経営経験がない経営コンサルタントは信用できないのか

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コンサルタントに経営経験は必要か

「経営経験もない君がコンサルタントになっても話を聞く経営者がいるわけないだろ!」

ある大学院の「起業のビジネスモデル発表会」でプレゼンした学生に対し、センセイが放った言葉です。センセイは起業経験があるらしく、学生が考えたビジネスモデルに次々とダメ出ししていました。

ところで、経営経験がなければ、コンサルティングはできないのでしょうか?

もしそうならば、マッキンゼーやボスコンを含め、世界中のコンサルティング会社に勤めるコンサルタントのほとんどは、仕事ができなくなってしまいます。

マッキンゼーのパートナーコンサルタントであった大前研一氏は、32歳で「企業参謀」を執筆し、当時、経営者のバイブルとまで言われました。出版したのは、大学院を修了してマッキンゼーに入社後わずか3年ですから、当然経営経験などありません。それでも大前氏は数々の大手企業から引く手あまたのコンサルタントとなり、マレーシアやシンガポールの国家アドバイザーや海外都市の顧問としても高い評価を受けています。

その後大前氏は、株式会社ビジネスブレイクスルーを起業、上場もしましたが、その理由を、「会社を経営したこともないコンサルタントなんて信用できないと思われるのが癪だから」と言っています。

コンサルタントとは、ある人にとっては経験や知識をシェアしてくれるセンセイ、ある人にとっては壁打ちの相手、またある人にとってはメンターのような存在です。

事業での悩みを理解してくれる、経営経験豊かな先人の知恵や考え方を求める人もいれば、自分の考えを整理してくれる相手を求めている人もいる。また自分が知らない他社や他業種、世界のことを知りたい経営者もいるわけです。

私は、ファンドの投資先や上場企業で経営を行ってきましたし、自分でも起業した経験があります。しかしその経験があるから、経営者や起業家にアドバイスができるわけではありません。

公的機関等での起業相談等で行うアドバイスの多くは、経験だけでなく、自分が見てきた起業のプロセスや、学んできたさまざまなスキルや知識をベースにして行っています。限られた経験だけをベースにすると視野が狭くなってしまうと思っています。

但し、「経営経験がないコンサルタントはダメ」という話と、「経営コンサルタントに経営ができるか」という話は全く別です。経営コンサルタントはあくまで企業を分析し、そのあるべき姿を側面から助言するだけの存在です。自ら経営を行えるわけではありませんし、利用する方もそれを求めてはいけません。

中小企業のコンサルティングは難しい

経営者目線でコンサルティングを行うと失敗する確率が高くなります。特に中小企業のコンサルティングは、大企業と比較すると非常に難しいです。

ファンドの投資先では短期間で経営を立て直し、成長させなければなりません。前経営陣や従業員のこれまでの努力を尊重することは大切ですが、それが正しい努力でなければ、止めたり修正したりしなければなりません。「これは行ける」と思った事業があれば、大胆に投資も行います。

こうした経験をベースに中小企業のコンサルティングを行おうとすると、つい「問題の本質はこれだから、こちらからやりましょう」と言いたくなります。限られた時間で結果を出すためには、企業が抱える問題の本質を見極め、それを期限内に解決しなければなりません。

自ら起業の経営を行う立場なら、こうしたやり方で良いでしょう。しかし、経営者を支援する立場では、このやり方ではうまく行きません。

例えば経営者から、「業績が芳しくないので、営業組織を立て直して、新しい販路を見つける手伝いを6か月でお願いしたい」という依頼を受けたとします。

しかし調べた結果、業績が芳しくない理由が人材マネジメントにあったとします。そんな時コンサルタントが、「本当の問題は人事管理です。営業組織改革ではなく、こちらの改革をしましょう」と言っても、大抵の経営者は納得しません。 中には怒りだす人もいます。

本質的な問題を探し、それを解決することは必要ですが、コンサルタントが経営者の意向を無視して問題を改善しようとすると、それがいかに正しいことであったとしても、目的は達成できません。どのような理由であれ、目的が達成できないコンサルティングは失敗です。

大企業で管理職だったような人がコンサルタントになると、「本質はこっちでしょ」といきなり経営者に提言して、反発されることが良く起こります。私も中小企業診断士の実務研修や、公的機関で相談を受けた際、同じようなことで失敗した経験があります。

本質的な問題を解決するためには、それが問題であることを経営者に理解してもらうことが必要です。

中小企業の経営者には、自分が事業を大きくしてきたという自負があります。新たな顧客が得られないことが問題と思っている経営者が、自分のマネジメントに問題があるとコンサルタントから言われれば、良い気はしません。

必要なのは相手に気づかせる力

問題を解決するためには、経営者の要請を受け止めつつ、コミュニケーションをとりながら、本質的な問題が何かを経営者に気付いてもらう必要があります。

「これが問題ですから、まずはこちらを直すべきです」と押し付けるのではなく、「こんな問題があったのか、これは何とかしないといけないな」と経営者に気付いてもらうこと。それが本質的な問題を解決するためには必要です。

もちろん、最後まで気づいてもらえない場合もあるかもしれません。それはコンサルタントの力不足。気づいてもらってアクションにつなげることができなければ、問題は解決できず、その仕事は失敗です。

経営者の仕事やこれまでの生き様をリスペクトし、それに何かを加えることで、より良いモノを作り出す。それがコンサルタントやアドバイザーの仕事です。

ですから、経営者とうまくコミュニケーションが取れ、相手の考えを尊重しながらも、最終的に、本質的な問題解決につなげることができる力があれば、経営経験がなくてもコンサルタントとして仕事ができます。

ただ、何度も言いますが、経営コンサルタントに経営ができるかどうかはまた別の話です。

基本的にコンサルタントは問題を発見し、その問題の解決方法をアドバイスすることが仕事です。経営責任は問われませんが、そもそも経営者が問題に気づき、その解決方法を理解できるということに経営コンサルタントの価値があります。

「経営コンサルタントなんかに経営ができるか!」という人がいますが、経営コンサルタントは経営を行う必要はありませんし求められてもいません。経営を行うのは経営者です。経営者は会社にいる人材だけでは戦略や問題への対処方法がわからないという場合に、外部の知識や知恵を使います。その役割を果たすのがコンサルタントです。経営コンサルタントのアドバイスを取り入れるかどうかは経営者が決めることです。

ちなみに、冒頭の発言をしたセンセイですが、博士どころか修士でもありません。センセイの理論だと、修士の資格さえ持っていない人は大学院で教えられないということになりますが、自分のことは棚に上げるのが偉いセンセイなのかもしれません。

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