公認会計士や経営コンサルは経営のプロなのか

プロのコンサルタントと経営のプロ
今朝の読売新聞にこんな記事が載っていました。
“自治体に「経営のプロ」派遣、収益減に直面の公共施設運営を支援”
『総務省は来年度、市町村による上下水道や公共施設の運営を支援するため、公認会計士や経営コンサルタントら「経営のプロ」を派遣する取り組みを始める。ノウハウや人材不足に悩む小規模な市町村など約500か所に送る計画だ。施設の老朽化や人口減少に伴う収益減に直面する公共インフラ(社会基盤)の経営改善を後押しする。
会計士らを要請のあった市町村に派遣するほか、経営の見直しが遅れている市町村は要請を待たずに送りこむ。全国に市区町村は1700余りあり、3割近くが対象になり得る。 会計士らは、将来の人口推計や施設更新に必要なコストを計算し、自治体が民間事業者に運営権を売却する「コンセッション方式」の導入や、周辺市町村との広域連携など、再建策を具体的に助言する。』
この記事を書いた記者は、「財務や数字に明るい=経営のプロ」と思っているのかもしれません。
公認会計士の仕事は、財務諸表の監査や内部統制の監査です。彼らは会計のプロですが経営のプロではありません。
会計士の中には、会計・財務に関する専門知識や経験、企業経営に関する豊富な情報を活かして、企業の経営全般にわたるアドバイスを行うコンサルタントとして活躍している人もいます。
同様に、弁護士や税理士の中にも専門知識を活かしてコンサルタントとして活動している人たちも数多くいます。しかしこうした人は、プロの経営コンサルタントであり、経営のプロではありません。
経営のプロとは、自分で企業の経営ができる人、それで生活してきた人のことです。
何となく、企業の数字に明るい人のことを経営のプロと思ってしまうのかもしれませんが、弁護士は法律の、税理士は税務の専門家であるように、公認会計士は会計の専門家であって、経営のプロではありません。
プロ経営者とは野球選手のようなもの
経営のプロとは企業の経営に携わって報酬をもらっている人のことです。そういう意味では、企業経営者は全て経営のプロです。
企業から企業を転々とする経営者のことを「プロ経営者」と呼ぶ人もいます。アメリカでは、経営者やエグゼクティブは一つの企業だけではなく、いくつもの企業で経営に携わることが珍しくありませんが、日本企業ではそれほど多くいないので、普通の経営者に対してこのように呼ばれます。
まるでプロの野球選手のようです。プロ経営者は、起業家のように一人で何かができるわけではなく、チームの中で自分が最も得意なポジションをこなします。能力がある選手でも、チーム編成に合わなければ声がかかることはありません。
私はこれまで、上場企業を含めた複数の企業で経営者や役員の経験があるため、プロ経営者と呼ばれることがあります。しかし、仕事で報酬を得ている人は全てプロだと思っているので、その呼び方には違和感があります。転職を重ね、いくつかの企業で働いている人を「プロサラリーマン」とは呼びませんからね。
「プロ経営者」とか言われると、何となく胡散臭い感じを受けてしまいます。それは、「公認会計士」が真っ当な経営のプロで「経営コンサルタント」は何となく胡散臭いと感じられるのにも似たところがあります。
さて、読売新聞の記事に戻ると、『将来の人口推計や施設更新に必要なコストを計算し、自治体が民間事業者に運営権を売却する「コンセッション方式」の導入や、周辺市町村との広域連携など、再建策を具体的に助言する』ために派遣される人は、プロのコンサルタントであって、経営のプロというわけではありません。
公認会計士や税理士の人に、「なぜ資格を取ったのか」を聞いてみると「人と接する仕事をするのが好きではないから」という人が少なくありません。
しかし、中小企業の経営者には、顧問会計士や税理士が財務会計や税務の知識があるため、何でも教えてくれるセンセイと思っている人も多いです。実際に2017年の中小企業白書では、中規模法人の経営者の事業承継に関する相談相手は顧問の会計士や税理士が圧倒的なトップになっています。(当ブログ⇨事業承継は誰に相談すべきか を参照)
人と接するのが好きではないから一人でも食べていける資格をとったにも関わらず、経営のプロと言われてしまう。読売新聞の記事からは、資格に対する妄信のようなものを感じます。
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