社員が考えるためのKPI~誰でもできる、売上が倍増する目標の作り方⑧

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売ることより、話を聞くこと

アジアを主戦場に機械設備を販売しているA社は、早くから現地で日系企業相手に「ルート営業」や「御用聞き営業」を行っています。日々の取引の中から商売のネタを見つけ、それを解決する何かを提供して受注につなげてきました。(図表1参照)

A社は若手社員を積極的に現地法人に派遣しました。若手社員は経験が浅いため、自社製品の特長は理解していても、製品が顧客のビジネスにどのように役立っているか、顧客がどのような困りごとを抱えているかはあまり理解できていませんでした。

営業員は、兎に角、顧客に商品を売ろうとしますが、顧客の方が製品を熟知しています。会ってはもらえるものの、具体的に何かを提案できるわけでもなく、単に購入を依頼するだけなので拠点の営業成績は長年あまり芳しくありませんでした。

そこでA社は顧客への往訪回数(面談回数)をKPIとして採用します。「まずはお客様とお会いすること、商品の売り込みをするのではなく、何でも良いからお客様と話をして教えて頂きなさい。」と営業員に伝えました。

アジアに進出している日系企業では、日本から派遣された社員に面談を依頼すると、取引が無くても会ってもらえます。

特に若手社員が往訪すると、自社の製品や他社製品の話や、現場で起こったさまざまな問題について教えてもらえます。社員はとにかく勉強させてもらうつもりで顧客の話を聞くことに注力しました。そして自分では答えられない質問をもらうと、それを宿題として持って帰り、次回往訪時に回答するようにしました。

この取組を続けていると、顧客から「こういう使い方ができれば良いのに」とか「何でこの使い方をしてはいけないのか」と、ユーザー視点での疑問やアドバイスを数多くもらえるようになります。

日本から派遣された社員は、現地では何らかの責任者的な立場にある人が殆どです。現場のことは人一倍理解し、製品に知識も豊富な顧客との会話は、A社の若手社員にとってはとても大きな成長の機会になります。

たとえ商売の話にならなくても、顧客は、時に自分の経験を若手社員に聞かせてくれたりします。場合によっては別の会社を紹介してくれることもありました。これまで商品を売ることばかり考えていた社員が、相手の話を聞く、教えてもらうという態度に変わった途端に得られる情報量が何倍にもなりました。

面談回数が増えると当然ですがビジネスチャンスも増えます。最初は、顧客面談で、何かしらの問題を聴取できた割合(歩留まり率)は20%、更にその問題の解決策提案に至る歩留まり率も20%程度から始まり、その活動を続けながら、面談、問題が聴取、提案回数等のデータを蓄積していきました。

A社の経営者はこうした活動データを分析して、常に歩留まり率の見直しをしていました。最初は「面談」から「問題の聴取」への歩留まり率は20%でしたが、営業員が慣れてくると歩留まり率は上昇します。経験を積むに従い商品知識やトラブル対応へのスキルが向上し、問題解決能力も向上します。そうすると、提案や引合いにつながる確率もどんどん高くなっていきます。

こうした数値面での成長は、経営者だけでなく社員が肌で感じることが大事です。最初は言われたことだけをやっていた社員も、自分の活動や成長が、数値で見えるためモチベーションもあがります。それによって、更に効果的なKeyの発見やKPIの設定方法を考えることに注力し始めました。

こうしてA社は毎年売上目標を達成し、後発だったにもかかわらず、アジアの複数の国で業界NO1の地位を獲得するに至ったのです。

 

図表1:業務工程の分解とそれぞれの歩留まり率(A社の場合)

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社員が「考える」ためのKPI

A社のケースでは、営業員が顧客の話をよく聞き、その話の中からビジネスに繋がりそうなモノを拾い上げ、自社製品が役に立てないかを考える訓練を繰り返せしたことが、KPIを設定した一番の効果でした。

実際に顧客との面談を通じて、他社製品ではトラブルが頻発すること、設備を設置した後はサービスがほとんどないこと等を知った営業員は、他社製品のカタログを集め、製造や他の部門の人間を集めた勉強会を始めました。

例えば外国製品の場合、アジアには代理店やサービスショップがないことも多く、代理店があっても、社員のスキルが十分でないことも多くあります。

そこでA社は、勉強会等で学んだ他社製品の知識を使い、顧客の工場で利用されている製品の点検を開始します。新たにサービス部門を立ち上げ、修理が必要な製品や交換時期にある部品があれば、顧客から他社の代理店に依頼して修理を促すための「他社製品の無料点検サービス」です。

安易に他社製品から自社製品への交換を勧めるのではなく、現在使っている製品を長く、安全に使用するためのサービスというコンセプトは、顧客から大変喜ばれ、結果的に自社製品の販売も大きく伸びました。

現在では、このサービス部門は同社のコア事業に成長しています。製品販売と異なり、修理やサービスは景気が落ち込んだ時に需要が急増します。このため、アジアの景気が落ち込み製品販売が不振となっても、その不振を十分カバーできる事業に成長しました。

KPIを「顧客と面談(して話を聞く)」にしたことで、社員は自社製品を売ることよりも顧客と面談して話を聞くことに必死になり、その結果、社員が考える様になり、新たなビジネスにつながったわけです。

何をKPIとして設定するかによって、このような効果も生まれるという点は小さな会社にとっても非常に参考になります。

さて、次は図表2のB社のケースです。

B社の業務工程では、税務セミナー開催が新規契約に繋がるKPIとなっています。専門家の話を顧客が聞くことで契約に結び付くビジネスとは、一体どのようなビジネスだと思われますか。

 

図表2:業務工程の分解とそれぞれの歩留まり率(B社の場合)

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