も同じです。製造ラインで同じ作業を繰り返している人が、職長の更に上である係長の視点を持って仕事をすると、自分の工程だけでなく、前工程や次工程とのつながりも意識するようになります。また自分の職場の人繰りやメンバーの育成についての必要性も感じるようになるでしょう。職長や係長が課長や部長の目線で仕事を見れば、自部門だけでなく工場全体の運営を考えた仕事ができるようになり、自然と周りとの連携も図れるようになるはずです。

もちろん、すぐにその人が2つ上の役職の仕事ができる様にはなりませんが、従業員が自分のことだけ考えて仕事を続けるのではなく、課長や係長の視点を持つことで、職場全体の目標を達成するために自分がどのような動きをすれば良いか、他の従業員と協力してどんなことをやれば良いか等々を考える癖がつきます。従業員が係長になった時は部長の視点、課長になった時は本部長や工場長の視点で仕事を考えることができるようになると、組織間に壁があるような職場でも、その壁は自然となくなり、組織は部分最適の集合体から変貌することができます。

これまで、「人を増やすとコストが増えてしまう」と思っていた人が、「人を増やすことによって時間ができるので、マニュアルを動画で作ることができる、その結果、新人教育の時間が短縮できて生産性が上がるはず」とか、「人を増やすことで現場への目が行き届くようになり、これまで問題があった夜間作業の安全性と生産性が劇的に改善するのではないか」等々、一人一人が大きな視点で仕事を捉えるようになります。

体質が古いメーカーでは、なかなかマネジメント人材が育ちませんが、このような考え方を常日頃からしている組織であれば、マネジメント人材が育つ土壌ができます。全ての職場でうまく行くわけではありませんが、「そんなの無理」と思わずに、まずはやってみて下さい。

このブログでも何度も指摘しているように、人は「考える」だけでは何も変わりません。「行動」させることで従業員の意識は変わっていくはずです。

 

⇨ 在庫を増やすとなぜ利益が増えるのか

⇨ 企業は社風を変えられるのか(12)

⇦ 企業は社風を変えられるのか(10)

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