仕事と作業と報酬の関係~誰でもできる、売上が倍増する目標の作り方⑫

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固定観念に囚われない

図表1は、心理学者のカールドゥンカーが1945年に行った実験です。先に申し上げておきますが、この問題が解けたからと言って、売上が倍増するわけではありません。(笑)

テーブルの上に、マッチ、箱に入った画鋲、ロウソクがあります。これらを使ってテーブルに蝋が垂れない様、ロウソクを壁に取り付けてみて下さい。

皆さんならどのように取りつけますか?

 

図表1:ロウソクを壁に取り付ける

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「やる気に関する驚きの科学」Daniel H. Pink(TED.com)

 

いろいろやってみても、なかなか難しいですよね。では、図表2ではどうでしょう?これならできそうじゃないですか?

 

図表2: ロウソクを壁に取り付ける(画鋲が箱の外)

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「やる気に関する驚きの科学」Daniel H. Pink(TED.com)

 

答えは図表3のようになります。

私は最初、壁に蝋を垂らしてみたりしてみましたが、結局、いい方法は浮かびませんでした。図表2を見て漸く理解できましたが、同じ人も多かったと思います。

この問題の難しいところは、画鋲の入った箱を、問題を解くためのアイテムの一つではなく、単なる入れ物として見てしまうことです。

たとえば「箱はモノを入れるもの」という固定観念で考えてしまうと、その箱を、ろうそく立てとして利用するという発想が出て来なくなり、問題を解決することができません。

しかし箱を、問題を解くアイテムの一つとして見られるようになった図表2では、その使い方に気づき、箱をロウソクの台とすることができるようになるはずです。

 

図表3: ロウソクを壁に取り付ける(正解)

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「やる気に関する驚きの科学」Daniel H. Pink(TED.com)

 

人は固定概念に捉われてしまいがちです。固定観念に捉われずに柔軟に考えること、物事を分解すると意外と簡単であることに気づくために、この実験を題材にしてみました。

業務工程を細かく分類すれば、売上や契約につながる意外なKeyに気づくかもしれません。

仕事と報酬の関係

もうひとつ、1962年にサム・グラックスバーグが同じ図を使って行った実験を紹介します。(図表4)

 

図表4: ロウソクを壁に取り付ける

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「やる気に関する驚きの科学」Daniel H. Pink(TED.com)

 

先ほどの画鋲が箱の中に入った図を見せ、「蝋を垂らさないで壁にロウソクを立てなさい」という問題をAとB、2つのグループに出しました。

Aのグループには、「この問題をどのぐらいの時間で解けるか平均時間を図りたいので、協力して欲しい」と伝えます。Bのグループには、「この問題を早く解いた上位25%の人には5ドル、1位になった人には20ドルを提供する」と提案しました。5ドルといっても、1962年のお金の価値ではかなりの額です。

グラックスバーグは、こうしてAグループとBグループのどちらが早く問題を解けるか実験しました。結果はどうなったと思われますか。やっぱりお金をもらったBグループの方が良い結果になったのでしょうか。

この実験の結果は、単純に「平均時間を知りたい」と説明したAグループの方が、Bグループより3分半も早く問題を解いてしまいました。

「成果主義の人事評価」を是とする常識を揺るがすような結果です。 

この実験からグラックスバーグは、クリエイティブな作業では、金銭的なインセンティブはその結果に悪影響を与えると結論付けています。

「考える」ことが必要な仕事に関しては、賃金やボーナスを餌に仕事をさせようと思ってもダメだということです。

他にも同様の実験をした人がいますが、どれもグラックスバーグの研究と同じ結果になりました。人は、金銭的インセンティブを与えられた途端やる気をなくしました。

企業が考える人を育てるためには、金銭的なインセンティブを与えるのではなく、純粋に問題を解く楽しみの様なものを与える方が効果的。これは、支払える報酬が限られる中小企業の経営者にとっては朗報でしょう。

将来幹部として育てたいリーダー的な社員には、ぜひ考える機会を与えて下さい。彼らの意見をKPI作成に取り入れると、モチベーションが上がるだけでなく、これまで経営者が気づかなかった新たな発見があるかもしれません。

お金を掛けなくても考えさせることで人を育てることができる。中小企業経営者こそ、さまざまな知恵をつかって経営を行う必要があります。

作業と報酬の関係

ところで、グラックスバーグはもう一枚のロウソクの絵でも同じ実験を行ないました。比較的回答を導くのが簡単な方の絵です。(図表5)

 

図表5:ロウソクを壁に取り付ける

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「やる気に関する驚きの科学」Daniel H. Pink(TED.com)

 

前回同様、Aのグループには「この問題をどのぐらいの時間で解けるか平均時間を図りたいので協力して欲しい」と伝え、Bのグループには「この問題を早く解いた上位25%の人には5ドル、1位になった人には20ドルを提供する」と提案しました。

すると今度は、前回と逆の結果が出ます。

問題を早く解いたらお金をあげると言われたBのグループの方が、早く問題を解けたのです。

この実験からグラックスバーグは、「金銭的インセンティブは、単純作業に対しては効果的に働く」という結論を導き出しました。つまり、簡単なものであれば、目の前にニンジンをぶら下げることによって生産性を上げることができるわけです。

これも中小企業経営者にとってはなかなか興味深い結果です。

目標を設定する際、業務工程を単純行動に分解し、例えば「顧客往訪数」等をKPIとした場合、その達成に対し金銭的なインセンティブを与えることは、効果があるということになります。

リーダーを育てるためには、金銭的なインセンティブではなく「考える機会」を与え、若手や経験が少ない社員を育てるためには、KPIを単純化して目標達成に対する「金銭的なインセンティブ」を与える。

例えば、単純な目標を設定し、達成した人には「社長賞」のようなインセンティブを与え、若手社員の目標達成に対する意識を高めるようなマネジメントも効果的かもしれません。

KPIを、このようなマネジメント方法として使えば、それほどコストを掛けずとも、業績の向上と人材育成が実現できる可能性もあります。

 

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