誰でもできる、売上が倍増する目標の作り方⑦~KPIを作ってみる

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イメージを数値化する

目標を達成するための鍵となる行動をKPIと呼ぶことにしました。では、鍵となるものはどのように見つければ良いのでしょうか。

前回の通り、まずは経営者の経験や勘に基づいたKeyを設定します。

経営者の頭の中には、「売上を上げるためにはこれぐらいの顧客数が必要」とか、「月初に引き合いがこれぐらいなければならない」いうイメージが、あるはずです。頭の中にある、経験や勘に基づいた理屈『 〇〇〇を、〇〇〇ぐらいやれば、〇〇〇の売上になるはず』を「見える化」し「数値化」すれば、それが最初のKPIとなります。

具体的には、次のような作業が必要になります。
 

Step1
まずお客様にモノやサービスが届くまでの業務行程を分解します。例えば、最初にお客様と面談してから、引合い、見積もり、交渉、受注に至るまで、取引のプロセスを細かく分解します。

Step2
次に、各工程の歩留まり率をざっくりで良いので推測します。歩留まり率とは、例えば、初回面談から提案に繋がる確率のことです。10回面談した内、3回提案ができれば歩留まり率は30%になります。この工程の中から、目標達成のために最も重要なKeyを見つけます。

Step3
目標達成に最も重要なKeyを見つけたら、その理論値を計算します。
例えば、初回面談をKeyとする場合、面談から提案につながる確率は30%、提案から見積もりにつながる割合が40%、、、とプロセスを分解し、最後の契約(受注)に至るまでの確率をそれぞれ出します。その確率を割り戻せば、1回の受注を取るために何回の面談が必要かという理論値が出せます。この数値がKPI(業績向上の鍵となる指標)となります。

KPIを作ってみる

文字で読むとちょっと分かりにくいかもしれませんので図1で説明します。

この業務工程に於ける歩留まり率とは、面談から提案・引合いに繋がる確率の30%や見積もりから内定に繋がる確率40%のことを言います。
業務工程から受注を獲得するためのKeyとなる行動を見つけ、それを数値化したものがKPIとなります。  

図表1の業務工程では面談から提案に至る確率(歩留まり率)は30%、更にその提案から見積もりに至る歩留まり率は40%、そして最後に内定から受注に至る歩留まり率は80%となっています。

 

図表1:業務工程を分解する

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業務工程と其々の歩留まり率に基づき、受注1件を獲得するために必要となる面談数を計算します。

まず、受注1件を獲得するためには内定1.3件が必要となります。次に、内定1.3件を獲得するためには3.1件の見積もりが必要となります。こうして計算していくと、受注1件を獲得するためには、理論上26回の面談が必要となることがわかります。 (図表2)

  

図表2:歩留まりから受注獲得に必要な面談数を導く

画像7

 

この会社の月間目標が受注10百万円だったとします。先ほどの計算で、1件の受注を取るためには26回の顧客面談が必要ということがわかりました。しかし回数がわかっても、10百万円という金額をどのように達成すれば良いかはわかりません。

そこで平均受注単価を計算します。大抵の会社には、受注の金額と件数のデータがあると思います。平均単価は単純に受注金額の合計を件数で割って出てきた数字です。業種によっては単純に平均単価を出さない方が良い事業もありますが、その場合は品目や事業別に単価を計算して下さい。この平均受注単価を、目標とする受注金額で除して必要な件数を導きます。

図表3は平均受注単価が1百万円の場合です。10百万円の受注を獲得するためには10件の受注が必要となります。

前述の計算では、1件の受注を獲得するためには理論上26回の面談が必要でしたから、10件の受注を獲得するためには260回の面談が必要となるはずです。この260回がKPIとなります。営業員2名でこのKPI目標をじ実行する場合、1人130回の顧客面談回数が個人の目標となります。

 

図表3:受注目標に対するKPIを設定する

画像3

 

経営者は、こうして計算したKPIで営業員の目標を管理します。130件の顧客面談以前に、電話して面談することが最も重要ということならば、電話をかけた件数がKPIになるかもしれません。何れにしても、こうして設定したKPIを目標として管理すれば、目標達成のために社員は何をやればよいかが明確になります。

法人向けに商材を販売する会社のケースを考えてみましょう。(図表4)

業務工程を分解する過程や歩留まりの計算は先ほどと同じです。ただ、Keyが異なります。この会社では、顧客への提案を売上達成のKeyと考えています。業務工程を分解し歩留まり率を計算すると、1件の受注を取るためには7.8件の提案が必要であることがわかりました。

  

図表4:受注目標・歩留まり率・Keyの決定

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この会社の平均単価が1百万円、月間受注金額の目標が10百万円だとすると、目標達成のためには10件の受注が必要となります。1件の受注を取るためには7.8件の提案が必要なので、10件の受注をとるためには、78件の提案をしなければなりません。これを2名の営業員で分担すると、1人当たり39件の提案が、受注目標を達成するためのKPIとなります。(図表5)

  

図表5:KPIを決める

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KGI、KSF、KPI

KPIの他に、KGIやKSFといった言葉も良く使われます。似たような英語の頭文字が沢山出てきてややこしいですが、一応、その関係性と意味の説明をしておきます。

営業部門が目標を立てる際、売上や営業利益、顧客数等を目標とすることがあります。こうした業績面での数値目標をKGI(Key Goal Indicator)と呼ぶことが多いです。売上10百万円や営業利益2百万円といった数字をKGIとして最終的に目指す業績目標となります。

次に、KGIを達成するための「鍵となる成功要因」のことをKSF(Key Success Factor)と言います。顧客との面談回数や提案回数、或いは無料着付け教室の開催回数等、目標達成の鍵となる行動のことをKSFと言います。

最後に業務工程を分解して見つけ出したKSFに歩留まり率を勘案して算出した目標を達成するために必要な行動量のことをKPI(Key Performance Indicator)といいます。

売上目標がKGI、売上を達成するためのKeyとなる顧客面談がKSF、その面談回数がKPIとなります。

会社によってこうした指標の使い方が異なることもありますが、このように理解して頂ければと思いますし、特に覚える必要はありません。

 

図表6:KGI、KFS、KPIとは

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⇨ 誰でもできる、売上が倍増する目標の作り方⑧

⇦ 誰でもできる、売上が倍増する目標の作り方⑥

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経営者や管理職は、攻めと守りの数字を理解する必要があります。「今月の売上目標は〇〇百万円を死守!」と気合を入れるだけでは目標は達成できません。目標を達成するためには、「何が達成の鍵で、それを何回ぐらい行えば目標に達するか」を理論的に数値としてはじき出す必要があります。

そして行動計画を作成する際は、その行動が利益につながるものなのか、かけるべきコストかどうか等財務や管理会計の基礎を理解しておく必要があります。

本書では、売上目標を達成するためのKSF(Key Success Factor)の見つけ方、行動計画への落とし込み方といった「攻めの数字」と、赤字でも販売すべき場合とはどのような場合なのか、大口の受注はどこまで値下げして受けるべきか等の「守りの数字(管理会計)」について経営者や管理職が押さえておくべき点を学ぶことができます。

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