誰でもできる、売上が倍増する目標の作り方⑥~目標を達成する鍵(Key)

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目標は勘で設定する

経営者に、「売上目標を達成するためにがんばれ!」と言われたら、社員は「がんばります」としか答えられません。

しかし、「3月は、無料着付け教室を2回開催しよう」という目標だったらどうでしょうか?

「3月に無料の着付け教室を2回開催する」という目標ならば、社員は何をやればよいか具体的にわかります。場所や時間、集客等を考え、自分で目標の達成がコントロールできます。

経営者が具体的な目標を定めれば、社員は目標を達成するために何をすべきなのかを自分たちで考えるようになります。

この着物販売店の経営者が無料教室開催を目標とした理由は、着物に触れる機会を増やすことで顧客が商品の良さを知り、それが売上につながるという過去の経験を重要視していたからです。

2回という回数にも意味があります。1回では少なすぎ、3回では多すぎて社員の負担が大きくなってしまう等、回数の設定についても、経営者の経験や勘に基づいて行っています。

長年商売をしてきた経営者には、多かれ少なかれこのような「商売の勘」が蓄積されています。

しかしそれは社員にはわかりません。ですから、この経営者の経験や勘を「1,000万円を売り上げるために、無料教室を月に2回行う」という具体的に社員が行動できる具体的な目標にする必要があります。

「1,000万円売り上げるには無料教室2回が必要」は、経営者の勘に基づいた想定(仮説)でしかありません。しかし、経営者の勘は過去の経験から蓄積されているものです。この会社にとっては最も信頼できるデータです。

最初は、経営者の勘に基づいた目標達成を目指して行動します。この時点で目標を設定した理由は説明できません。しかし、無料教室開催の都度、開催の日時や場所、顧客数や年齢等の属性、告知方法等々のデータを蓄積します。これらのデータと販売実績を分析すれば、そこに関連性が出てくるはずです。分析の結果、「月に2回」が適切でなければ、目標を修正し、ここで初めて、目標を設定した理由が社員に説明できます。

データに基づいて「作っては修正、作ってはまた修正」という作業を行うことで、仮説と実績との乖離幅は縮まります。社員は、目標が設定された理由を理解すると同時に、データ収集と分析を通じて、目標の達成や業績向上のために自発的に考え行動し始めます。

社員が行動できる目標を設定することは、社員の自発的に考え行動する力を伸ばすことにもつながります。 

 

図表1:きもの店の今月の目標(無料着付け教室を2回開催) 

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戦力によって目標を変える

このような目標設定と修正を繰り返す方法を行えば、確かに社員の考える力は向上します。しかし、たくさんのデータの中から本当に必要なものを取り出して仮説を作っていくには商品やサービスを熟知した社員が必要です。

「うちの会社には、データを取ったり分析したりできる社員はいない」と言う会社も多いと思います。社歴の浅い若手社員や自社商品のことをよく理解していない新人には、どんな目標を与えれば良いのでしょうか。

ある機械設備の販売会社では、顧客工場で設備の無料点検を行う回数を目標にしています。工場往訪の際は、自社だけでなく他社製品も点検します。

自社製品で交換すべき部品があれば修理の案内を行い、他社の製品に問題があれば、顧客にそのメーカーに連絡して修理をするよう促します。ガソリンスタンドでは空気圧やウオッシャー液の残量を調べてくれますが、あのようなサービスをイメージして頂ければ良いと思います。

こうしたサービスの目的は、顧客との接点を持ち、関係を深めることです。何かを売りつけたり、他社製品を自社に乗り換えさせようとしているわけではありません。何かあった時に頼りになる会社、常に面倒を見てくれる会社というイメージを顧客に持ってもらえることを最重視しています。

この会社が点検修理サービスの件数を目標とした理由は、会社には若手社員が多く、提案営業等を行える人材がいないことでした。点検修理を行えば、若手社員のスキルや製品(自社だけでなく他社製品も)に対する知識が増やせるという狙いもあります。

本来、熟練の社員がいれば、提案営業で顧客を回り、もっと効率的に売上を上げる方法があるわけですが、現有の戦力を如何に効率的に使い、育成するかを考えて、経営者は点検修理サービスの件数を目標としました。

着付け教室の場合は、いつやるか、誰を呼ぶか、どんな場所でどういう内容にするか等を考えなければなりません。しかし、点検修理では、若手社員はひたすら顧客の工場で点検修理を行います。点検はお客様に喜ばれ、社員は内容をレポートにするだけで良いので、あまり考える必要もありません。(もちろん経営者はデータの分析を行うのですが)

下の図では月間目標40社となっていますが、Cが「頑張ればできそうだ」と言っているのは、「何をして良いかわからないが、兎に角必死にやります」という「頑張る」ではありません。「やるべきことは理解したので、達成に向けてやってみます」という意味の「頑張る」です。

目標設定は、社員が行動することが可能で、その達成をコントロールできるものにして下さい。そのためにも目標設定のレベルや内容は、社員の熟練度に合わせて変える必要があります。 

 

図表2:設備販売会社の今月の目標(無料点検40社)

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KPIとは

着物店では無料教室開催を月に2回、機械設備販売会社では、機械の無料点検40社という行動目標を立てていました。 

着物販売店に於ける無料教室開催や機械設備販売会社の無料点検サービスは、売上目標を達成するための行動です。

売上目標を達成するために、売上を作り出す行動は何で、どのぐらいの量が必要かを考えた結果が「無料教室2回」や「無料点検40回」なわけです。

この、「目標を達成する為の鍵(Key)となる行動」のことをKPI(Key Performance Indicator「重要業績評価指標」)と言います。

KPIの決め方や内容については様々な見解がありますが、ここでは売上を達成するための最も重要な行動で、数や量で示せるものをKPIと呼ぶことにします。

 

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⇨ 誰でもできる、売上が倍増する目標の作り方⑦

⇦ 誰でもできる、売上が倍増する目標の作り方⑤

管理職のための KPIと財務【入門編】

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経営者や管理職は、攻めと守りの数字を理解する必要があります。「今月の売上目標は〇〇百万円を死守!」と気合を入れるだけでは目標は達成できません。目標を達成するためには、「何が達成の鍵で、それを何回ぐらい行えば目標に達するか」を理論的に数値としてはじき出す必要があります。

そして行動計画を作成する際は、その行動が利益につながるものなのか、かけるべきコストかどうか等財務や管理会計の基礎を理解しておく必要があります。

本書では、売上目標を達成するためのKSF(Key Success Factor)の見つけ方、行動計画への落とし込み方といった「攻めの数字」と、赤字でも販売すべき場合とはどのような場合なのか、大口の受注はどこまで値下げして受けるべきか等の「守りの数字(管理会計)」について経営者や管理職が押さえておくべき点を学ぶことができます。

誰でもできる、売上が倍増する目標の作り方⑥~目標を達成する鍵(Key)” に対して1件のコメントがあります。

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