中小企業の経営は難しい②

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契約解消、業績悪化

前社長の体調についてファンドからは、「今まで元気だったが、突然体調を崩した」と聞いていました。しかし、現場に行くと実態が見えてきます。

この1~2年、社長は全国の現場に行くことはなく、指示は全て電話で行っていました。九州であろうが東北であろうが、問題があると自ら夜中に車を走らせ、朝から工場で指示をしていた人です。そんな人が電話でしか指示をせず、最近は電話すらしていませんでした。

全国の現場を回って話を聞くにつれ、社長は、随分前から体調を崩していたことがわかってきました。結局社長とは話をすることもできず、亡くなってしまわれたのですが、その後、問題が噴出します。

葬儀が終わり、ファンドと家族の間で株式の譲渡について話し合いが行われることとなりました。その内容は詳しくは書けませんが、結論を言うと、今までファンドが大丈夫だろうと思っていたことがすべて裏目に出ました。株式の譲渡や経営方針を巡って混乱が起き、契約が履行できなくなった私は社長を退任することになります。

実際にこの数か月は私にとっては結構大変な時期でしたが、この経験が、中小企業の事業再生と事業承継へ関心を持つきっかけとなりました。

そこで調べてみると、こうした中小企業が日本には360万社も存在し、そのほとんどが事業の継続や成長で悩んでいます。経営者の平均年齢は60歳に到達しています。事業承継は喫緊の課題です。

必要なのは優秀な支援者

ファンドは潤沢な資金を持ってこうした企業を買収し成長させてから売却することで利益を得ます。しかし、実際に企業の成長を担うのはファンドではなく、投資先に送り込まれる経営者です。ファンドが資金を投入するのは、基本的に株主から株式を買い取る時だけで、買収後は、企業が稼いだ利益やファンドの信用力を背景とした銀行からの借入によって投資を行います。

もちろんファンドは優秀なメンバーと知恵を投入します。彼らが持つ世界的なネットワークも魅力に見えるかもしれません。しかし、これまで数々のファンド案件に携わってきた私からすると、事業運営においてファンドが役に立つのは、例えば送り込まれた優秀な人材が経営計画を作ったり、経営陣の業務執行のガバナンス機能を果たすことです。更に、世界的に有名な大手ファンドであれば、そのブランド力は銀行借入や優秀な人材を集める際には魅力です。

私が最初に携わったファンドには、非常に優秀で「熱い」人材が揃っていました。彼らは経営陣や社員としっかりとコミュニケーションを取り、現場を見てさまざまなアドバイスをしてくれました。

それでも、株式を買収した後のファンドの役割は、銀行や証券会社との交渉や経営の分析による課題の発見、事業計画の策定、経営のガバナンスといったところが主な役割になります。業者や顧客の紹介も少しはありますが、営業や製造の統括ができるわけではありません。経営企画的な仕事がメインとなります。

そこで、資金支援が不要な中小企業ならば、優秀な経営陣と銀行の信用があれば事業の成長が図れるはずと考えました。オーナー社長を支える経営陣が事業を再構築し、必要であれば同業やシナジーがある他の中小企業と統合によって規模を大きくする。

銀行が納得できる計画を策定して、モニタリングをしっかり行えば、事業の立て直しや成長は可能なはずです。後継者がいない企業をM&Aで統合して規模が大きくなれば、複数の中小企業の事業承継問題も解決できるはずです。

そう考えると俄然、中小企業の経営や支援に興味が出てきました。そこから、中小企業に関わるにはどのようなアプローチ方法があるのか、経営者の悩みや困りごとを知るにはどうすれば良いかを調べてみました。

サラリーマン社長との違い

その結果、中小企業基盤整備機構や各都道府県の産業振興公社や商工会議所といった公的な機関が、中小企業に対してさまざまな支援を行っていること、そうした支援をするコンサルタントとして中小企業診断士が数多く登録されていることを知りました。

また、中小企業診断士は他の士業と違って密度の高いコミュニティがあり、こうしたコミュニティを通じた連携等によって仕事をすること多いことも知りました。そこで、コンサルタントとして仕事をするなら、このコミュニティのインサイダーとなることが早道だろうとも考えたわけです。

これが私が中小企業診断士の資格を取得して、経営支援に関わろうと思った経緯です。今考えると考えが浅いです。そんなにうまく物事は進みません。

規模は小さくても中小企業の社長は一国一城の主です。ある意味命を懸けて仕事をしています。自らの資産は全て借入の担保に入れ、更に個人保証までしています。

昨今は国の指導で、漸く銀行も一定の条件をクリアしていれば個人保証をとらなくなりましたが、日本では、事業で一度失敗すると再起は非常に難しい。事業が傾けば、人生が傾くと思って仕事をしています。

この辺の感覚はサラリーマン社長とはまるで異なります。サラリーマン社長は失敗しても報酬が減額される程度です。もしかしたら退職金も減るかもしれませんが、よほど法的問題があることをしなければ、自宅までは取られません。

中小企業のオーナー社長は失敗すれば翌日から家族や従業員、場合によっては取引先までもが路頭に迷います。ですから、たいしたリスクも取っていないサラリーマン社長や私とは背負っているモノが違います。

考えてみれば、私が銀行でMBOを行った人材関連会社も、オーナーが承知するまでに5年もかかりました。ですから、どんなに理屈が通っている話であっても了承してもらうには、信頼してもらうまでの時間が必要です。「こっちの方が良いですよ」と言われて「はいそうですか」という経営者などいません。

外から見ていた時はわかりませんでしたが、実際に自分も中小企業の経営に携わることで、オーナー経営者の偉大さ、頑固さ、そして大変さを知りました。そして中小企業経営の難しさや承継の大変さを理解できるようになったのです。 

 

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