銀行が起業家にお金を貸さない理由

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起業したい!

バタバタしている間に、あっという間に年末になってしまいました。長らくブログの更新ができずに失礼しました。

本業とはちょっと異なるのですが、現在、週に一度だけ横浜市の公的機関で創業の相談を受けています。

相談に来る人の悩みはさまざまです。

自分の好きなことを事業にしたいと思っている人、誰かに使われるのではなく自分で何かをやりたい人、コロナで先行きが不安なので副職として何かを始めたい人等々、いろいろな人が相談に来ます。

起業といっても、上場を目指すようなスタートアップではなく、ほとんどがスモールビジネスです。しかし、どのような規模であっても、「起業して食べて行こう!」と決心することは、とても勇気が必要だと思います。

起業に当たって、補助金や助成金の相談をされることも少なくありません。

補助金も助成金も返済義務がない資金ですが、補助金は審査を通れば支給されるもの、助成金は募集要項の条件を満たしていれば支給されるものです。要は、審査に通った事業者だけがもらえるお金か、条件を満たしているすべての事業者ががもらえるお金かの違いです。

起業する人は普通の人です。お金がそれほどあるわけではありません。ですから、補助金や助成金を少しでももらいたいと思う気持ちはよくわかります。ただ、「兎に角、補助金をもらいたい。そのための事業計画を書いてくれ」とか言われると、ひとこと言いたくなります。

お金がないので、金融機関で借入をしたいという人も多いです。中には、自己資金が全くないので、全額借入で事業をしたいという人もたまにいます。

お金を借りるということ

一般的に、「起業をするならば、総投資額の3割程度は自己資金が必要」と言われています。ですから、起業相談に行ったりセミナーを受講すると、「まずは自己資金を何とか準備しましょう」と言われることが多いはずです。

こういう話をすると、「金がないから銀行に借りるんじゃないか!」という人がいます。

確かにそうかもしれません。

しかし、銀行はボランティアでお金を貸しているのではありません。銀行が貸し出すお金は、簡単に言うと「顧客に預金してもらった大事なお金の一部」です。銀行に預金をしてもらえる利息はほんの微々たるものです。定期預金でも年利は0.002%程度。100万円を1年間預金しても利息は20円です。そこから更に20.315%の税金が引かれるため、16円程度しかもらえません。最近では、あまりに預金金利が低くなりすぎて、口座を維持するために手数料を徴求する銀行も出てきましたね。

一方で、起業した人に貸し出す金利は年間2%弱です。100万円を借りた人は2万円を利息として銀行に支払います。

簡単に言うと、この金利の差(2%-0.002%=1.998%)が銀行の利益になります。

「儲けやがって」と思う人もいるかもしれません。確かに単純に右から左にお金を流すだけで2%近く儲かるならそうかもしれません。

因みに、経済産業省の調査では、2017年度の卸売業の売上高総利益率の平均値は11.8%でした。これと比較すると、2%程度の金利差はかなり低い。しかも、2%で貸し出したお金が返済されなければどうなるでしょうか?

当たり前ですが、こんな薄利の商売で貸出債権が焦げ付きでもしたら大きな赤字となってしまいます。だから低リスクな商売をしなければならないのです。

もちろん銀行は様々な手数料で利益を上げていますので、預金と借入が収益のすべてではありません。しかし、信用や実績がない先への貸金が難しい理由は理解していただけるのではないかと思います。

さて、起業の際の借り入れの話に戻りましょう。

銀行からの借入金利が10%近い時代を知っている私などは、たった2%で起業の資金が借りられるなんて!と驚いてしまいます。しかし、今、お金を借りたいと思っている人はそうは思いません。この2%を何とかもっと安く調達したいという相談もよく受けます。

何の信用もなく、ビジネスが上手くいくかどうかわからない人にたった2%の金利で貸し付けをする。しかしそれでも相手は「もっと安く!」と言うわけです。

あなたの仕事が貸金業であればどうでしょう?いくら人柄が良くても、これまで自分で事業を行ったことがなく、成功するかどうかわからない赤の他人にお金を貸せますか?

銀行も同じです。余程その人のビジネスモデルや事業計画がしっかりしていて、社会的に見ても責任を全うしてくれる人ならば、お金を貸してくれるかもしれません。しかし、何の信用も実績もない人にお金を貸す場合、返済できなかった時のために、何かを預かっておかないと心配です。

それが「担保」と言われるものです。

これから事業を立ち上げようとする人に、普通は担保などありません。十分な信用もありません。しかし、起業する人がいなければ、経済は衰退します。そこで、こうした起業家を助けるために、国や自治体が「担保」不足を援助しています。

創業する人の借入を保証することがそうした支援に当たります。担保も信用もなく、事業プランを見ても、その通り成功するかどうかわからない、だけど本人にはやる気と能力はありそう。そういう起業家にお金を貸すのは、民間の金融機関では難しい。そこで、保証協会という公的な機関が借入を保証してくれる仕組みがあります。

起業家から銀行に借入の申し出があった際、銀行は保証協会に依頼して、この起業家に対する貸金を保証してもらいます。銀行が起業家に貸し出したお金が戻ってこない場合、焦げ付いた貸金は保証協会が銀行に全額支払ってくれるわけです。こうした仕組みによって、民間の銀行はリスクを負わずに起業家にお金を貸し出せるのです。

しかし、起業家が自分で集められないお金を銀行に依頼し、その返済に困窮すれば、銀行は保証協会にリスクを負担してもらう。結局、そのツケは納税者に跳ね返ってくることになります。

「補助金が欲しい!」という人にひとこと言いたい理由はこれです。「何とか補助金をもらるように事業計画を書いてくれ」とか、「金がないから銀行に借りるんじゃないか!」という人には、こうしたお金がどこから出ているのか、あなたが失敗したらそのツケは誰が払うのか、世の中の仕組みやリスクの所在をしっかり考えて欲しいと思います。

クラウドファンディング?

とはいうものの、「だから起業で金を借りるな」とか「もっと慎重になれ」という話をしたいわけではありません。「周りがわかってくれない」とか「銀行は困ってる人に金を貸さない」とか文句を言う前に、資金が必要なら何をすべきかをしっかり考えて欲しいと思っています。

事業を行うにはリスクがつきものです。信用も実績もない人がお金を調達しようとするのであれば、その事業にお金を貸してもそれが必ず戻ってくることを相手に納得させなければなりません。

こういう話をすると、「じゃあクラウドファンディングでお金を集める」という人もいます。

出資と借入金は異なります。借入金は必ず返済しなければなりませんが、出資であれば、事業が失敗しても返済する義務はありません。だからこそ、出資をした人は、リスクに見合うリターンを求めます。借入金利は2%程度ですが、配当やキャピタルゲインはその何十倍もの支払いが期待されます。

スタートアップの企業は、銀行借入よりも出資の方が大きなお金を集めやすいと思います。しかし、出資は貸し出しよりもリスクが高い分、ビジネスモデルや事業計画を銀行よりもシビアに見られます。

そして、投資家は事業リスクに見合うリターンを求めます。それは銀行金利など比べ物にならないほどの高いリターンです。更に、起業家があまり考えずに大きなお金を投資家に出資してもらうと、事業が成功しても起業した人があまりメリットを受けられないという事態や、場合によっては事業のイニシャチブを全て取られてしまうことにもなりかねません。

まあそこまでのビジネスになれば、それはそれですごいことなのですが、いずれにしても「銀行が貸してくれないからクラウドファンディングでもするか」という軽い考えで資金集めすることは賛成できません。

起業するには、やりたいこと、できること、求められることに加え、事業資金が必要です。そして資金を調達する際は、誰がリスクを取るのか、リスクに見合うリターンが出せるかを考える必要があります。

 

⇨ コロナ禍に於ける起業を考える

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