管理職の転職~あるエージェントとの面談②

Pocket

求職者の話ばかり

オフィスはちょっと古めのビルの中にありました。エレベーターを上がると、すぐに小さな事務所が目に入ります。

ドアを開けて中に入ると、机の上や書棚に書類や本ががたくさん置いてあり、なんとなく昭和の匂いがします。

社長のY氏は60代前半の神経質そうな男性です。

Y氏は名刺交換をすると、自己紹介を始めました。その自己紹介の中で、これまでどういう人が来て、どんな相談を受けているのかを随分と話します。企業の話をしてくれるエージェントは多いですが、これほど求職者のことを話すエージェントは初めてです。

コンプライアンスのかけらもないなと思う反面、こういう人に相談するのはどんな人なんだろうかと興味を持ちました。

相談者の中には、大企業で役員をしているものの、今回で退任となるので次の職場を探したいという人、財閥系商社に勤めている管理職で、役職定年になるので、何か良い職はないかと探している人等が多いようです。

話に出てくる相談者が大企業や銀行に勤めている人が多かったのですが、Y氏曰く、「ここには大企業の管理職のような優秀な人しかこない」のだそうです。

中でも、相談に来たM商事の管理職には、履歴書の書き方から、職務経歴書の書き方といった転職のイロハから教えたと嬉しそうに話してくれました。

どういう視点で経歴書を書けば良いのか、どのように面接で自己アピールをしたらよいのかという点についてアドバイスをしたところ大変喜ばれ、その噂が周りの同じような境遇の人に広まり、「次から次へとM商事の管理職から面談の依頼が舞い込むようになった」とY氏は喜んでいました。

こうした有名企業の50代管理職を中心に、数多くの転職相談を受けているため、土曜日も日曜日も相談でいっぱい、休む暇もないとのことでした。

Y氏の自己紹介が一通り終わると、今度はこちらへの質問になります。

履歴書と経歴書をすでにメールで送付してあります。職歴は銀行から始まり独立するまで、企業数で言うと4社、同じファンド投資先を1社と考えると3社で2回の転職回数です。その間、会社が合併したり、何度も管掌部門が変わったりしたため、300字程度の要約もつけてあります。

しかし、Y氏はほとんど経歴を見ていないようです。まあ、エージェントにはよくあることです。ただ今回は、私の経歴を見ましたか?と念押ししたので、一応読んでいると思っていました。
こういうちょっといい加減で怪しいところが、人材紹介業の評判を落とす理由のひとつです。

質問の口調は丁寧ですが、ちょっと高圧的な部分があります。例えば語学についての質問はこんな感じです。

Y氏「海外にも長くいて仕事でも随分英語を使っていたのであれば、言葉は問題ないわけですね」

私「はい、それなりに」

Y氏「はい?できるんですか、できないんですか?(目つきがキッ)」

私「(えっ、何?どうした?)海外事業責任者でしたし、M&Aの交渉も英語でやってきましたが」

Y氏「じゃあ、できるんですね」

私「はい、できますがネイティブではないですよ(なんでそんなに高圧的?)」

こんな感じです(笑)

彼は、私が英語ができるかできないかではなく、英語のレベルがどの程度か知りたかったのかもしれません。

それならば、レベルがわかるような質問をすればいいのになあと思いました。TOEICやTOEFLの点数でも良いし、M&Aの交渉は英語で行ったのかとか、海外では英語を使う割合はどの程度かとかでわかると思うんですが、「できるんですか、できないんですか?(キッ)」って(笑)

自分の話ばかり

その後、紹介できる案件の話の前に、自分が紹介事業の他に社団法人を作り、会員制で年に数回講演会を開いていること、そこでは数々の社長に講演をしてもらっていることをお話しされていました。

いろいろな企業の社長とつながりがあると言いたかったようですが、まずそこに出ている会社名、私はほとんど知りませんでした。また、講演を依頼する社長も基本的には雑誌等で良い話をしている人を見つけ、その人に直接依頼すると言っていました。

要は知らない中小企業の社長に突然連絡をして、こういう会があって、たくさんの企業やビジネスマンが参加しているから一度話をしてくれないかと依頼しているわけです。

中小企業の社長がこう言われたら、余程忙しくない限りOKするのではないでしょうか。良い人材採用活動になるかもしれませんし。

Y氏は、こうして、講演してくれた企業を自社のパンフレットに載せることに成功するわけです。

さて、さんざん話をした結果、「伊藤さんに合うかどうかわからないんですけど」と言って出されたのが、新興不動産会社の経理財務役員候補の話と、サービス会社の営業部長でした。

いやいや、ちょっと待って。「私の経歴を見た上で、ぜひ紹介したい案件がある」って言ってましたよね。今日も話の中で、単なる勤め人ではなく、経営者や経営陣としての経営代行の仕事があればって言ったでしょ?」と突っ込みたくなります。

それに、英語はできるんですか、できないんですか(キッ)って、英語は全然関係ないじゃん(笑)

別にそれらの役職や報酬が気に入らないとかいう話ではありません。そもそも、私のように、「転職ではなく経営を任せてくれる仕事があれば」なんて人はいないので、何を提案して良いのかわらかなかったのかもしれません。

しかし、紹介してくれたこの2件、エージェントは自分で社長に会っていないようで、聞いてもほとんど答えられません。会社や仕事の内容も満足に答えられないので、本当にこの会社からもらった案件なのかと疑いたくなります。

上場人材紹介会社のCFOだった身としては、「おいおい、ちょっとは真面目にやろうよ」と言いたくなる仕事ぶりです。

挙句の果てに、「私が紹介すれば、この顧問紹介会社に登録もできますよ。」というパンフレットも出してきました。顧問紹介会社からの依頼で、スクリーニングして人材を紹介する仕事を無料で請け負っているそうです。

本来は顧問紹介会社がスクリーニングをすれば良いのですが、小さな登録会社で、スクリーニングを外注しているのかもしれません。ただそんな会社に登録しても求職者にとって、ほとんどメリットはありません。

そんなわけで、

1時間ほどの面談で、先方から紹介された企業は2社。それも、相談者の希望と全く異なる案件と顧問の登録依頼だけという結果でした。ちなみに私の職務経歴書や履歴書については修正もされませんでしたし、面接のアドバイスももらえませんでした。どんなアドバイスをくれるのか、ちょっと期待したのに(笑)

ただ、「評価レビューの依頼が届くと思いますので、良ければぜひお願いします」という一言はしっかりありました。

う~~ん、こういう話に大企業50代の管理職は乗っかってしまうのでしょうか。

  

⇨ 管理職の転職~ヘッドハンティング、人材紹介、転職サイト① 

⇦ 管理職の転職~あるエージェントとの面談①

管理職の転職~あるエージェントとの面談②” に対して1件のコメントがあります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です