起業相談、いつのまにか転職相談

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公的機関で起業相談を受けることがあります。起業相談に訪れる方の半数は、将来が不安なため、何か自分でできることをやりたいという方です。

コロナ禍の影響もあるのでしょうが、起業を希望する方のお話しを伺っていると、実際には起業がしたいわけではなく、不安定な生活が怖いだけということも良くあります。目の前に広がる漠然とした不安を解消するために、自分が得意なモノでビジネスができれば、ストレスなく安心して生きていけるかもという期待を「起業」にかけているわけです。

起業をして自由に好きな仕事で生きていきたいという気持ちはよくわかります。私もサラリーマンを辞めて独立しましたが、起業する時はどちらかというと苦しいことはあまり想像できず、新しいことを始めるわくわく感の方が強くありました。

しかし、起業をすると自分で仕事を取ってこなければなりません。これには、勤めていた時とはまた違うストレスがかかります。特にサラリーマンにとっては、毎月決まった日に決まった金額のお金が振り込まれないことが大きなストレスとなることも多いようです。

「起業しても、その半数は3年で消える」とも言われますが、自分で商売をするということは大変なことです。

事務職として働いている女性から「ネイルサロンやアクセサリーショップをネット上に立ち上げたい」という相談を受て気づくのは、今の仕事を続けていても将来が見えないとか、派遣でいつ首を切られるかわからないという「将来への不安」です。

そこで、趣味としてやってきたことをビジネスにしたいと、起業相談に来られるわけです。

こうした人の多くは、起業後の営業の必要性についてはあまり考えていません。「とりあえず起業することを決め、必要なスペースを借り、販売するモノも決まっているので借入や集客の方法を教えて欲しい。」という感じです。

「そんな考えで起業してはダメ」などと言いたいわけではありません。

起業をするという決断をしたことは素晴らしいことです。自分の力で生きていく術を身に着けることは、これからの社会はどんな人にも必要です。

しかし、起業を考える順番は重要です。自分が作りたいモノやサービスを決め、場所を借りてから、誰に売るかを考えるのではなく、まず、誰に何を売るか、どんなサービスの提供が、対象とする顧客に喜ばれるかをよく考える必要があります。

起業セミナーに出席した経験がある方はご存じかもしれませんが、起業する際は、「やりたいこと」「できること」「求められること」の三つが重なる事業を探しなさいと言われます。

この中でも最も大事なことは「求められること」です。「求められること」とは、世の中の人が困っていることの解決方法です。

スタートアップが最も重視することは、「誰のどんな課題を解決するか」ということです。まずは顧客が持っている悩みや痛みを解決してあげること。そして、次にその悩みや痛みを、自分が提供する商品やサービスで解決するという順番で考えます。

ネイルサロンやアクセサリーショップであったとしても、数ある中で、あなたの商品やサービスを求める人がいなければ商売にはなりません。

こういう話をすると、「やっぱり難しいですね」と言われますが、そういう方には、まずは自分の製品やサービスを売る努力、自分なりのマーケティング活動から始めてみることを勧めます。

また、将来の安定が強い人には、お話の中から本人が気づいていない適性を見つけられれば、現在の仕事以外の選択肢を提案することもあります。

それは、「起業は諦めて」という気持ちではなく、「起業に向けてまずはお金を貯めましょう」とか、「仕事と起業準備、二刀流でやってみましょう」という気持ちでお伝えしているわけです。

また、話を聞いていて、「この人は本心ではリスクがある起業をしたいとは思っていない」と感じた場合は、得意なことが伸ばせる分野への転職を選択肢のひとつとして提案することもあります。

やりたいことが決まっていない起業志望の方には、複数回転職しているケースが多く、一貫性なく様々な仕事を経験していることも少なくありません。そういう場合には、過去の経歴とご自身の嗜好、そしてこれから市場で求められるニーズを照らし合わして、今の仕事でやった方が良いことや、新たな仕事を探すアドバイスを行うこともあります。

こんな感じで、起業相談にきたのに、話しているうちにいつのまにか、それが、転職相談になってしまうこともしばしばあります。

私も何度か転職をし、独立後もヘッドハンターやエージェントから様々なお話を頂きます。そもそも、人材紹介と転職メディアを業とするインテリジェンス(現パーソルキャリア)で経営戦略本部長をしていたこともあり、転職市場の背景や業界の特長、市場の動向等にも詳しくなってしまいました。

今回、「53歳 銀行管理職のための KPIと財務【入門編】」を出版しました。この本は、主に銀行や上場企業の管理職として役職定年が見えてきた人が、独立や転職等によって、次の職場で輝くためのスキルや知識を持っていて欲しいという想いで書いたものです。

しかし、あるエージェントと話していて、こういう人たちにとっての最初のハードルは、次の職場を探すことであることに気づきました。超大手企業の管理職であっても、職務経歴書の書き方から、仕事の選び方、転職エージェントとの付き合い方までがまったく新たな経験という場合が多いわけです。

次の職場を会社からの紹介されても、希望の仕事でなければ、新たな仕事は自分で探さねばなりません。そうすると、転職サイトやエージェントに登録することになりますが、そのサイトやエージェントが本当にその人にとって適性かどうかも教えてくれる人はいません。

そこで、経営や企業とは少し離れますが、次回から転職サイトやエージェントについて、嘗て業界のインサイダーとして経営に携わったこともあり、また実際に自分でも何回も利用したことがある経験者として、転職に関し、知っている限りのことをみなさんにシェアして行きたいと思います。

 

⇨ 50歳を過ぎての転職~何から始めるか

⇦ 新刊『53歳 銀行管理職のための KPIと財務【入門編】』のお知らせ

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