誰でもできる、売上が倍増する目標の作り方②~目標を達成するために目的をはっきりさせる

なぜ目標は達成できないのか
前回、「売上とはお買い上げいただくこと」という話をしました。 今回は売上目標を達成するために、どのような営業目標を作るかを考えます。
BtoB(Business to Business 企業相手の商売)の商品であっても、BtoC(Business to Consumer 一般消費者相手の商売)の商品であっても、その商品がお客様に知られなければ買ってもらえません。
マーケティング、商品ディスプレイの方法、SEO対策(Search Engine Optimization WEB表示が上位になる様な対策)等々、売るための施策は色々あります。
そうした方法論については、ネットで検索すれば学べるサイトがあります。ここでは、経営戦略に基づいて作った目標を、社員、特に営業員がどのように達成するかをお伝えしたいと思います。
多くの企業では営業員は販売目標を持っています。しかし、販売目標を達成することはなかなか困難です。
経営者からは「うちの営業は数字に対するこだわりが弱くて」とか、「目標を立てても、いつも達成できない」という悩みを良く聞きます。
営業に関わるメンバーは、なぜ目標が達成できないのでしょうか?
商品やサービス知識が足りないからでしょうか?
お客様と上手くコミュニケーションをとる力がないからなのでしょうか?
目標達成が評価につながる仕組みがないため、達成に対するモチベーションに欠けるのかもしれません。
営業員が営業目標を達成できない殆どの理由は、知識や能力の問題ではありません。「仕事の進め方がわからない」ことや「目標や役割がはっきりしない」ことが原因です。

日本企業の目標、米国企業の目標
皆さんの企業では営業目標をどのように立てているでしょうか。2~3人の小規模事業であれば、「そもそも目標とか計画なんてない」という経営者もいるかもしれません。
また、取り敢えず前年対比で5%増、10%増と、前年の数字を比較対象として今年の計画を立てる企業もあるでしょう。
ある小売業は、前年比売上20%増という目標を毎年立てています。そんなに売上の伸びが大きいとは、最先端のすごい商品を作っているのかと思って経営者に尋ねると、「あくまで目標」という答えが返ってきます。
どうせ達成できないのであれば、発破をかける意味でも目標は高く設定した方が良い。目標を低くすると、結局その目標数字さえも達成できなくなると考え、このような高い目標を毎年設定し、毎年目標未達に終わるようです。
日本の中小企業では、目標の達成度を報酬や人事評価と結びつけている企業が少ないため、このような目標設定が可能なのでしょう。
しかし、一部の上場企業やアメリカの企業ではそうはいきません。目標を達成するかしないかは社員一人一人の報酬や人事評価に大きく関わります。
業績目標は株主や経営者が達成しなければならない数字です。社員にもその数字の達成が求められます。ですから、目標設定する際は、設定する側の企業とされる側の社員が真剣に交渉し、数字を決めます。
これに対して多くの日本企業では、経営者が決めた目標を、「こんな数字できるわけないだろ」と思ったとしても、殆どの社員が受け入れます。
その数字は前述の通り、そもそも経営者も出来るとは思っていない、或いは何も拘りがないので、8割も達成できれば「上等」と言われます。
社員は「わかりました、がんばります!」と気持ちよく答え、上司に対する心象を良くし、最後に「必死に頑張ったんですが力が及びませんでした!」と謝れば、大抵の企業では許されます。
このような感じで目標が決められるので、達成するための方法論も「気合と根性」になりがちです。
経営者に対し、「目標を達成するためにやっていること」や「社員にやらせていること」を質問をすると、「朝会で毎日数字をチェックしている」とか、「計画に対し PDCAを回している【Planを立て(P)、それをやらせ(Do)、なぜできていないかチェック(Check)し、次の行動(Action)に繋げる】」と、理解しているのかどうかわからない答えが返ってきたりします。
中には、「兎に角頑張らせる」とか「営業責任者に任せている」と、自らの責務を放棄した様な答えが返ってくる場合もあります。
営業員が目標を達成できない理由の多くは「仕事の進め方がわからない」ことや「目標や役割がはっきりしない」ことです。
それなのに経営者が、「朝会での数字のチェック」や「PDCAを回してる」などと言っている様では、目標が達成できなくても当たり前です。
日本企業の多くの経営者は、目標を達成する仕事の進め方がわかっていないようです。

事業の目的と目標
目標の達成という話をしましたが、事業に於ける「目的」と「目標」の違いは何でしょうか。
事業に於ける目的とは、その事業を通じて成し遂げたいことや、経営者が実現したいことです。言い換えれば「経営理念」や「Mission・Vision」、「存在意義」といったものになります。
中小企業の経営者には、事業の目的を、「金を稼ぐこと」、「生活するため」と言う人も少なくありません。
しかし、お客様は、経営者の生活を支えるために商品を買ったり、サービスを利用したりするわけではありません。社員や取引先も、経営者の儲けのために働いているわけではありません。
経営者にお金が入ってくるのは、企業がその目的を果たすために活動した結果です。お客様に商品やサービスが受け入れられるためには、お客様がお金を出してでも欲しいと思うモノを提供する必要があります。
企業が提供する商品やサービスが世の中に必要とされ、その対価が企業に支払われる。それによって経営者や社員が報酬を得て、且つ社会に貢献しているという満足度も向上する。更にそれが新しい雇用や税金の支払いに繋がり、地域社会にも貢献しているわけです。
P・ドラッカーは、企業の目的を「顧客の創造である」と定義しています。
企業は顧客を創造するため、つまり自社の商品やサービスを利用したいというお客様を増やすために経営を行います。
そして、提供したモノの対価としてお客様から支払いを受けることで、社員に報酬を払ったり、税金を納めたりしています。このサイクルを続けるために、企業は提供するモノ(商品やサービス)の価格に自社の利益分を加えます。
つまり企業にとっての目的とは、
社会に必要とされるモノを提供することでお客さまが喜び、それによって共に働く仲間が幸せになる。そしてそれが、地域社会への貢献につながるようなことであるべきです。
例え常に意識はしていなくても、そうした目的を達成するために、経営者は努力をしています。
目的がはっきりしていなければ、経営者は自分が何をすべきか見失い、その結果、資源の正しい投資や配分が不明瞭になってしまう恐れがあります。そうなると、企業で働く社員の意識や行動がばらばらになり、企業が持つ力を発揮できなくなってしまいます。
昨年、ラグビーワールドカップでは日本のスクラムの強さが絶賛されました。総体重や個々の力で他国に劣っていても、細かい足の位置まで修正し、全員が同じ方向に力を結集して押すスクラムが欧州の競合国を粉砕する様子は見ていて爽快でした。
企業に目的がなければ、社員が一丸となってスクラムを組み、事業を推進することが困難になります。
私が経営を行う際にまずやることは、この事業の目的、経営理念的なものを明確にすることです。従業員が10人であろうが、3千人であろうが、まずは企業の方向性を決めなければなりません。
それができれば、企業の目的を果たすためのロードマップや戦略を作り、その戦略に基づいて計画を立てていきます。
これが、経営ビジョンや中期経営計画といわれるものです。更にその計画に基づいて年度計画や四半期の計画、月次の計画を策定します。
企業の目的は常に一番上にあり、その目的を果たすために、中期計画や年次計画といった「目標」があるわけです。

管理職のための KPIと財務【入門編】
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経営者や管理職は、攻めと守りの数字を理解する必要があります。「今月の売上目標は〇〇百万円を死守!」と気合を入れるだけでは目標は達成できません。目標を達成するためには、「何が達成の鍵で、それを何回ぐらい行えば目標に達するか」を理論的に数値としてはじき出す必要があります。
そして行動計画を作成する際は、その行動が利益につながるものなのか、かけるべきコストかどうか等財務や管理会計の基礎を理解しておく必要があります。
本書では、売上目標を達成するためのKSF(Key Success Factor)の見つけ方、行動計画への落とし込み方といった「攻めの数字」と、赤字でも販売すべき場合とはどのような場合なのか、大口の受注はどこまで値下げして受けるべきか等の「守りの数字(管理会計)」について経営者や管理職が押さえておくべき点を学ぶことができます。
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