中小企業の1on1ミーティング~まずは話を聴くことから

人の評価は難しい
人の評価はとても難しいです。企業は何をもって社員の能力を正当に評価しようとしているのでしょうか。
企業には、さまざまな人事評価制度があります。目指す方向や求めるものを理解し実践しているかをコンピテンシーという形にし、仕事の成果を数値で図るMBO評価と組み合わせて、「良い人材」をランク付けします。
こうした人事評価を持つ多くの企業では、社員の評価は普通から少し良い段階、10段階であれば4~8の幅にほぼ全ての社員が収まります。こうした人事評価では、10や9、1や2をつける社員の割合が決まっているので、当たり前ですが、このようなばらつきになるのですが、問題は、ほとんどの企業で、6や7の社員、つまり平均より少し上という社員評価が多くなることです。どうしてこのような評価結果になるのでしょうか。
私が支援したメーカーでも、人事評価の際はこのようなことが起こりました。
上司(マネージャー)が部下(メンバー)の評価をする際、余程問題がなければ、標準以下の評価はしません。特に管理部門では、殆どのスタッフが普通、或いは普通よりもやや良いという評価になります。
確かに、管理部門の仕事を数値化することは難しいので、このような傾向になりがちなのは理解できます。しかしこの会社では、営業も製造部門でも同じような傾向になっていました。
比較的目標の数値化がしやすい営業部門であっても、数値化された目標が本当に公平なものなのかという問題もあります。担当する顧客や地域、前任者から引き継いだタイミングによっても有利不利があります。本来はこのような環境を全て勘案した上で評価が行わなければ、正しい評価とはいえません。
中小企業は拘わらなくても
これまでの経験から、製造業のような業種では、管理職に評価研修を行っても、メンバーや仕事に対する評価基準は変わりにくいように感じます。それぞれやるべきことが決まっており、長年決められた方法で物を作ってきた人たちは、サービス業とはかなり考え方やマネジメント方法が異なります。いくら新しい人事評価制度の研修を行っても、なかなか考え方は変わりません。
人事部を持つ大企業や上場企業であっても、評価者が正しい評価を行える企業は多くはありません。そう考えると、社員数が少ない中小企業が「正しい人事評価」に拘ってもあまり意味がないのかもしれません。
中小企業の経営者がやるべきことは、正しく評価しようとすることではなく、企業が目指すものを示し、共に行動するよう伝えることです。そして、それを目指して仕事をすれば、社員にとっても良いことが起こると感じさせること。
そうやって、仕事に前向きになれる話を続ける場として、One on One(1on1)のような機会を利用すれば良いと思います。
中小企業では、経営者が社員ひとりひとりを良く把握しています。ですから、大企業のような評価システムに拘る必要はありません。それよりも、評価された社員が、企業の目指す姿に前向きになれるよう、経営者が社員の話を聴き、彼らに経営者の考えや期待を直接伝える機会を持つことの方が大切だと思います。
1on1に意味はあるのか
人材関連企業で働いていた時、1対1のミーティング(1on1)を月に2回行っていました。この企業は若手人材が多かったため、部署によっては、ほぼ毎日、上司が部下と面談を行っています。若手が多いベンチャーや成長企業では、従業員に対するこのような面談がとても効果的だと思います。
面談では目標達成のために、部下の話を聞きながらアドバイスをしたり、共に考えたりします。そして、最後にマネージャーは「大丈夫、君ならできる」とか「一緒にやってみよう」と期待を示し、部下の気持ちを前向きにすることに注力していました。
この企業にとって、1on1は上司の欲求を満たす場ではなく、部下の成長や育成を図る場でした。
1on1を、上司が部下の話を聴く場として活用している企業では、比較的組織運営がうまく行っているように感じます。
反対に、1on1を上司が部下にやって欲しいことを伝えるだけの場、前回の指示をやったかどうか確認する場、もっとひどいケースではお説教の場として利用している企業では、部下の育成がうまく行っていない企業が多い気がします。
実際に私が産業機械メーカーで同じ取り組みをした際は、最初はうまく行きませんでした。メーカー、特に工場では上下関係がはっきりしていて、部下はなかなか上司に意見を言いません(言えません)。
上司も面談というものに慣れておらず、何度やり方を説明をしてもその通りには行いません。「うちの部署ではこんなもの必要ない」と言うマネージャーも少なくありませんでした。
しかし、大手企業と異なり中小企業には人材がいません。若手人材が入ってきても、こんな職場であれば嫌気がさしていずれ辞めてしまいます。
昨今、新卒の学生は、企業がSDG’sに対してどのような取り組みをしているかとか、企業理念や自らが成長できる会社かどうかといったことを非常に重視しています。(☞就職活動で新卒学生は何を重視しているのか)
製造業であっても、今までのやり方に拘っていては、今後は、優秀な若手人材の採用はできなくなります。
まずは話を聴く
1on1のような面談を行う際、まず上司は、ひたすら部下の話を聴く役に徹してみると良いと思います。相手の話を聴くことがコミュニケーション活性化の第一歩です。
つい結論を先に言ってしまったり、指示をしてしまいたくなるかもしれませんが、そこはグッと我慢です。話を聴いてもらえると、部下の気持ちに変化が起こります。
その上で、上司は企業が何を目指しているか、部下はどのような役割を果たせるのか、そして役割を果たした先にはどんな未来が拓けるのか。
部下が置かれた状況を判断し、やるべきことを考え、行動するよう促します。アドバイスというより、部下が何をすべきかを自分で考えるきっかけを与える、そのための質問や気付きにつながる話をしてみてください。
人は誰かに言われたことで動くのではなく、自分がやりたい、やらねばと思ったことでしか動きません。ですから上司がいくら指示をしても、部下がそれを本当にやるべきことと思わなければ何も変わりません。
まずは部下の話をじっくり聴いてみて下さい。1on1は、上司が成長する場にもなるはずです。
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