企業は社風を変えられるのか(4)~同じ釜の飯を食った仲間

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井の中の蛙

企業が変わる方法の3つめは「付き合う人を変える」ことです。企業自体が取引する企業を変えるということではなく、企業の中で働く管理職や社員が、接する相手を変えてみるということです。

新卒で企業に入社し、30年も同じ職場の人だけと付き合っていると、その企業の常識にどっぷりと染まってしまいます。私は銀行で19年間勤務した後に転職をしましたが、その時、銀行では「当然」と思っていたことが、一般社会では当然ではないということに初めて気づきました。銀行の業務はある意味特殊ですし、そもそも私が勤めていた住友銀行は、野村證券と双璧をなす良く言えば「厳しい」、今風に言えば「ブラック」な職場だったので、仕方がない部分も多いのですが、それでも振り返ってみると、世の中の「普通」とは随分とかけ離れたことをやっていたものだと思う部分が多々あります。

異なる業界の人と付き合うことで、自分のやり方がおかしいことに気づいたり、新たな発見をしたりすることがよくあります。違う世界で生活している人には、自分と全く異なる発想ができる人がいます。そうした考えを知ることで、自分の発想力が磨かれます。そして、彼らと話をする中で、自分の考え方や思い込みの間違いに気づくこともできます。

「何年も同じ釜の飯を食った仲間」であれば、相手が考えていることを理解するのは楽です。何が受け入れられ、何が受け入れられないかも大体わかります。同じ職場で仕事をしてきた人や、育った人たちとつきあうことは心地よいとは思いますが、いつの間にか仕事のやり方やものの考え方が、その企業での基準になってしまいます。ですから、違う企業や業界の人、異なる国や年齢、性別の人と付き合うことはとても重要です。企業にダイバーシティが求められる理由の一つもここにあります。ダイバーシティによって、新しい考えやインスピレーションを得られ、それが業務に活かされれば、それはとても素晴らしいことだと思います。

コアを大事にして変化を取り込む

一方で、自分のコアとなるものまでを変えることはできませんし、変える必要もありません。

銀行を辞めて数年経った時、ある企業の社長に、「伊藤さんは何%ぐらい住友銀行の血が入っているんですか?」と聞かれたことがあります。当時はその質問の意味が全くわかりませんでした。しかし後に、その社長から「自分の親も事業を引き継いだ自分も、借入が多くて住友銀行には随分といじめられた」という話を聞き、何を言いたかったのかを理解しました。聞かれた当時はそんなことはわからなかったので、「ほぼ100%ですかね」と答えたのですが、その社長も良く私と付き合ってくれたと思います。

皆さんが勤めている企業も同じだと思いますが、長い歴史がある企業や業績が良い企業には、そうなった理由があります。世の中で「けしからん」と言われる企業であっても、すべてが悪いわけではありません。前述の社長は住友銀行に随分といじめられたと言いますが、銀行からすれば、「貸した金を返してくれないから、厳しく取り立てをした」だけなのかもしれません。因みにその社長の親御さんが借りたお金は事業とは関係のない不動産投資のお金だったらしいですが、そこにもバブルで調子にのって借りた人が悪いという意見もあれば、不動産下落を予知することもできず、金を貸した銀行が悪いという意見もあるでしょう。

長い歴史がある企業や業績が良い企業には、長く引き継がれ、社風として社員の行動に染みついている経営理念や行動指針があります。そしてそのような企業には優秀な人材がいます。こうした企業に勤める人が、企業の社風(経営理念等)によって培われた自分の行動や考え方をコアとして持ち続けることはとても大事だと思います。

そして、このようなコアを持ちながらも、常に新しいものに接したり、吸収しようとしたりする姿勢が「変革」への原動力となります。 

  

⇨ 企業は社風を変えられるのか(5)

⇦ 企業は社風を変えられるのか(3)

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