企業は社風を変えられるのか(2)~時間配分を変えてみる

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変革を続けた500年企業

歴史ある企業が傾く原因のひとつは、決められたことや昔と同じ仕事のやり方だけを繰り返すことです。伝統芸能であっても時代の流れに伴い、少しずつ変化しています。それが企業経営となれば、顧客や競合、市場環境等の変化に合わせ、自分たちも変えていかねばなりません。

室町時代に京都で創業した「虎屋」は、後陽成天皇の時代(安土桃山〜江戸初期)から「菓子御用」をしていた記録があるなど、代々「御所御用」を勤めてきました。500年間もの歴史の中で、「虎屋」の代々の経営者は、常に変化に対応してきました。関ヶ原の戦いに絡んで西軍方の城主を匿ったり、明治維新で遷都に伴い東京出店を決意したり、関東大震災後は店頭販売を始め、1960年代には百貨店へ出店するなど商売の場を広げています。時代のうねりを幾度も経験する中で、経営者が常に変化へ対応をしてきた結果、今日の姿があります。

虎屋17代目の黒川光博氏は、「世の中が大きく動いたときに、少しは変わっていかなければという課題意識は、いつの時代にも通ずることなのかもしれません。もっと言えば、変えなければ時代に置き去りにされてしまうという意識もありますね。」と言っています。(Business Insider 2021年1月1日)

お菓子を作り続けて500年の老舗企業ですら変わり続けています。守るべきものは守りながらも、常に変化をしてきたことが、500年も続いた秘訣でしょう。

職人や工場の作業員が、言われたことや目の前のことに真面目にしっかり取り組むことは素晴らしいことです。しかし、リーダーであるべき経営者や管理職が、社員と同じ意識で仕事をしている企業は発展どころか存続すらできません。市場や顧客は常に変化します。世の中は自分たちのペースでは進んではくれません。周りの変化についていけないと、結局は時代に取り残されることになり、企業は衰退します。

かつて、写真フィルムのトップメーカーだったイーストマン・コダックと富士フイルムは、デジタルカメラが普及し始めた1990年代、将来的に写真フィルムの販売が大幅に落ち込むことを認識していました。しかし、この環境変化に対する両社の経営姿勢は全く異なりました。コダックは、デジタルカメラに利用されているコア技術を発明した企業ですが、目先の利益を最大化するため、コスト削減に注力しました。これに対して富士フィルムは、既存の高度な技術や知識資産を再利用・再配置して事業を多角化し、そこに資金を投入しました。

両社の結果は皆さんご存じの通りです。富士フイルムは、フィルムで培った技術を応用し、化粧品、サプリメントや医薬品の開発まで行い、2000年以降も企業価値を大きく伸ばしています。一方のコダックはデジタルカメラの商業化を見送るなどデジタル化の波に乗り遅れ、2000年代以降のフィルム市場の急激な衰退にともない2012年に倒産。2013年に企業規模を大幅に縮小して再上場したものの、最盛期6万人を超えた従業員は、現在約10分の1程度となってしまいました。

これらの企業の例を見ても、「変わる」、「変える」ということが、企業の存続・発展にとって如何に大事なことなのかがわかります。

「時間配分を変える」とは

大前研一氏が言う、人間が変わる方法の一つである「時間配分を変える」とは、例えば、ほとんど発言する機会がない社内のミーティング、付き合い残業や社内飲み会等、参加した意味がない無駄に使った時間を「余った時間」として認識し、その時間を「やりたいこと」、「やらなくてはいけないこと」に積極的に配分することです。もちろん、家で寛いでテレビを見ている時間やゴロゴロしている時間も含まれます。それを次につなげるリラックスの時間と考えるか、それとも漫然と時間を過ごしていると考えるかは微妙ですが。

「漫然」と過ごす時間が長いということは、考えない状態が長く続くことです。人間の考える力は年を追うごとに確実に退化していきますが、それは企業も同じです。定例の会議、本社への形だけの稟議、毎年同じように予算を策定し、同じように達成できず、下期になれば予算を作成し直す。こうした生産性が低い作業に多くの時間を費やす企業は世の中の流れから取り残されていきます。同じことを漫然と続けた時間が長くなるほど、経営陣や管理職は予想外の問題や周りの変化に対応できなくなります。社外の環境が変わっていくことに気づかず、自社が、所謂「茹でガエル」状態になっていることにも気づきません。

そうならないためにも、経営者や管理職は、常に「世の中の動き」、「競合他社の動向」、「他業界での成功事例」等々にアンテナを張り、「やりたいこと」、「やらなくてはならないこと」を考えて、事業運営に取り入れる必要があります。

企業が「時間配分を変える」とは、あまり考えなくてもできる仕事を漫然と繰り返すのではなく、外部の情報に敏感になり、考えるための時間を経営者や管理職が意識して作ることです。毎週、予算の進捗会議に1時間を費やしているとすれば、予算の進捗状況を先にメールで全員に送り、会議では次のアクションだけを打ち合わせる。そして残りの時間は、業界環境や異業種企業の取組について議論する時間にしてみる。

発言する必要がない社員は会議には出席させないで、外部のセミナーにリモートで参加させ、市場の変化や競合先の事業構造・戦略を考えられるようになる時間にすることもできるでしょう。また、社内コミュニケーションを活性化するため、管理職が1on1等によって従業員の話を聞く時間を増やすことも有効です。

コロナ禍の影響で、多くのことがリモートで出来る環境になっているため、経営者や管理職の考え方ひとつで企業は時間配分を大きく変えることができると思います。経営陣や管理職、社員が「考える」時間を作ることが、企業の変革につながります。 

 

⇨ 企業は社風を変えられるのか(3)

⇦ 企業は社風を変えられるのか(1)

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