企業の風土を変える(7)

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たまには違う場所で議論する

今週、会社の中期ビジョンを設定するために、管理職のワークショップを開催しました。こうした取り組みは今回で2回目です。これから10年をどう経営するか、単に現在行っている事業の延長ではなく、外部環境の変化も勘案しながらどうするべきかを考えるため、今回も会社を出て会議をすることにしました。前回は市内の高層ビルにあるホテルの会議室で海を眺めながら行ったのですが、コロナ禍ということもあって色々な意味で制限も多く、議論自体もちょっと物足りなかったので、今回は海辺のシェアオフィス兼会議室をお借りして行うことにしました。

この場所は元々海の家だったところを改装し、シェアオフィスとバーベキューもできるコーヒーショップを融合させたCoWorking Spaceです。「秋の海が見える場所で議論をして、終れば浜辺でバーベキューでもしようよ」などと暢気に話していたのですが、いやいやすごいです秋の日本海、大荒れです。写真ではわかりづらいですが、外はまさに嵐、風が建物を叩きつけ、波はそこまで迫ってきます。秋の日本海って太平洋と全然違いますね。

現在私がいる企業は、大手財閥系企業の一事業部門でしたが、昨年末にファンドに買収され、人員の大幅な削減を含む大きなリストラを経験しました。そんな会社ですから、新体制がスタートしても社員の心の中には、「自分たちは捨てられた」というような感情や、大手財閥企業の看板がなくなったこと、福利厚生、処遇が悪化したことに対する失望というか不安というか、ネガティブな感情がとても大きく残っています。

着任して感じたことは、社員は常に本社工場の中にいて、その中で起こることだけに関心を持っているということでした。例えば、自社製品の市場について答えられる社員は営業を除いてまずいません。その営業ですら、自分が接している顧客を中心とした状況しかわかりません。世の中の大きな流れや市場の変化、競合他社の動向に興味を持っている人は殆どいない状況です。

当たり前ですが会議は全て社内で行われます。その数は多く、かなりの会議に役員が出席するのですが、経営陣が出席する会議でも業務に関する細かいことばかりが話し合われます。しかもほとんどの会議が予定調和。質問をする人もほとんどいません。たまに若手社員が質問をしても、上司やその道のエキスパートに細かいことを言われると、話はそこで終わってしまいます。

この会社は自動車部品メーカーですが、ほとんどの製品がエンジン回りで使われるため、これからのEV化や自動運転の進化に伴うMaaSの進展によって自動車産業同様、かなり大きな影響を受けることが予想されます。ですから、中期ビジョンを策定するには、10年先の変化を予測し、そこからこの3年間で何を行うべきかを考えてもらう必要があると感じていました。

ただ、これまで競合先にも関心を持たず、顧客からのオーダーに応えるだけの、所謂、下請け的な仕事だけをしてきた企業です。某大手財閥企業の一部門というプライドもあるため、これまでのやり方を変えることには抵抗があるのかもしれません。実際、変革に向けて動き出せない社員も少なくありません。

まずは社内の他部署の人と付き合う機会をもつ

そのような背景もあり、中期的なビジョンのような新たなことを考える際には、少しでも環境を変えてみようと思い、高層ホテルの会議室や海辺のCoWorkingスペースを利用することにしました。

会議に先立ち、参加する社員には事前課題を課しました。事前課題と言っても何かを調べなければできないようなものではありません。自分の考えを書いてもらうだけです。例えば、「この会社の好きなところはどこですか」、「他社と比較して誇れるところはどんなところですか」、「この会社が抱える本質的な問題は何ですか」、「この会社らしさとは何ですか」等々、普段はほとんど意識したことがないようなことを真剣に考えてもらいます。ただ、普段考えないことを書くので、真面目にやればかなり時間がかかります。それに、「本質的な問題は何ですか」と問いかけても、この手の仕事を長くやっている私でも見つけるまでには時間がかかります。

事前課題を課す理由は、それなりに正しい答えを出してもらうことではありません。これからやることについて考えてもらいたいから行っています。いきなり「当社の10年後はどうなるのか」という議題で議論をしたとしても、そんなことについて議論したことがない人にとってはハードルが高すぎます。ですから、事前に少しでも自分の頭で考え、議論にスムーズに入れる素地をつくることがこの事前課題の目的です。

実際に出てきた内容を見ると、「これが好きなところ?」と思える答えや、そもそも競合他社がどんなことをしているかわからないので、想像で比較した回答もあり、それはそれなりに面白いものが出てきました。

事前の課題を通じて自分なりの問題意識を持ちながら会議に臨み、会議では2030年頃の自動車関連業界の姿を推測し、それらをベースに議論を行う。そして議論が終われば皆で歓談する。普段は業務のことしか話さない人たちや、顔は知っていても、どんな性格や人柄なのか良く知らない人たちと交流することが、意識を変えるための第一歩になります。「付き合う人を変える」の初歩、まずは社内で、普段ほとんど話をしない人と話すことからでも、兎に角始めることが大事です。

今回は7名程度のグループに分かれて議論してもらいましたが、この手のワークを行う際、私は、まず最初にグループ内でお互いの自己紹介をしてもらうこととしています。ただ同じ社内の人で自己紹介というのも何なので、今回は自分が所属している部署の課題や、それについて自分が思っていることを一つ話してもらいました。それだけでは仕事の話で終わってしまうので、自分の趣味や飼っているペットのこと等何でもよいからプライベートな話を一つしてもらいました。

このように、「まずは自分が思っていることをみんなの前で話す」という機会を作ることも一人一人の意識を変えて行くステップとしては重要です。

因みに、当社の所在地では新規のコロナ患者は殆どゼロとなっており、県の警報も解除されたため、会食は予定通り行いました。流石に嵐のような砂浜でのバーベキューは無理なので、室内で煙にむせながらの網焼きとなりましたが、それはそれで社員にとって、刺激があり楽しい時間となったようです。

  

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