営業利益が赤字になる大口受注は全て断るべきなのか

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銀行員にとっての数字、経営者にとっての数字

銀行で働いていた時、企業の数字は、財務諸表を見て安全性や成長性の検証や、事業計画の妥当性を判断するためのものでした。しかし、経営に携わるようになってから、数字は、経営判断を行う際の根拠として使うようになりました。

事業責任者になった時、「製品の原価を会社の誰も知らない!」、「赤字の事業を黒字化するにはどこをどう変えれば良いか」等々で頭を抱え、初めて管理会計の基礎を学ぶことで、それらへの対処の方法がわかるようになりました。

どちらも出てきた数字を見て判断することに変わりはありませんが、受動的に数字を見て判断している銀行員と違い、経営者は数字を能動的に使えなければなりません。

多くの中堅・中小企業では、まだまだ経営者の勘や経験値で事業を推進していると思います。上場企業であっても、管理会計をベースに経営判断を下している事業部は大手以外はまだ少ないと思います。

営業員や新人は、B/S、P/L、C/Sを理解営業員や新人は、B/S、P/L、C/Sを理解できるようになればそれで十分かもしれませんが、経営者や事業責任者はそれを使えるようにならなければなりません。でも、財務諸表がなんとかわかる人が、管理会計の本を読むと、わけのわからない図や説明が出てきて、嫌になってしまうことが多いはずです。

私もその一人でした。そもそも損益分岐点の考え方を理解するのにも随分と時間がかかりましたし、損益分岐点図表はごちゃごちゃしていて、何が何だかさっぱりわかりません。

しかし、理解できるようになると、売上計画を達成した場合の利益はどの程度になるのかとか、スポットで要請があった大口取引案件を受注するためには、どこまで値下げすることが可能かといったケースでも正しい判断ができるようになります。

財務諸表から何かを判断するだけでなく、自社の財務データを使って経営判断ができるようになることが経営者には求められます。

管理会計の問題を実際にやってみよう

というわけで、経営者や起業家(候補)には、ぜひ管理会計を知ってもらいたいと思うのですが、あまり難しい話をしてもやる気がなくなってしまいますので、ここからは、いくつか問題を解いてみながら、理解を深めることができればと思います。

1,000円の製品を500円となると、損益は赤字になります。

「大口のオーダーはぜひ取り込みたいけど、これでは経営が立ち行かない。なんとか交渉して、採算ラインの700円か、儲けはゼロになるけど650円になるなら引き受けよう。」と考えた人もいるかもしれません。

今さら聞けない財務と数字の話㉛~限界利益で判断するでも同じような問題を取り上げましたが、こうした経営判断を行う場合は、まず費用を変動費と固定費に分ける必要があります。変動費とは売上の増減に伴って同じように増減する費用、固定費とは、売上が増えても減っても変わらない費用です。(詳しくは今さら聞けない財務と数字の話㉖~売上が10%減ると利益も10%減る?を参照)

材料費は製品を作る数に伴って増減しますから変動費です。これに対して、人件費や減価償却費は売上が増えても減っても変わらず発生する固定費です。

売上から変動費を引いたものを限界利益と言います。つまり、限界利益とは固定費+利益のことです。利益が0の場合、限界利益=固定費となります。

限界利益がプラスであれば、人件費や設備投資の際の減価償却、賃料といった固定費を賄うことができます。現在のようにコロナ禍で売上が見込めないレストランがランチやディナーの単価を下げてでもお客様に来てもらおうとするのは、この固定費だけでも何とかしたいと思っているからです。

因みに、「限界利益<固定費」になってしまうと、赤字で仕入れて販売することになるので意味がありません。

この取引では売値から変動費を引いた限界利益は150円になります。これが100千個販売できるわけですから、15百万円の固定費をカバーできることになります。

もちろん、限界利益を基準にして値付けをしていては、赤字が膨らむだけです。しかし、製造にまだ余裕があり、現状の設備や人員だけでこのオーダーを受けることができるのであれば、本件は受注するべき取引と言えます。

ただし、この取引だけということであればという条件付きですが。

立派な設備を持ち、人員もいるのに、工場の稼働率が低くていつも余裕があるのであれば、固定費を稼ぐために値段を下げてでも受注をした方が良い場合があります。

どんな時でも決めた利益を守るのではなく、数字を見て、できる範囲を確認した上で、柔軟に対応することも時には必要になります。

 

⇨ 赤字事業を辞めれば損益は改善するのか

⇦ 経営経験がない経営コンサルタントは信用できないのか

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