今さら聞けない財務と数字の話㉟~ここまでの復習④

ここまでの復習④
前回の解答は下記の通りです。
まず、変動費と固定費は図表1の通りに分けられます。販管費には固定費となるものが多いので、詳細がわからなければ固定費と仮定して構いません。出張費や接待交際費等は大きな数字ではないので、あまり細かいことに拘らない方が良いと思います。明細の中に、販売数に応じて発生する支払手数料のようなものが見つかれば、その分は変動費に計上します。
また、ここでは売上原価の中にある労務費を固定費として捉えています。社員であれば固定費ですが、派遣の人材や請負契約によって人数が変動するのであれば、その部分だけを変動費と考えることもできるでしょう。
図表1:変動費と固定費

図表1で変動費と固定費に分類した費用を図表2に記入した結果、変動費は60%、固定費が350百万円であることが判明しました。
損益分岐点売上高は変動費が600、固定費が350で営業利益が0となる際の売上高ですから、下記の通り計算します。
S – 0.6S – 350 = 0
0.4S = 350
S = 875 損益分岐点売上高 875百万円
計算方法の詳しい説明を確認したい場合は、「今さら聞けない財務と数字の話㉗~損益分岐点」をご覧下さい。
図表2:損益分岐点売上高と営業利益から計算した必要売上高

最後に営業利益を100百万円としたい場合の売上を計算します。事業計画で、費用を変動費と固定費にわけて計算すると損益分岐点がわかり、目標とする営業利益に応じて必要となる売上高を計算することが可能となります。
計算式は損益分岐点の計算をした式と同じです。損益分岐点売上高の計算は、営業利益を0にして行いましたが、0の代わりに稼ぎたい営業利益額を入れれば、その営業利益を稼ぐために必要な売上高がわかります。
S – 0.6S – 350 = 100
0.4S = 450
S = 1,125 必要となる売上高 1,125百万円
数字を使いこなすのは難しくない
「今さら聞けない財務と数字の話」として、ここまで35回に分けて経営者や事業責任者が最低限知っておいた方が良い数字について説明してきました。25回目までは財務会計、26回~31回は主に管理会計の基本について説明しましたが、特に後半の管理会計の考え方を知っていると、事業運営に際して非常に役に立ちます。
現在の人員を抱えたままで利益を出すには、売上がいくら必要か、どの費用を削るのが最も効果的なのか、目標利益を達成するためには、売上をどこまで伸ばす必要があるのか等を知るためにも、変動費と固定費を理解していることは重要です。例えば、「今さら聞けない財務と数字の話㉔~取引先の財務状況を見極める②」でのZ社の分析についても、わかる範囲で変動費と固定費にわけてみると、より問題点がはっきりします。
Z社の場合は、在庫を増やして利益を出していたため必要運転資金が増加し、結果として資金繰りが苦しくなっていることが問題点としてあげられました。更に同社の固定費と変動費の推移を見ると、固定費(人件費)を削って利益を出していることがわかります。売上がじり貧になったから人員削減を行ったのか、それとも、利益を出す為に固定費(人件費)を削ってしまい製造キャパが小さくなってしまったのか。
決算書の中で問題点を発見したら、実際に現場で確認する必要があります。在庫の状況や製造工程の人数はもちろん、現場で5S(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ)がどの程度徹底されているか等々を目で見て確認することはとても大事です。
財務諸表はとっつきにくいイメージがあるかもしれませんが、財務諸表から経営の状態を読み取るために難しい数学は必要ありません。四則演算ができれば十分です。 経営者やこれから起業しようと思っている人たちが、数字を見て物事を判断する力をつけるために少しでもこのシリーズが参考になれば幸いです。
管理職のための KPIと財務【入門編】
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経営者や管理職は、攻めと守りの数字を理解する必要があります。「今月の売上目標は〇〇百万円を死守!」と気合を入れるだけでは目標は達成できません。目標を達成するためには、「何が達成の鍵で、それを何回ぐらい行えば目標に達するか」を理論的に数値としてはじき出す必要があります。
そして行動計画を作成する際は、その行動が利益につながるものなのか、かけるべきコストかどうか等財務や管理会計の基礎を理解しておく必要があります。
本書では、売上目標を達成するためのKSF(Key Success Factor)の見つけ方、行動計画への落とし込み方といった「攻めの数字」と、赤字でも販売すべき場合とはどのような場合なのか、大口の受注はどこまで値下げして受けるべきか等の「守りの数字(管理会計)」について経営者や管理職が押さえておくべき点を学ぶことができます。
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