「値上げ」を考える~誰でもできる、売上が倍増する目標の作り方⑮

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値上げを考える

売上を増やす方法は、新しい顧客を増やすことだけではありません。新規顧客や市場の獲得を考えるのは一番最後です。

誰でもできる、売上が倍増する目標の作り方⑬で説明した通り、 新規顧客を獲得するよりも、値上げを行う方が、売上を増やすための難易度が低いことは理解できたと思います。

そうは言っても「値上げなんかしたら売上が落ちる」という感覚は理解できます。

値上げを行うためには、提供しているサービスやモノの価値が値上げした価格と釣り合っていなければなりません。そうでなければ、当然顧客は離れていきますし、それを防ぐには、品質や機能、サービス等の向上を図る必要があります。

多くの中小企業は、元請企業に高品質の商品やサービスを低価格で提供してきたはずです。そのような企業が、値上げできなければ廃業するという覚悟で交渉を行えば、元請企業や取引先はその企業がなくなった場合の自社のダメージを考え、若干の値上げは許容することが多いです。

もし許容されなかったとしたら、提供してきた製品やサービスは、単に価格が安いから評価されてきただけということなのかもしれません。それはそれで、何れは淘汰されるビジネスであったいうことになってしまいますが。。。

販売増よりも値上げ

ところで、値上げは利益を稼ぐためというお話をしましたが、値上げをすることと販売量を増やすこと、一体どちらがどのぐらい利益につながるのでしょうか。

例えば下記のいずれかの販売施策の内、利益(粗利)が多いのはどちらだと思いますか(話を単純にするため、原価は仕入だけとします)

A. 販売数を10%増やす
B. 販売価格を10%値上げする

まずAのケース。単価100円(原価60円)の商品の販売数が10,000個→11,000個に10%増加した場合です。

売上は、100円×11,000個=1,100千円、原価は60円×11,000個=660千円となります。この結果、利益(粗利)は、1,100千円-660千円=440千円となり、現状の400千円よりも10%増加しました。
 

図表1:販売数を10%増やした時の売上と粗利

 

次に、Bのケースです。
単価100円(原価60円)で販売数が10,000個の商品の販売価格を10%引き上げた場合です。

売上は、110円×10,000個=1,100千円、原価は、60円×10,000個=600千円となります。

この結果、利益(粗利)は1,100千円-600千円=500千円と、値上げ前よりも25%増加しました。

 

図表2:販売単価を10%値上げした場合の売上と粗利

 

Aのケースでは販売数を増やしましたが、販売数を増やそうとすると、新たに人を雇う必要があるかもしれませんし、物流費等がかかるかもしれません。最終利益(当期純利益)は、図表1と比較すると悪化する可能性もあります。

それに対してBのケースでは、単純に値段を変えただけですので、新たな販促費や物流費は発生しません。ですから、最終利益(当期純利益)は、純粋に価格上昇分だけ増加するはずです。

この計算からわかる通り、値上げをすると、原価も販売管理費も変わらない為、利益に与えるインパクトは販売数を増やすよりも大きくなる可能性があります。

売上が減少しても値上げ?

もうひとつやってみましょう。例えば、図表3のように、値上げをした影響で、売上が20%落ちてしまったとします。値上げをすると、当然一定数の顧客は離れる可能性があります。販売数が20%も落ちてしまうとかなりのダメージだと思いませんか?

前述と同じ条件で、単価100円(原価60円)で販売数が10,000個の商品販売価格を10%値上げします。しかし値上げの影響で販売数の10,000個が8,000個となってしまったとします。

この場合、売上は110円×8,000個=880千円、原価は60円×8,000個=480千円となり、粗利は880千円-480千円=400千円となります。

元々は売上1,000千円に対し、利益(粗利)は400千円でしたが、販売数が2,000個(20%)減っても値上げがその分をカバーしたため、利益(粗利)は変わりませんでした。

結果的に、販売個数が20%減っても、価格を10%上げることで利益(粗利)は維持できたことになります。

実際には、販売個数が減れば、販管費(販売費及び一般管理費)の中の 販売促進費やその他経費の一部が減少する可能性はありますので、最終利益(当期純利益)は現状よりも増加するかもしれません。

 

図表3:販売価格を10%上げた影響で販売数が20%ダウンした場合

 

結果は粗利率で異なる

値上げが利益に与えるインパクトは、原価率が高いか低いかによってかなり変わってきます。図表4(粗利率20%)と図表5(粗利率80%)で比較してみましょう。

図表3と販売価格、原価が同じ商品の販売単価を10%値上げし、販売数が20%ダウンしたとします。この場合、図表4では粗利は20%も改善しました。

粗利が低い商売というと、例えば商社や卸売業のように、仕入れたものを右から左に販売するような事業です。こうした事業は、利幅は薄いものの商品を仕入れてそれを次から次へと販売することで利益額を稼ぎます。

こうした企業が商品の値上げを行うと、販売数の減少よりも、値上げの効果の方が大きくなります。取り扱う商品が減れば、その分販管費は減るはずですから、最終利益(当期純利益)も粗利と同様に増加するはずです。

値上げをしても販売できるということは、その商品にそれだけの価値があるということです。20%の販売数がダウンしても、その商品が欲しいという購入層にターゲットを絞ることができれば、より大きな利益を稼ぐことができるわけです。

 

図表4:単価を10%上げた影響で販売数が20%ダウンした場合(低粗利)

 

一方で図表5のように、粗利率が非常に高い商売で値上げをした場合はどうなるでしょうか。

単価を10%値上げした結果、販売数が20%落ちると、粗利は800千円→720千円に10%ダウンします。粗利が高い商品の値段を更に値上げしても、販売数が落ちてしまうと粗利額は結局減少することとなります。

 

図表5:単価を10%上げた影響で販売数が20%ダウンした場合(高粗利)

商品の値段をどのように設定するか、事業の性質によって原価率はどの程度に抑えるべきなのか等々を考える際に、経営者はこのような数字と仕組みを理解する必要があります。

ここではあまり詳しい話はしませんが、こうした仕組みを理解するには、財務や管理会計についての理解が必要となります。

取り敢えずここでは、「粗利が低い商売では、販売数の増加ではなく価格の引き上げの検討の方が利益へのインパクトは大きい」ということだけ覚えておいてください。 

経営には財務の理解が必要

値上げを行うかどうかは経営判断です。経営判断を行うためには、現状を正しく判断し、どういう行動をどのタイミングで行うか、行動が上手く行かなかった時にどうするかまで考えなければなりません。そのためには財務的なインパクトを正しく捉える必要があります。財務といっても細かい簿記的な話ではなく、経営者として経営数字を捉え、将来を判断する力が必要です。

販売数や値上げの影響について粗利に与える影響は大体わかりましたが、最終利益に与える影響についてはこれだけではわかりません。販売数が増えても、その企業の営業員が対応できるなら最終利益に与える影響はありません。また、販売数が減っても、倉庫にかかる費用は変わらないはずです。

会社の決算に与えるインパクトを正確に捉えようとすると、財務的な観点、それも管理会計的な観点から経営判断をする必要があります。こうした判断については、 今さら聞けない財務と数字の話㉖~売上が10%減ると利益も10%減る? で説明していますので、興味がある方はご覧下さい。

 

また、決算や数字の重要性は理解しているけれど、財務や数字が苦手という方は、今さら聞けない財務と数字の話①~営業員や管理職、銀行員も?から読んでみることをお勧めします。

今さら聞けない財務と数字の話では、数字の数え方から財務諸表の見方、そして商品が原価割れする場合に販売すべきかどうかという管理会計の概念まで、35回に渡って記事を掲載しています。

大学を卒業して新社会人になった人や、営業責任者や経営者ではあるものの、あまり数字が得意でない人に向けてできる限り簡単に理解できるように書いたつもりです。

私は新卒で銀行に入社したものの財務諸表の見方がさっぱりわかりませんでした。その後上場企業のCFOになった際も、キャッシュフロー表について良く理解していなかったこともあり、株主総会で株主の質問に対し、正しく回答できずに冷や汗をかいたこともあります。

上場メーカーの経営者をしていた際は、販売価格とコストの関係や経営計画の売上と利益予想で悩み、管理会計の必要性を痛感しました。また、新人や営業部門の社員に基本的な財務会計を教える際、彼らが何に苦手意識を持っているのか良く分からずに、眠たくなるような研修をしたこともあります。

そうした苦い経験を積み重ねた結果、今では、財務や数字に拒絶間のある初心者にも、できるだけ短時間で見るべきポイントだけを伝えられるように少しはなってきました。

今さら聞けない財務と数字の話は自分がこれまで苦労した財務や数字に関することを、少しでもわかりやすく伝えたいと思って書いた記事です。会計士や税理士ではなく、元営業マン兼なんちゃってCFOだからこそ、新人や営業員、数字が苦手な経営者に伝えられるものがあると思っています。

このシリーズを読めば、完璧ではないですが、少なくとも経営に必要な財務の基礎は網羅できるはずです。

わからない部分があれば是非質問して下さい。皆さんから質問を頂ければ、同じ境遇の人々に、より分かりやすい伝え方に修正して行きたいと思っています。

⇨ 今さら聞けない財務と数字の話①~営業員や管理職、銀行員も?

⇦ 誰でもできる、売上が倍増する目標の作り方⑭

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