管理職の転職~エージェントは理解していない

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世代によって異なる案件の探し方

大企業の管理職は、日本経済新聞や日経ビジネスも読んでいる方が多いと思います。

日経新聞を読んでいると、「日経ビジネススクールというメールマガジンがほぼ毎日送られてきます。その中に、「次世代リーダーの転職学」というコラムがあり、数人の転職エージェントが交代で記事を書いています。もしかしたら読まれた方もいるかもしれません。

こういう記事を読んで、「エグゼクティブってこうやってスカウトされたり転職したりするのか。」「こういうことに気を付けなければならないのか」と思う方もいるかもしれません。でも、実際はどうなのでしょうか。

こうした記事を書いているエージェントが対象とする求職者は、大手企業の管理職であっても30代、40代前半までです。そして紹介できる企業の範囲は、おそらくこのブログを読む方が希望する業種とはあまり重なりません。

10月2日の記事には、「転職エージェント」の裏話として、転職活動にあたってエージェントを利用するなら、「大手総合エージェント」と「中小エージェント」を併用するのが得策という記事があります。

最近ではビジネス環境の変化が速く、企業の求人ニーズの変化も速くなっているため、転職エージェントは、企業側の求人の動きを追いきれなくなった。このため、中小エージェントは「求人ありき」から「転職希望者ありき」に方針を転換し、「潜在求人」を探す「ジョブハンティング」に力を入れているというものです。

「最近は」とありますが、優秀な人材を扱うサーチファームであれば、こんなことは大昔からやっています。

ここでいう中小のエージェントというのは、例えば大手人材会社を退職して自分で事業を立ち上げたような人だと思います。彼らは横のつながりで人材の紹介をしているものの、それだけでは人材のストックが乏しいため、ストックを蓄えておくために、求職者へのアプローチをしており、それをジョブハンティングといっているにすぎません。

日経ビジネススクールのコラムには、『こうした中小のエージェントが、多くの企業の経営者から直接「ミッション・ビジョン・バリュー」、そして、組織課題・組織戦略を聞いて理解しているので、転職希望者の方の経験や価値観を聞くと、いずれかの会社が頭に思い浮かぶ。』とあります。

しかし、そんな優れたエージェントは、ほんの一握りしかいません。

企業ニーズにマッチしてないけど?

実際に、私はここに記事を書いている複数の人とコンタクトしたことがあります。彼らの多くは日本最大の人材会社の退職組です。出身企業でコネクションがある企業を中心に案件を取ってきます。そんなエージェントの1社から、あるメーカーの役員としての案件で話を聞いたことがあります。

「現社長の後任となるCOO的な人材を探している、伊藤さんに是非会ってもらいたい」と紹介された会社は、某地方の上場食品メーカーでした。

この時点で私の頭は「どうして私?」となりました。なぜならエージェントには事前に、「消費財、特に食品とアパレルは得意ではない」と伝えてあったからです。

私は、PEファンドが投資する食品メーカーで社長をしていたこともありますが、その際、食品メーカーの大変さと自分の無知さを嫌というほど思い知らされました。知識や経験もさることながら、消費財、特に食品やアパレルの中堅企業のトップにはセンスが必要です。しかし、私にはその欠片もありません。

それなのに、なぜ食品メーカーを?

ただ、誰もが知っている企業だったこと、センスよりもマネジメント能力を問われること、そして現社長は銀行出身者とのことだったのでお会いすることにしました。

自分にはセンスがありませんが、現社長同様、この規模の企業なら、センスがある人をうまくマネジメントすれば経営できるだろうと考えたからです。

この企業は、顧問の経営コンサルタントにサーチや面談を委託しているようで、転職エージェントからは、まずこのコンサルタントとの面談をアレンジされました。 しかし、代理人であるコンサルタントと面談した際の第一声は、「社長は自分が銀行出身ということもあって、銀行出身者は嫌いなんです。だからちょっと難しいかも」でした。

しかも、「今回の求人は役員ではなく、将来役員になれる人であり、まずは海外の子会社あたりで実績を上げてから、数年かけて候補になってもらう必要がある。年齢的には40代の半ばぐらいまでの人を探している。」との話。

エージェントは一体なのを根拠に私と面談をアレンジしたのかわかりませんね。

因みにこのエージェントですが、日経ビジネススクールに記事を書いているだけでなく、たくさんの本も出版しています。記事には、立派なことを書いていますが、私のマッチングに関しては、全く企業ニーズとかけ離れていました。

まあ、私の経歴が普通じゃないことが理由かもしれません。この面談以降、エージェントから連絡はなくなりました。

『多くの企業の経営者から直接「ミッション・ビジョン・バリュー」、そして、組織課題・組織戦略を聞いて理解しているので、転職希望者の方の経験や価値観を聞くと、いずれかの会社が頭に思い浮かぶ。』と豪語しているエージェントですが、私のようなケースが他にないことを祈ります。

看板に偽りあり?

大企業の管理職は、転職についてはほとんど何も知りません。ですから、「日経ビジネス」という看板を背負っていれば、良いエージェントだと勘違いしてしまいます。

こうしたエージェントに仲介され、転職先にすっきりしないものを感じるものの、「あのエージェントも価値観が合うと言ってくれたし」と信じて転職を決めたとします。すると、半年もたたないうちに価値観の違いや、「そんな話は聞いてない」ということになってしまう可能性もあります。

『転職に際しては、中長期的に自分らしく働き、成果を出していくために大切にすべきことは何か、改めてしっかり見つめ直し、次の新天地を選んでほしいと思います。』等と言い、ミスマッチを起こした人については、『目先の年収や肩書にこだわって転職先を選択するタイプが多い。』というエージェントもいます。

確かにその通りですが、もしあなたが「年収はその会社が出せるだけで良い」とか「お金よりもやりがいです。生活に困らない程度であれば大丈夫」とか言ったとしても、エージェントは「今の年収はいくらですか」、「いくらまでなら妥協できますか」としつこく聞いてきます。

何故なら彼らにとって紹介する人材の報酬は一番関心がある事項だからです。エージェントの報酬は紹介した候補者の年収によって決まります。

その仕事に年収が見合っているか等の価値を判断できるエージェントはいません。もし本当に企業の価値観や組織課題と戦略を理解し、それにふさわしい人材を紹介できるのであれば、「その企業のこういう役割なら、報酬はこのぐらいだと思います」と答えられるはずです。しかし残念ながら、その質問に答えられるエージェントに私はお会いしたことがありません。

転職をする場合は、エージェントが掲げている看板に惑わされないでください。エージェントから紹介された案件について、「なぜこの報酬なのですか?この会社の同レベルの人の報酬はいくらですか?」等を試しに聞いてみるとエージェントがどの程度その会社のことを理解しているのかがわかります。

エージェントは仕事を見つけてくる人と割り切って、企業や経営者と価値観が合うか相性が合うかどうかは、自らが見極めることが重要です。

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これから経営に携わる方にご覧いただけると嬉しいです。

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