企業の風土を変える(5)

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新たな行動を起こす

企業の風土を変えるためには、人と同じく、時間配分、住む場所、付き合う人を変える必要があるという話をしてきました。

「時間配分を変える」とは、同じ仕事の繰り返しをやめ、新たな情報を得たり、考えたりする時間を経営者や管理職が意識して作ること。「住む場所を変える」とは、企業が物理的に場所を変える、例えばオフィスを移転する、或いは社員にリモートワークさせる等により、働く場所を変えることです。時間配分や場所が変われば働く人の行動パターンが変わり、新しい発見やインスピレーションを得られる可能性があります。新たなインスピレーションは新しい発想につながり、それが企業の成長の源となります。

「付き合う人を変える」については、説明するまでもないと思います。人の成長は周りの環境にかなり影響されます。何事にも前向きな考え方の人と一緒にいると自分の考え方まで前向きになるように、どのような人と接しているかが社員の考え方や行動に大きく影響し、それが企業の風土を作っていきます。

「時間配分」、「住む場所」、「付き合う人」を変えることに共通するのは、新たに行動するということです。

「考え方」を変えるために「社風改革プロジェクト」で話しあっても何も変わりません。考え方を変えるには行動する必要があります。大企業に30年勤めた人が、「起業しよう」と考えているだけでは、いつまでたっても起業することはできないはずです。起業するためには、その準備を行う必要があります。毎日仕事に追われながら、「いつか起業したいなあ」と考えているだけではいつまで経っても起業することはできません。

体重を落としたいと思っている人も同じです。ダイエットを決意しても、これまでの食生活を変えたり、運動を始めたりという行動を起こさなければ体重は減りません。決意するだけでは何も変わらない、変わる必要性を感じ、本気で「こうなりたい」と思った姿を目指して動き始めないと変わることはありません。

必要性を感じさせ、姿をイメージさせ、仕組みを作って見守る

「時間配分」、「住む場所」、「付き合う人」を変える際、経営者は変わる必要性を理解させ、目指す姿を社員がイメージできるようにしなければなりません。自分たちが目指す姿に社員が挑戦できる仕組みを作り、その実行を見守る(モニタリングする)ことが必要です。

しかし、業績が伸び悩んでいるような企業には、そのような経営陣はいません。ファンドが投資した企業や外資系企業がM&Aを行った企業に新たな経営陣を送り込む理由もここにあります。PEファンドの投資を受け入れざるを得ない企業の経営陣をそのままにしておいても、業績が今まで以上に上向くことはありません。ファンドは3年で企業価値を2倍から3倍にすることを目標にしているため、今までと同じやり方をしていてはExitを成し遂げられません。

M&Aを実施した企業も同じです。M&Aを行う企業は、相手を買収する際に多額のプレミアムを支払っています。PMIでシナジーを出し、そのプレミアムを回収するためには、今までやってきた事業に何かを加えることで、業績を大きく伸ばす必要があります。伸び悩んでいる企業にないもの(マネジメント)を外から持ち込むことで、元々企業が保有していた技術やノウハウの活用方法を変え、社員の考え方に化学反応を起こす。その化学反応を起こすことができなければ、投資した企業の価値を高めることはできません。

早稲田大学大学院の入山章栄教授は、人・組織が新しい知を生み出すためには、自らの認知の範囲外にある「知」を探索し、それを自分が持っている「知」と新しく組み合わせる『知の探索』が必要であると説いています。

そこで探索された「知」を徹底的に深掘りし、何度も活用して磨き込み、収益化できるよう『知の深化』を行うこと。その『知の探索』で得られたものが、商売として成り立ち、企業に持続性をもたらすと説きます。(「世界標準の経営理論」ダイヤモンド社)

日本の企業は『知の深化』には非常に優れていますが、『知の探索』については十分とは言えません。戦後の成長期、日本企業は、貪欲に海外や他業種のビジネスモデルを自社の経営に応用し、新たな研究や事業にチャレンジしてきました。しかし、そうした企業の経営者も、今では目先の収益を追って、リスクを最小限にすることばかりに気を取られています。このため日本の企業では、中長期的なイノベーションが枯渇してしまっていると入江教授は指摘します。

こうした指摘は多くの日本企業、特に製造業に当てはまります。本来、製造業は、絶えずイノベーションが必要な事業であるはず。しかし、日本企業には中長期的なイノベーションマインドが枯渇しているため、そこで働く人材にも新たなことへの挑戦や、世の中を変えようという意識があまりありません。決められたことを決められた通りにだけ行う社員が増えてしまった。それが、日本の製造業が世界の流れから後れをとっている理由だと思います。

 

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