今さら聞けない財務と数字の話㉖~売上が10%減ると利益も10%減る?

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売上が10%減ると利益も10%減る?

3月決算の企業は、5月10日前後に決算発表を行うところが多いようです。上場している企業は四半期毎の決算開示が必要ですが、決算数字の開示は、決算を締めた日から45日以内に行うことを求められています。

本決算の開示を行う企業の多くは、今期の業績予想も同時に発表します。しかし、現在のように、コロナウイルスの影響で今期の見通しが立たない状況では、「見通しが判明次第発表する」という企業が多くなっています。

経営者や事業責任者にとって、事業の先行きを予想することは必須です。そのために、事業計画を立て、予想P/Lを作ります。

では、図表1のような企業が今期10%の売上減が予想される場合、営業利益はどうなるでしょうか。売上と同様に営業利益も同じように10%減るのでしょうか?

  

図表1:売上が10%ダウンすることが見込まれる場合、利益はどうなる

  

売上が増減した割合で単純に費用を増減させると、実際の数字とはかけ離れた数字になってしまいます。その理由は、費用には、売上の増減に影響を受けて変動する費用と売上が増減しても変動しない費用があるからです。

図表1の売上原価と販売管理費の中味を、売上の増減によって変動するものと変動しないものに分類してみました。売上が減るということは、価格が下がるか、販売数量が減るということです。今回は、価格は据え置きで販売数量が減る場合を考えます。(図表2)

販売数量が減るのであれば製造数量も減るので、製品を作るために仕入れる材料費や、外部企業に一部の加工を依頼する外注加工費は減ります。一方で、労務費(工場で働く人の賃金等)や製造経費(工場や倉庫の賃貸料、設備の減価償却費、電気水道の基本料金等)は、製造数量が減ったからといって変動はしません。

細かいことを言うと、時間短縮等で電気代や水道代を使う量は若干減るかもしれませんが、基本料金は固定されています。大企業は莫大な量の水道光熱費を使用しますので、細かく分類しても良いですが、中小企業の場合は工場の稼働が止まる等のことでもない限り、これらの費用は固定で構いません。

販売費及び一般管理費(販管費)はどうでしょうか。販売する数量が減っても、営業員や管理部門の従業員に払う給料や工場・倉庫の賃貸料は変わりません。「販売量が減ったから接待交際費や出張費を減らす」ということにもならないでしょう。むしろ増えるかもしれません。

例えば、ネット販売等を行っていて、販売個数に対し手数料を払う様な場合や、営業員の販売インセンティブがあるような場合は売上によって費用も増減しますが、そうしたことがなければ販管費は変動しない費用がほとんどです。

  

図表2:変動する費用と変動しない費用を確認する

  

このように、売上の増減に影響され、売上にある程度比例して増減する費用のことを「変動費」、影響を受けない費用のことを「固定費」と言います。

コロナ禍の緊急事態宣言によって店舗を締めざるを得ない飲食業等は、売上がないため変動費となる材料の仕入れを行う必要はありませんが、賃料や従業員の人件費といった固定費は払わなければなりません。今のような状態が続くと、事業の赤字が膨らむ一方、固定費はかかる(キャッシュアウト)ので資金繰りも大変になります。

図表3は、図表2のP/Lとは売上原価や販管費の分け方が少し違いますが、原価や費用を「変動する費用(変動費)」と「変動しない費用(固定費)」に分けたものです。2020年3月時点で売上1,000百万円に対し、変動費は600百万円、固定費は350百万円となっています。

図表3のような分解ができれば、事業計画が立てやすくなります。

図表3:P/Lを変動費と固定費に分解する

  

1,000百万円の売上の際に、変動費 (材料費や外注加工費)として600百万円が必要ということは、売上対比経費率(変動費率)は60%ということです。変動費は売上の増減に伴って増減しますから、売上1,000百万円が10%減少して900百万円になれば、変動費は売上に対して60%の540百万円となります。

これに対して固定費の350百万円は、売上の増減に関わらず一定の金額が費用としてかかるため、製造数量や販売数量がいくらになろうと変わりません。もちろん、大幅に売上が増え、現状の設備投資や人員だけで賄えなくなれば、設備や人員への投資を行い、固定費を増やさなければなりませんが、生産能力に余力がある場合、固定費は変わりません。 この結果、売上が900百万円になった場合の営業利益は10百万円になります。(図表4)

 

図表4:売上が10%ダウンした場合の営業利益

 

変動費と固定費の概念を知っておくことは、経営者や事業責任者にとって非常に大事です。

恥ずかしい話ですが、私は銀行にいた時に、固定費と変動費の考え方や、売上の増減に伴う利益の出し方をよく理解していませんでした。しっかりと理解できるようになったのは、実際に製造会社の事業責任者になってからです。 

自分が事業責任者となって、どんな製品をいくらで売るべきなのか、何故赤字が出ているのか、どうすれば黒字にできるのかということを調べている中で、変動費と固定費の重要さに気づきました。経営者や事業責任者、営業員の方で、今、この考え方がわからなかったとしても、自社の事業運営や計画を立てる際に気にかけるようになれば、徐々に考え方が身に着くと思います。

さて、先ほどは売上が10%ダウンする場合の営業利益を計算しましたが、逆に売上が10%アップする場合、営業利益はどうなるでしょうか。

図表5を見ながら、図表4のように、変動費、固定費に分解してみて下さい。

  

図表5:売上が10%アップすると営業利益はどうなるでしょうか

  

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