企業の風土を変える(1)

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変えるのは難しい

企業再生に関わっていると、必ず出てくる話が「企業風土の改革」です。例えば、バイアウトファンドは、長い歴史を持つオーナー企業や、大企業で本流ではない事業部門や子会社に投資することが多いのですが、そうした企業では、従業員の年齢が比較的高く、昔ながらの仕事のやり方や年功序列的な人事評価が行われています。特に製造業の場合は、ダイバーシティとは無縁の男性社会で、女性管理職が一人もいないという企業も少なくありません。ファンドは、こうした企業を「ESGやSDG’sの観点から中期的な目標を立て、その目標に基づいて組織を作り変え、事業を軌道に乗せて、3~4年で企業価値を倍にできる」と考えて投資するわけです。

総務部長がリーダーとなって「社風改革プロジェクト」なるものを立ち上げ、「わが社の風土を変えるために、何をすれば良いか話し合おう!」と言い、社内の若手を集めて議論させるような活動も行われています。しかし、人が自分の性格を変えることができないように、創業以来培われてきた企業の社風を、数回のミーティングやスローガンを作って壁に貼ったところで変えられるはずがありません。

そもそも、「SDG’s?健康経営?よくわからないけどやっておいて」という経営者がいる企業で社風を変えることは、還暦を迎える人に「ヒップホップダンスを覚えてください」というぐらい難しいわけです。中小製造業の大半は、大手企業の下請け企業です。こうした企業には、企画やマーケティング機能はなく、顧客の要求に沿った品質の製品を、決められた期限までに決められた価格で納めることが仕事です。このため、決まり事を変えたり、新商品を考え、自らチャレンジする機会はほとんどありません。このような仕事のやり方に慣れてきた人に 「新しいことに挑戦する意欲が足りない!」と言って、経営者が「挑戦」や「変革」を社是やスローガンとして掲げても、何も行動は変わりません。そもそも、決められたことを決められた通りにやらなければならない仕事で、挑戦や変革を求めること自体、ナンセンスではないかと思ってしまいます。「今年は挑戦の年」、「これまでのやり方を見直して、コスト削減と生産性の向上に励もう」と言っても、社員に響くはずもありません。

時間配分、住む場所、付き合う人を変える

経営コンサルタントの大前研一氏は、「時間とムダの科学」(プレジデント社)の中で、「人間が変わる方法は三つしかない。一つは時間配分を変える、二番目は住む場所を変える、三番目は付き合う人を変える、この三つの要素でしか人間は変わらない。もっとも無意味なのは、「決意を新たにする」ことだ。かつて決意して何か変わっただろうか。行動を具体的に変えない限り、決意だけでは何も変わらない。」と言っています。

企業も同じです。ずっと同じことを続けていると、同じことしかできないようになります。業績が不振だから「風土改革が必要だ」と言って、赤字企業の「風土改革メンバー」が、新しい行動指針を作って壁に貼り、社員と語らい、全員に決意表明をさせたとしても、業績は良くなりません。社員に考えさせるだけでは何も変わらない。考えを変えさせるには行動を変えなければなりません。それもせずに、語らい決意表明をしても変わるはずがありません。ましてやそのファシリテイトをコンサルタントに任せれば何とかなると思っているとすれば、それは大間違いです。

長年、工場で毎朝ラジオ体操をしている50代のシニア社員に、ブレイクダンスの動画を見せて、「今はこういうダンスが流行っているらしい。この動画を見て、これからの私たちの朝の体操をどのようなものにすべきか考えて下さい」と言うと、一体どのような反応が返ってくるでしょうか。

「別に体操なんか今まで通りで良いではないか」「なぜ今更変える必要があるのか」「こんな激しいダンスしたら疲れちゃうよ」という反応になるはずです。風土改革についても同じです。

では、社風を変えるために経営者は具体的にどのようなことを行えば良いのでしょうか。

 

⇨ 企業の風土を変える(2)

⇦ 起業は形から入ってはいけない

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