全ては利益のため~誰でもできる、売上が倍増する目標の作り方⑭

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全ては利益のため

売上を増加させる方策は新規顧客だけではありません。今までとは異なる市場への参入や新商品の開発は、経営者としては上手く行って欲しい、という気持ちから、どうしても「成功したら」という幻想を持ってしまいますが、それはあくまで幻想です。

まずは、既存の顧客、商品、市場の扱い方や売り方を見直すべきです。

ところで、当たり前ですが売上を増やす理由は、利益を出したいからです。

経営者の中には、売上を増やせば勝手に利益が上がると思っているのでは?というような人が少なくありません。上場企業であっても、個別の原価計算ができておらず、その製品の販売でどの程度儲かってるかをよく理解していない企業もあります。

会計的に原価計算は行っているものの、個別の製品原価が明確になっていない製造会社も中堅企業では結構存在します。

私が支援した企業の中にも、長年赤字を抱えながら販売を続けている企業がありましたが、そこには2つの問題がありました。

ひとつは、販売を代理店任せにしていて市場の状況を把握しておらず、赤字であることがわかっていても改善しようとしなかったことです。

改善しようとしなかった理由は、この企業がオーナー企業であったからです。社員はオーナーの顔色を見て仕事をします。行動自体が正しくても、経営者があまり良い顔をしないことを積極的にやりたがるサラリーマンはいません。

その背景にはこの会社がそこそこ儲かっていたという理由もあります。経営者も先代から事業を引き継いだ人で、波風を立てることが嫌いな人でした。その事業で損を出していることは何となくわかっていましたが、見て見ぬふりをしていたようです。

もうひとつの問題は、製品のあるべき価格を全く理解していなかったこと。つまり、原価を把握していなかった(できなかった)ということです。

帳票で見る数字は標準原価ベースで計算されているのですが、実際にはその標準原価がかなりいい加減でした。顧客から引き合いをもらって提出する見積の原価は実際の原価と比較するとかなりかけ離れていました。

部品の価格設定に関してはもっとひどい状況で、製品が売れれば儲けがなくても構わないという価格設定でした。この価格設定には、何か理念や戦略があったわけではなく、単に部品の価格について考えたことがなかっただけです。

この会社の製品は非常に品質が高く耐久性もすばらしいものでした。部品を交換して修理すれば20年でも使えます。このため会社は、顧客の要求に応じていつでも部品を提供できるようにしており、20年も前のモデルの部品まで在庫として抱えていました。しかも、これら部品の集積価格(販売部品を集めて製品に組み上げた時の価格)は本体の価格の1.2倍程度しかありません。

これでは儲かるはずもありません。

そこで部品価格の大幅値上げをすることにしました。詳細についての一部を「事例1」に掲載していますので、ご覧頂ければと思います。

このように、製品原価と販売価格について考えていない企業は、過去からの蓄積で何もしなくてもそこそこ儲かっている企業が多いようです。

しかし、「利益」に対する考え方が甘い企業では、ちょっとしたことで大きな損失を招くことがあります。

「相違」を理解する

ちょっと脱線しますが、過去に私が失敗したケースをご紹介します。

ある企業で中期経営計画を作成しました。そして、その計画を基に業績計画を作り、営業部門のKPIを設定しました。

1年目、2年目の業績は大きく伸びました。しかし、さすがに3年目になるとペースが落ちてきます。市場シェアも急激に伸びたため、3年目の売上は苦戦していました。

そんな時、とても大きな受注が決まります。こんな大きな案件を良く取ったなあとみんなで喜んでいたところ、暫くして、その案件の営業利益が赤字になっていることが判明します。なんと、販売価格が原価を下回る金額となっていました。

原価が大きく上がってしまった理由を営業員に聞くと、納品の際、いくつかトラブルがあり、顧客から追加で要求されたことに対応しているうちにコストが増えてしまったとの話でした。しかし、実際に一つ一つ調べてみると、そもそもの見積もりが安すぎて、最初から赤字になることが分かっていて受注していたことが判明したのです。

実は、この営業員が受注を獲得するため、見積もりのコストを自分で勝手にインプットして、社内の管理部門に承認を受けて顧客に提供していました。社内の管理部門のチェック漏れでもあるのですが、そもそも性善説で業務工程が組まれているため、営業員が意図的に変更するとなかなか見抜くことができません。

当時は、そんなごまかしをしてまで(しかもすぐにばれるのに)受注を取ろうとする人がいるとは思っていなかったので驚きましたが、社長からは、「目標管理とか売上の進捗を厳しく管理するから社員がプレッシャーを感じ、利益を度外視して受注を取ったんだ」と言われました。

年初に業績計画を説明し、それに基づいて毎月売上と利益目標の進捗管理をしていたのですが、「売上さえ上がれば利益は赤字になってもわからないだろう」と不正を働く人がいるとは思ってもいませんでした。個人的な利益のために会社の資産を盗む等であればまだ理解できますが、すぐにわかることを、こんなに目立つ案件で実行するとは。。。

それなりに大規模な企業であれば、絶対にありえないことですが、中堅・中小企業の現場を数多く経験した今となっては、彼がなぜそれほどわかりやすいことをしたのかが理解できます。

ひとつは教育です。中堅・中小企業の営業員は、製品やサービスについての教育は受けていますが、例えば財務や目標管理、人材育成等について学んだことはありません。また経営者と組織にモラルがあるかどうかも大事です。

財務的な基礎がなければ、売上と利益のつながりを理解できません。ですから営業員は、単純に売上だけを目指しますが、ちょっと賢い人間になると、このように裏で数字をいじって見栄えを良くします。これを防ぐには、経営者の姿勢と人としての基本的な教育が出来ているかどうかです。その上で、売上、利益等にひとつひとつ個人目標を設定し、それらの数字を常にチェックできる体制にする必要があります。

このケースも、経営管理のチェックが甘かったとひと言で済ましてしまいましたが、実際には管理部門は「変なことやってる」と気づいていたようです。ただこうした企業では営業の方が力関係が強く、経営者も業績を気にするため管理部門は何も言えませんでした。

大企業で働いていた人が中堅・中小企業で勤めると、このような驚きが多発します。それは、大企業と中堅・中小企業の人的なレベルの問題ではなく、そもそものカルチャーというか、ルールに対する感度や感覚(センス)が異なるために起こる驚きです。

日本の大学野球部の選手が、メキシカンリーグで試合するようなものかもしれません。

相手の仕事環境や組織を理解しないで仕事を進めてしまった自分を、今では恥ずかしく思います。

⇨ 誰でもできる、売上が倍増する目標の作り方⑮

⇦ 誰でもできる、売上が倍増する目標の作り方⑬

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