管理職の転職~インセンティブとは何か、行使するとどうなるか

Exitできれば良いが
前回は、希望する報酬についての話でした。
最近、投資ファンドが中小企業に投資する案件が増えてきています。こうした企業の経営者になると、その報酬は、同規模の企業と比較してかなり高くなります。更に、 報酬に加えてストックオプション等のインセンティブが付与されることが多いと思います。任せられる企業の規模にもよりますが、ファンドのExit(売却)に成功すれば、経営者にはかなりの額のボーナスが入ってくることもあります。
成功するかどうかは経営者の能力だけでなく運も必要ですが、いずれにしても、ファンド投資先の経営では結果が全てです。たまたま運が良くてExitできたような場合もあるでしょうが、経営者がどれほど優秀で能力があっても、Exitできなければインセンティブは手に入りません。
ストックオプションを行使し、株式を売却できれば良いのですが、役員である限り、株はなかなか売却できません。インサイダーフリー期間かどうかに関わらず、役員在任中は、ほぼさまざまな重要情報のタネを抱えているからです。更に、株主や従業員の目もあります。
最初の企業でExitした際、私はCFOとしてIRも担当していました。ストックオプションを行使し、株式を保有していたのですが、ちょうどすべての重要情報を開示し、何もないタイミングで住宅ローンの返済とリフォームをするために売却申請を出しました。しかし、その申請、当たり前ですがIR部門の社員、つまり自分の部下が見るわけです。
「伊藤さん、投資家を回って株を買ってもらう立場の役員が、本当に売っちゃうんですか?」とか言われます。
「う~ん、家が築50年前の木造で、隙間風が入るし地震にも耐えられそうもないからリフォームしようと思ってるんだよ。ローン組みたくないし、これから子供の教育費もかかるからね。」
「ダメですよ、仕事優先して下さいよ。IR担当役員が自社株売却してどうすんですか。私たち、めっちゃ士気下がります。そもそも、うちの株価まだ上がりますよ。今売ったら損ですよ。CFOとしてそう思いますよね!?」
実際に株式を売るかどうかは個人の判断なので会社とは関係ないとはいうものの、メンバーにそこまで言われると売れません。「まあ辞める時に売れば良いか。家の修理は先延ばしかな」と諦めました。
インセンティブとはこんなものかも
しかし、なんとそれから3か月後、同社が筆頭株主に吸収合併されるという話が持ち上がります。株主と同社の事業シナジーは全くありませんが、メインバンクから、キャッシュフローを増やすことを要請された株主が同社のキャッシュフローの取り込みを図るために行われたものでした。
結果的に、市場はこれを全く評価せず、株価は急降下。最終的には、私の含み益はあれよあれよという間に消えてなくなりました。
ちょっと話が脱線してしまいましたが、投資先企業の経営陣がもらえるインセンティブとはこんな感じです。
ベンチャー企業の役員になり、多額のストックオプションをもらって喜んでいた私の友人も、業績が悪化して数億円の含み益が消えたと笑っていました。
まあ、そんなもんかもしれません。
因みに、こうしたインセンティブが付与されるのは、ファンドの投資先経営陣以外では、ベンチャー企業や大企業の経営陣が多いです。
多くの管理職にとっては、ベンチャー企業に転職するよりも、ファンドの投資先経営陣となることの方が現実的だと思います。PEファンドの投資先経営陣についての報酬、インセンティブ、働き方等については、また別の機会にまとめてお伝えしたいと思います。
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