転職して経営者になる?③~誰が案件を理解しているのか

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大手企業の管理職は、大抵日本経済新聞を読んでいると思います。同時に日経ビジネスも読んでいる方が多いのではないでしょうか。

銀行で働いていた時は、新聞に取引先のことが載っていることが多かったので、小さな記事まで必ずチェックしていました。しかし、事業会社で働くようになってからは、ほとんどの情報はネットで取れるので、日経新聞は電子版をちょっと見る程度になってしまってます。

さて、日経新聞はどうでも良いのですが、「日経ビジネススクールというメールマガジンがほぼ毎日送られてきます。その中に、「次世代リーダーの転職学」というコラムがあり、数人の転職エージェントが交代で記事を書いています。もしかしたら読まれた方もいるかもしれません。

こういう記事を読んで、「エグゼクティブってこうやってスカウトされたり転職したりするのか。」「こういうことに気を付けなければならないのか」と思う方もいるかもしれません。でも、実際はどうなのでしょうか。

こうした記事を書いているエージェントが対象とする求職者は、大手企業の管理職であっても30代、40代前半までです。そして紹介できる企業の範囲は、おそらくこのブログを読む方が希望する業種とはあまり重なりません。

10月2日の記事には、「転職エージェント」の裏話として、転職活動にあたってエージェントを利用するなら、「大手総合エージェント」と「中小エージェント」を併用するのが得策という記事があります。

最近ではビジネス環境の変化が速く、企業の求人ニーズの変化も速くなっているため、転職エージェントは、企業側の求人の動きを追いきれなくなった。このため、中小エージェントは「求人ありき」から「転職希望者ありき」に方針を転換し、「潜在求人」を探す「ジョブハンティング」に力を入れているというものです。

「最近は」とありますが、優秀な人材を扱うサーチファームであれば、こんなことは大昔からやっています。

ここでいう中小のエージェントというのは、例えば大手人材会社を退職して自分で事業を立ち上げたような人だと思います。彼らは横のつながりで人材の紹介をしているものの、それだけでは人材のストックが乏しいため、ストックを蓄えておくために、求職者へのアプローチをしており、それをジョブハンティングといっているにすぎません。

転職エージェントと言われる人たち①転職エージェントと言われる人たち②で紹介したエージェントも、これと同じようなことをしていました。

日経ビジネススクールのコラムには、『こうした中小のエージェントが、多くの企業の経営者から直接「ミッション・ビジョン・バリュー」、そして、組織課題・組織戦略を聞いて理解しているので、転職希望者の方の経験や価値観を聞くと、いずれかの会社が頭に思い浮かぶ。』とあります。

しかし、そういうエージェントは、ほんの一握りです。

実際に、私はここに記事を書いている複数の人とコンタクトしたことがあります。彼らの多くは、日本最大の人材会社の退職組です。その中には、中堅企業の案件を持っているエージェントもいますが、とても企業のミッション、ビジョン、バリューを理解しているとは思えません。

彼らから、あるメーカーの役員としての案件で話を聞いたことがあります。

エージェントからは、「現社長の後任となるCOO的な人材を探している、伊藤さんに是非会ってもらいたい」と紹介されたその会社は、某地方の上場食品メーカーでした。

この時点で私の頭は「???」となります。なぜならエージェントには事前に、「消費財、特に食品とアパレルは得意ではない」という話をしていたからです。

私は、PEファンドが投資する食品メーカーで社長をしていたこともありますが、その際、食品メーカーの大変さと自分の無知さを嫌というほど思い知らされました。知識や経験ということもその理由ですが、消費財、特に食品やアパレルのトップには何かしらのセンスが必要です。しかし、私にはその欠片もありません。

それなのに、なぜ食品メーカーを?

ただ、企業名は誰もが知っている企業だったこと、社長は銀行出身で、企業規模もそれなりだったので、周りを固める管理職もある程度しっかりしているはずと感じたことから話を伺うことにしました。

自分にはセンスがありませんが、この規模の企業なら、センスがある人をうまくマネジメントすれば経営できるだろうと考えたからです。

このメーカーは、ある経営コンサルタントにサーチや面談を委託しているようで、転職エージェントからは、まずこのコンサルタントとの面談をアレンジされました。

しかし、代理人であるコンサルタントと面談した際の第一声は、「社長は自分が銀行出身ということもあって、銀行出身者は嫌いだから合わないと思いますけど」でした(笑)。

しかも、「今回の求人は役員ではなく、将来役員になれる人であり、まずは海外の子会社あたりで実績を上げてから、数年かけて候補になってもらう必要がある。年齢的には40代の半ばぐらいまでの人を探している。」との話。

因みにこのエージェントですが、日経ビジネススクールに記事を書いているだけでなく、たくさんの本も出版しています。記事を見ると、それらしきことを言っていますが、このマッチングは、全く企業ニーズとかけ離れています。

コミュニケーション能力に欠ける人なのでしょうか。

その面談以降、このエージェントから連絡はありませんでした。このような人たちが、『多くの企業の経営者から直接「ミッション・ビジョン・バリュー」、そして、組織課題・組織戦略を聞いて理解しているので、転職希望者の方の経験や価値観を聞くと、いずれかの会社が頭に思い浮かぶ。』などと言って、今日も多くの求職者に価値観の合わない求人を紹介していると思うと、「ちょっとひどいなあ」と思うわけです。

大企業の管理職は、転職についてはほとんど何も知りません。ですから、「日経ビジネス」という看板を背負っていれば、良いエージェントだと勘違いしてしまいます。

こうしたエージェントに仲介され、転職先にすっきりしないものを感じるものの、「あのエージェントも価値観が合うと言ってくれたし」という感じで転職を決めると、半年もたたないうちに価値観の違いや、「そんな話は聞いてない」ということになってしまう可能性があります。

このエージェントによると、『転職に際しては、中長期的に自分らしく働き、成果を出していくために大切にすべきことは何か、改めてしっかり見つめ直し、次の新天地を選んでほしいと思います。』等と言い、ミスマッチを起こした人については、『目先の年収や肩書にこだわって転職先を選択するタイプが多い。』らしいです。

「よく言うよ」と思います。

こういうことを言うエージェントに限って、あなたが「年収はその会社が出せるだけで良い」とか「お金よりもやりがいです。生活に困らない程度であれば大丈夫」とか言っても、「今の年収はいくらですか」、「いくらまでなら妥協できますか」としつこく聞いてきます。

彼らの報酬は年収がベースになりますが、紹介する仕事にいくらの価値があるかは理解していません。

エージェントが本当に企業の価値観や組織課題と戦略を理解し、それにふさわしい人材を紹介できるのであれば、「その企業のこういう役割なら、報酬はこのぐらいだと思います」と答えられるはずです。

しかし残念ながら、その質問に答えられるエージェントはほとんどいません。

転職をする場合は、エージェントが掲げている看板に惑わされないでください。エージェントから紹介された案件について、「なぜこの報酬なのですか?この会社の同レベルの人の報酬はいくらですか?」等を試しに聞いてみるとエージェントがどの程度その会社のことを理解しているのかがわかります。

エージェントがしっかり答えられなければ、そのエージェントからは、案件を紹介してもらい、あとは、企業や経営者と価値観が合うか相性が合うかどうかを、自分でしっかりと見極めて下さい。

 

⇨ 転職して経営者になる?④

⇦ 転職して経営者になる?②

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