起業の際、どのような法人を選ぶべきか~株式会社、合同会社、NPO、社団法人の違い

株式会社は嫌われる?
起業支援をしていると、法人を設立する際、どのような種類にすべきかという質問を受けることがあります。「教育関係の仕事で、株式会社として起業すると顧客に受け入れてもらえないのでは」と心配する人が先日もいました。
Aさんは、幼稚園の先生に対して様々なサービスを提供する教育関連事業を行ってきましたが、これからは、事業を大きくするために、法人を設立しようと考えています。その際、株式会社を設立すべきかNPO法人にすべきかを悩んでいました。Aさんによると、教育に関わっている人たちは、ビジネスの臭いがすることを嫌うためNPOを設立したいのですが、NPO法人は、社員数が10名以上必要なことに加えて、行政への報告事務が大変なので、小さい所帯で始める場合は使い勝手が非常に悪いため、考えているとのことでした。
Aさんは、自分が学校法人の関係者という立場だったこともあり、学校法人が顧客となった場合、取引先が株主会社だと、業者のように思われてしまい、本来の目的を果たせなくなることを心配しているようでした。行政や、教育関係で仕事をする際、NPO法人の方が株式会社よりも受け入れられそうな感じは何となく想像できましたが、株式会社にすると顧客に受け入れられないという話は初耳でした。
こうした事業に関わっている他の人に話を聞いてみると、例えば文科省は、学校法人ではなく、株式会社の形態をとっている大学院等の教育機関をあまりよく思っていないようなので、やはり、業界自体にあからさまなビジネス臭を嫌う雰囲気があるのかもしれません。
「教育関係は崇高なモノだから、ビジネスとして行うことはけしからん!」という感じでしょうか。
昔、医療法人の再生に関わった時、オーナーでもある理事長から、自分がいかに患者や地域医療のために尽くしてきたかという話をよく聞かされました。しかし、この医療法人は、使いもしない薬を大量に仕入れたり、高価な医療設備を購入した結果、経営が立ち行かなくなってしまっていました。理事長から医療にかける情熱的な言葉を聞きながら、「こういう人は、職人として生きた方が幸せなんだろうなあ」と感じたことをよく覚えています。
良いとこどりの一般社団法人
そこで、NPO法人と株式会社の良いとこどりができる「一般社団法人」を設立してはどうかと提案しました。
社団法人と聞くと、40代以上の方は、「NPO法人よりも設立が難しそうで、行政への報告も煩雑になりそう」と思われるかもしれませんが、2008年に改正された新たな公益法人制度によって、現在の「一般社団法人」は、株式会社とほぼ変わらない形態となっています。
社団法人には公益社団法人と一般社団法人があります。公益認定を受けた社団法人は、所得に法人税が課税されない等の税制優遇措置がある一方、利益に対する規制や監督官庁に提出する書類等、透明性の確保が求められます。しかし、一般社団法人には税制の優遇措置も、監督官庁に提出する書類も特にありません。基本的には株式会社と同じです。株式会社と異なる点は、出資者毎の持ち分比率という概念がなく、剰余金の分配ができない点ぐらいではないでしょうか。上場でもしない限り株式会社とほとんど変わりません。
加えて「社団法人」には、公益性や信頼性の高いイメージがあります。これは、あくまで一昔前のイメージなのですが、こうしたイメージの良さを狙って、昨今は、怪しげな会員ビジネスでも、一般社団法人がよく利用されます。NPO法人よりも手軽に設立でき、行政への報告等もない上、公益性が高いイメージがある一般社団法人は、会員集めにはうってつけなのでしょう。
怪しげな会員ビジネスはどうかと思いますが、会員組織を作って輪を広げようとしている場合や、公益性を求められるような事業を立ち上げる場合は、一般社団法人の設立を検討してみても良いと思います。
参考までに、株式会社、合同会社、NPO法人、一般社団法人、それぞれの特徴を下記にまとめました。尚、実際に法人を設立する際は、ご自身でよく調べるか、行政書士等の専門家の意見を聞かれることをお勧めします。
法人設立の概要

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