採用面接で不合格になっても、気にする必要がない理由

「なんか良いなあ」と思うか
就活中の学生や転職を考えている若手人材から相談を受けることがあります。コロナ禍により、これまでと状況が大きく変わってしまった中での活動は、とても不安なことだと思います。
私は、さまざまな企業で数多くの人材を採用してきました。人材会社の経営に携わっていた頃は、毎年100名を超える新卒の最終面談を行いましたし、フィリピンやタイでは、日本本社の幹部候補生となる新卒採用を行ってきました。こうした経験はあるものの、「これが良い人材を採用する極意」とお伝えできるようなものは残念ながらありません。でも、面接で採用されるかどうかに関して、ひとつだけ確かなことがあります。それは、合否は企業との相性次第ということです。
面接での受け答えができたかどうかではなく、候補者と企業の社風、リクルーターや面接官との相性で合否が決まります。つまり、面接した人が、「この人〇〇そうで、なんか良いなあ、好きだなあ」と思うかどうかです。面接で、初めて候補者と顔を合わせ、挨拶をし、最初の質問をしてからその受け答えまでの動作やその人が纏っている雰囲気が「〇〇そうで、なんとなく良いなあ」と思われるかどうか。それが判断のかなりの部分を占めます。コロナ禍の影響で、リモートでの採用面接も増えましたが、やはり候補者の雰囲気がなかなかわかりにくいため、最終面接はリアルで行う企業が多いことからも、面接する側が候補者の雰囲気を判断基準のひとつにしていることがわかります。
逆の立場になって考えてみましょう。あなたは、なぜその企業に興味を持ったのでしょうか。
新卒であれば、「有名な大企業だから」、「給料が良さそう」、「グローバルに働ける」、「企業の商品が好き」等々、理由は色々あると思いますが、それは全て企業を外から眺めて「良いなあ」と思ったから興味を持ったはずです。そして、最初は何となく「良いなあ」と思った企業を調べたり、勤めているOBに会ったりしてみて「やっぱり良いなあ」と思えばチャレンジしたくなるし、「ちょっと違うかな」、「それほどでもないか」となれば別の企業を探します。
採用する企業も同じです。書類を見て、経歴や持っていそうな能力が基準をクリアしていれば、面接に進みます。そして、面接で「この人、〇〇そうで良いなあ」と思われれば採用、思われなければ不採用となります。
そもそも面接まで行く人は、書類選考や試験を通過していますから、企業が求める基本的な能力は満たしているわけです。ちょっとぐらい面接で失敗しても、言葉がうまく出てこなくてもそんなことは関係ありません。「人柄が良さそうで良いなあ」、「頭の回転が早そうで良いなあ」、「相手に寄り添う姿勢がありそうで良いなあ」、「しっかり考えているみたいだから良いなあ」、「気が弱そう(謙虚)で良いなあ」、「ちょっと抜けてそう(愛嬌がある)なところが良いなあ」等々、どんなことであっても、兎に角、相手に「〇〇そうで、良いなあ」と思われれば採用されます。
先日、人気YouTuberのフワちゃんが、自らのアルバイト遍歴を話していました。彼女は試食を勝手に食べてしまったり、ミスを多発してしまい、数々のアルバイト先をクビになったそうです。しかし、そんな彼女を採用し、失敗してもクビにせずに雇い続けてくれた店長がいたそうです。この店長の話を聞いていて、「この人、フワちゃんが纏っている雰囲気や、何かが好きだったんだろうな」と思いました。
企業の合併や買収を行う場合も同じです。
M&Aでは、両社長の最初の面談がとても大事です。海外ではM&Aでお互いの相性が合うことを「Chemistryが合う」と言うのですが、「相手の社長、なんか良いかも」と思うと話は進み、「ちょっとなあ」と思われれば大抵そこで案件は終わります。M&Aに於ける社長同士の面談は、採用面接と同じで、決算書やビジネスレポート等、企業の概要がわかる資料を見て、お互いが一度会ってみたいと思えば面談となります。そして、話や会食を通じて、お互いが「良い感じだな」と思えば、その先に進みます。「なんか嫌だな」と思った企業とうまく行くことは、まずありません。
所詮は相性
就活や転職の面接で、結果がついてこなければ落ち込みます。しかし、面接で上手く行かなかった理由は、候補者に能力がなかったからでも、志望理由をうまく答えられなかったからでもありません。単に面接官との相性が合わなかったからです。優秀な大学のゼミ長や運動部の部長で、立て板に水のように質問に答えるさわやかな学生でも、「〇〇そうで良いなあ」と思われなければ採用はされません。成績があまり良くなかったり、ハキハキ話せなかったとしても、面接官に「朴訥そうで、何か良いなあ」と思われれば(そういう学生を企業が求めていれば)採用されます。
面接官は候補者の能力だけでなく、候補者の性格やモノの考え方から滲み出る雰囲気が企業の社風に合うか、「あの人良いなあ」と入社後、社員に思ってもらえそうな人材かどうかを見ています。面接の受け答えや技術はあまり関係ありません。そもそも「何か良いなあ」と思われる雰囲気を纏っていなければ、小細工をしてもプロの目はごまかせませんし、たとえ間違って入社できても、お互いに良いことは多分ありません。
私の場合も、仕事を受ける時、面接のようにさまざまな立場の人と話をします。特に相手が投資ファンドの場合、担当者からトップまで基本的にラインの人間全てに会います。そして彼ら全員から「この人に頼みたい」と思われなければ仕事にはなりません。有難いことに投資ファンドや企業では、感性が合うのか、ほとんど断られたことはありません。しかしこれが公的機関になると全く異なります。
公的機関の場合は、書類選考で通ると面接に呼ばれます。この面接、多い時は一度に10名、少なくとも3名の人が座っています。面接時間は20分ほど、しかも20分の面談の1/3はその業務を引き受けた場合の報酬や注意事項の確認です。わずか10分程度で相手を見抜くことなどできませんから、やはり第一印象や雰囲気で、自分たちの組織や仕組みにマッチするかどうかをある程度判断しているのでしょう。
たった10分の面接で落とされたとしても、それは、自分の能力が否定されたわけでなく、面接官に「うちの職場には合わない」と判断されただけです。
就活を初めて行う学生は、せっかく面接まで行けたのにダメだと落ち込むかもしれません。でも面接なんてその程度のことで決まるのです。だから、ダメだったらさっさと次を探しましょう。あなたの能力や人間性が否定されたわけではありません。
「〇〇そうで良いね。一緒に働きたいなあ」と思ってくれる企業、探せばきっと出会えます。
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