事業承継だけでなく、若手や女性起業家を支援しよう

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先日、横浜の女性起業家専用シェアオフィスで話をしていた際、日本で起業する男性と女性の割合や、世界の中で、日本はどの程度起業家が少ないのかが気になり、Global Entrepreneurship Monitor(GEM)の2020版を調べてみました。

この資料では、世界の起業に対する意識がわかるデータがたくさん載っています。調べたところ、やはり日本人の起業に対する意識や実際に起業する人数は、世界でもほぼ最下位であることがわかりました。

図表1の通り、日本では、起業するチャンスがあると思っている人の割合は他国に比べて圧倒的に少なくなっています。18歳から64歳の人に「自国では起業する良いチャンスがあると思うか」と聞いたところ、チャンスがあると答えた人はわずか10%。ポーランドなどは90%に近く、ほかの国々でも、50%程度の人が起業のチャンスがあると思っています。

これだけ見ても、日本では起業に対する心理的なハードルがかなり高いようです。

 

図表1:自分が住む地域には、起業する良いチャンスがあると思う人の割合

(出典: GEM Adult Population Survey, 2019)

 

次に、起業のしやすさという点を見てみます。日本が起業し易いと思っている人は25%程度しかいません。この数字もイスラエルの次いで2番目の低さとなっています。

日本では、起業に関するさまざまな環境がまだ整備されてないのか、そもそも日本人が起業に興味がないからこうした数字になるのかは、よくわかりません。

 

図表2:自分の国は、起業し易いと思っている人の割合

(出典: GEM Adult Population Survey, 2019)

起業の機会や環境が良くないと思っている日本では、当然、自分に起業の知識やスキル、経験があると思っている人の割合も少なくなります。図表3にある通り、他国と比較して圧倒的に日本人は起業のスキルや経験がない(と思っている)ことがわかります。

図表3:起業を行うための知識やスキル、経験があると思っている人の割合

(出典: GEM Adult Population Survey, 2019)

ただそんな中、起業の機会はあると思っているが、実際には失敗するのが怖くて起業していないという日本人の割合は43%程度と、特段他の国と比較して多いわけではありません。(図表4)

例えばチリは、図表3で起業の知識やスキルはあると言っている人が75%程度に達しているのに、それでも失敗を恐れて起業していない人の割合が60%近くになっています。

こうしたことから考えると、日本では起業するチャンスがあると思っている人は他国に比べて少ないものの、チャンスがあると思っている人の中から、実際に起業に至る人の割合については、他国とそれほど変わらないことがわかります。

 

図表4:機会はあるものの、失敗を恐れて起業していない人の割合

(出典: GEM Adult Population Survey, 2019)

さて、そこで本題です。世界的に見て日本で起業家として活動している女性の割合はどの程度かを見てみましょう。18~64歳の人口に占める起業者(起業準備中の人と設立から 3 年半に満たない企業を経営している人の合計)の割合であるTEA(総合起業活動指数)は、図表5にある通り、男性起業家1人に対し女性起業家は0.38人程度となっています。つまり、起業家全体に占める女性の割合は27.5%ということになります。

小規模企業白書(中小企業庁 2019年)によると、2012年時点での女性起業家の割合は約25%なので、少しは増加しているようですが、まだ7割以上の起業家は男性です。また、この女性起業家比率は世界的に見ても非常に低い数字となっています。(図表5)

 

図表5:起業家として活動をしている女性の男性に対する相対的な割合

 (出典: GEM Adult Population Survey, 2019)

本ブログの「なぜ中小企業の数は減るのか①」でも書きましたが、中小企業の数を維持するためには、再生が必要な企業や、後継者が決まっていない企業に対して、さまざまな補助金や支援を行うよりも、新陳代謝を促進するための支援を行った方が、健全な中小企業対策となるはずです。

実際に、事業再生や承継の現場で感じたことは、本当に承継が必要な企業は、国の援助などなくても、さっさと後継者を決めて事業承継の準備をしています。そうした準備もせず、動きが取れなくなっている企業に、国がカンフル剤を打ったとしても、あまり効果がないものも多いと感じています。

こうした実態から、日本の中小企業の活性化を図るためには、起業する人の支援をもっと真剣に行うべきだと思うのです。

実際に、私が相談を受ける起業家候補のうち、男性はこれまでの経験を活かして独立したいという人が大半です。それが本当に自分のやりたいことかどうかは別として、失敗する確率は低い起業と言えるかもしれません。これに対し、若者や女性には、自分がやりたいことがはっきりしていて、社会的意義の高い仕事を手掛けたいという想いを持つ人が多くいます。

時には「大丈夫かなあ」「突っ走ったら危ないなあ」と思えることも多々ありますが、新しいことにチャレンジする人にはそれぐらいの気持ちが必要です。

「起業をする際は“やりたいこと”、“できること”、“求められること”を考えろ」とよく言われますが、「できること」や「求められること」だけでは社会を変えることはできません。

これまでは、男性中心、年功序列的な会社が日本の経済を支えてきました。コロナ禍の中、これらの会社は全く身動きをとれなくなっています。これからの社会を支えるのは、こうした新しいことに挑戦する気持ちや、社会をより良くしたいという想いを持つ若者や、こだわりを持った女性だと考えます。

しかし、情熱だけでは起業は成功しません。図表6にもあるように、起業時の課題は、経営の知識や専門的な知識です。特に女性に関しては、法務や税務、ファイナンスやマーケティング等の知識に不安があって、起業に今一つ踏み切れないという人も少なくありません。

 

図表6:男女別起業時の課題

(出典)「女性起業家に関するアンケート調査」三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2012)

  

私は50歳を過ぎて独立しましたが、仕事の中身は今までやってきたことの延長でしかないため、起業家とは言えません。ましてや、スタートアップでもありません。ですから、本当の意味での起業のつらさややりがいは、実際に起業して成功した人や失敗した人のように伝えることはできません。

しかし、経営を行う上で必要なさまざまな知識を起業家にシェアすることはできます。これから起業する人の心配事や悩みを解決するために、こうした知識を持つ専門家の支援は重要になると考えます。

起業して失敗した人、成功した人の経験や、知識を持つ専門家が、こうした起業家候補をしっかりと支援する仕組みを作ることが、これからの日本には必要であると、GEMのレポートを読んで改めて感じました。

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