誰でもできる、売上が倍増する目標の作り方⑨~Keyとなる行動をひとつだけ探す

意外なKPI
図表1のB社が、新たな契約を獲得するためには、税金セミナーの開催が鍵(Key)となっているようです。
業務フローを見ると、税金セミナーで集客した見込顧客の中から、個別相談に訪れる人がいます。B社は、個別相談で顧客が抱える問題を聴取し、適切な専門家を紹介します。紹介した専門家が問題を解決するきっかけとなれば、それが口コミで広がり、最終的にB社の新規契約につながります。
こうした業務フローで新規顧客を増やせるビジネスとは何でしょうか。銀行での窓口相談や、不動産会社のプロモーションでしょうか。
図表1:業務フローの分解とそれぞれの歩留まり率 (B社のケース)

実は、B社は葬儀社でした。
葬儀社がマーケティングというと少し変な感じがするかもしれません。最近は全国区の大手葬儀社が増えたため、 地域に根差した葬儀社は大変です。
銀行や不動産会社も税金セミナーの開催で顧客を呼び込み、自社の商品を売り込みますが、葬儀社に相談に来る顧客の状況は切実です。
どんな人生も必ず終わりを迎えます。
お金があってもなくても、人生の終わりには家や土地について、事業を行っていればその資産や負債について、本人だけでなく家族が考えなければならないことは山ほどあります。
例えば自分の親が亡くなってしまい、空き家として残された家の処分をどうすればよいか、資産は多くはないが、相続税は支払う必要があるのか等々、今まであまり考えたこともなかったことが急に目の前に迫っています。
事業を行っていた人が亡くなれば、家族は顧問税理士や弁護士に相談できますが、一般の人にとって税理士や弁護士は遠い存在です。
そこでB社は地域の住人に向け、葬儀や葬儀後の税金、法律、不動産に関するセミナーを開催することにしました。そして、そのセミナーに来た人から個別相談を受け、内容によって最適で信頼できる専門家を紹介します。
毎月のこうした取り組みが、口コミで広がって相談者が増え、葬儀があればB社に相談しようという流れができるわけです。
もちろん毎回セミナーが盛況になるわけはなく、何度も葬儀を行う人がいるわけでもありません。普段から葬儀や葬儀後の問題について考えている人も少ないでしょう。
だからこそ突然葬儀になると、「誰に頼めばいいのか」、「税務署や役所でやらなければならない手続きは?」、「銀行にどんな書類を提出するのか、お金が出せなくなってしまうのか」等々で困る人が多いわけです。
そして葬儀後は、先に挙げたような故人の資産についての話も出てきます。
葬儀という初めての体験は、何をすべきかわからず、必要以上に不安です。住民のこうした不安を取り除き「困ったことがあればいつでも頼ってください」という地域に対するメッセージをB社は発信し続けています。
地域で末長く信頼されるためのKeyがセミナー開催というわけです。
余談ですが、こうした取り組みをしている地元の葬儀社は、個人情報の宝庫です。家族構成だけでなく、家族が保有している不動産や金融資産、親族や近隣住民との関係、更に地元を離れた家族の消息まで、ありとあらゆる情報が入手できます。かなりの部分は「あの家はね」というご近所からの口コミです。「口コミ」の威力はすごいですね(笑)
こうした情報を活用して、地域でさまざまなビジネスを展開している企業も数多くあるようです。
Keyとなる行動
最後は、一般的なお店を運営するC社です。
図表2の業務フローの何をKeyにするかは経営者の判断ですが、ここでは購入客数や顧客フォロー数等が目標達成のKeyになっているようです。
来店顧客の10%が商品を購入し、その内20%がメンバーズカードを作れば、基本情報だけでなく顧客の興味がある商品の情報等も得られます。こうして得たデータを基にお知らせメール等でアフターフォローを行います。
フォローした顧客の10%がリピートで来店し、更にリピーターとなった顧客の10%が、友達や知り合いにその店を紹介してくれると、新規顧客が増えるという事業のサイクルになっているようです。
図表2: 業務フローの分解とそれぞれの歩留まり率 (C社のケース)

業務フローを分解し、どの行動をKeyとしてKPIを作れば良いサイクルで事業が運営できるかを経営者は必死に考えます。そしてKeyを決めて、歩留まり率から目標達成に必要な回数を導き出し、KPIを設定します。
KPIはひとつに
KPIを設定する際に気をつけることは、KeyやKPIは1つに絞ることです。
優秀な営業員や店員であるほど、たくさんのKeyやKPIを設定したいと考えます。しかしKeyは最重要となる鍵です。最重要は1つであるべきです。何がKeyとなるのかを徹底的に考え抜き、まずはKPIを1つ決め、全員で目標の達成を目指して下さい。
1つのKeyに対しKPIが複数あってもおかしいわけではありません。しかし、経営者にとっても社員にとっても、目標はシンプルにした方が良いです。何をKeyにして、どの程度の量を行動すれば売上目標が達成できるかを考え抜き、まずは、それを追求してみて下さい。
但し、間違ったKeyを選び、それでKPIを作ると、営業員がどんなに頑張っても、営業目標は達成できません。間違っていることがわかれば、経営者は早急にKeyを見直し、新たなKPIを設定しなければなりません。
KPIの達成は社員の責任ですが、正しいKPIを設定することは経営者の責任です。経営者は売上につながるKeyを見つけ出してKPIを設定します。社員はそのKPIを効率よく達成するために知恵を絞る。
気合や根性論だけでなく、経営者の役割と、社員の役割をはっきりさせる。其々が緊張感を持ち、全員で目標達成を目指す姿勢が会社を成長させます。
管理職のための KPIと財務【入門編】
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経営者や管理職は、攻めと守りの数字を理解する必要があります。「今月の売上目標は〇〇百万円を死守!」と気合を入れるだけでは目標は達成できません。目標を達成するためには、「何が達成の鍵で、それを何回ぐらい行えば目標に達するか」を理論的に数値としてはじき出す必要があります。
そして行動計画を作成する際は、その行動が利益につながるものなのか、かけるべきコストかどうか等財務や管理会計の基礎を理解しておく必要があります。
本書では、売上目標を達成するためのKSF(Key Success Factor)の見つけ方、行動計画への落とし込み方といった「攻めの数字」と、赤字でも販売すべき場合とはどのような場合なのか、大口の受注はどこまで値下げして受けるべきか等の「守りの数字(管理会計)」について経営者や管理職が押さえておくべき点を学ぶことができます。
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