中小企業が成長する組織図の作り方(階層、レポートライン、職務分掌)

Pocket

役割と責任は明確か

組織図を作成すると、社員は自らの役割と責任感を意識し、経営者はどの部門の人材が足りていないかを認識できるようになります。組織図は、階層、役職、レポートライン(指揮命令系統)を整理して作成することが必要です。

起業した人は経営の全てを一人で行います。そして、事業が大きくなるにつれ、経営者が担っていた役割の一部を社員が担うようになります。多くの企業では、この過程で、業務内容と役割の不一致や、レポートラインが不明確になります。

企業が成長すると人が増え、結果として、組織は大きくなります。組織が拡大する過程で、職位や役割、業務内容があやふやになってしまうと、企業のガバナンスに問題が起こる可能性が高まります。

図表1はB社の組織図です。創業者である先代は既に引退し、現在は子息が2代目社長として事業を運営しています。この2代目社長から、組織の再編と人事評価制度の構築について相談を受けました。

B社の社員は50名程度で、製造部門に最も多くの人員を抱えています。創業当時から番頭として経営を支えてきた工場長は、高齢のため引退を考えていますが、前社長に引き留められ、未だに現場の統括を任されています。また、現社長は工場のことは工場長に、それ以外の全社的な話は自分と同年代の営業本部長を頼りにしています。

このような状況のB社の組織図が図表1です。これを見て、皆さんはどのように感じるでしょうか。

 

図表1:組織図

 

まず、図表1の指揮命令系統はB社の実態には即していません。

本来工場長が担うのは工場のマネジメントだけです。また、箱として本部、部、課には分かれていますが、其々の箱が置かれている階層がバラバラです。例えば、営業本部と調達部が同じ階層にあり、経理部の下には情報部があります。

中小企業では、業務が増える都度、全体のバランスや階層を良く考えずに部や課を作ったり人を配置したりするためこのようなことがよく起こります。

また、多くの中小企業にはレポートラインという考え方がありません。中小企業は、経営者がトップダウンで指示を出す文鎮型のマネジメントが基本です。このため、経営者が必要と思った都度、箱を作ってしまい、気づくとこのような組織図になってしまうのです。

B社の社員は50名程度しかいない割には組織の箱が多く、それぞれの箱と責任者の役割が一致していません。組織を作る際は、それぞれの箱(部や課)にどのような役割と責任をもたせるのか、責任者は誰なのかを明確にすることが重要です。

このような状況を把握した上で、現社長、取締役、工場長に、各部署の仕事内容や、役割と責任範囲を確認し、組織図を図表2のように書き直しました。

 

図表2:組織図(修正後)

まず、階層とレポートラインを明確にしました。

前述の通り、中小企業では文鎮型マネジメントが基本ですから、組織やレポートラインを気にする経営者はあまりいません。経営者からの指示は、部長や課長と同じレベルで一般社員にも届きます。当然担当社員は、指示されたことを経営者に直接報します。

社員が少ない中小企業に於いて、文鎮型マネジメントは非常に効率的です。しかし、組織がある一定の規模になってもそのマネジメントを続ければ、企業の成長は止まります。その理由は、社員が指示待ち人間になってしまうから。

経営者が全てを指示するため、社員はその指示を“こなす”だけとなり、自ら考え判断しなくなります。そうなると社員は成長しませんし、社員が成長しなければ、企業は成長しません。

企業がある一定規模になれば、経営者は各部署にどのような役割をもたせるのか、部の責任者に与える責任と権限はどの程度にするかを考え、組織を作る必要があります。

「責任は持たせても権限は持たせたくない」という経営者がいますが、責任と権限はセットです。オーナー経営者が社員に権限を委譲することには抵抗があるかもしれませんが、事業の成長を望むのであれば社長の持つ権限と責任を、徐々に社員に委譲していくことは必須です。

階層、箱、配置人材を整理する

さて、図表2に戻りましょう。

組織の箱の役割を決め、その箱の責任者が明確になれば、次はそれぞれの箱を階層別に分けていきます。この企業では、階層を本部、部、課と3つに分けました。

但し、工場は、部や課ではなく「グループ」の方がわかりやすいとの意見がありましたので、呼称自体は変えませんでした。

階層を明確にした後には、其々の階層においた部や課の責任者となる役職とそこに配属する人材を決めます。組織によっては、一人の管理職がいくつもの機能を兼務している場合もあるでしょう。その場合は、箱だけ作って兼務させても良いですし、それぞれの機能がよほど異なるものでなければ、二つの箱を一つにまとめても構いません。(例えば経理部と総務部をまとめて管理部)

図表2はかなり整理されてきましたが、まだ兼務が多いですね。特に営業部門は殆ど兼務です。現在の規模では、営業部とマーケティング部を分ける必要はありませんが、マーケティングの重要性を社内に浸透させたいという経営者の強い想いがあったため、部として残すことにしました。

例え組織を担う人材がいなくても、経営の意志を社内に示す意味では、組織の箱を先に作ってしまっても良いと思います。これとは逆に、人ができることに応じて組織を作るのはやめましょう。組織は、企業があるべき姿に近づくために作るものですから。

役職については、部の責任者は部長、課の責任者は課長や課長(代理)とし、部長や課長といった職責に適任者がいない場合は、一つ上の階層の責任者が責任者を兼務します(例えば営業本部長が営業部長、営業部長が営業課長を兼務)。主任やリーダーという肩書は、どちらの職位が上なのかわからないので、ここではリーダーという肩書を役職から外しました。

因みに、箱や役職の呼称は部や課でなくても構いません。グループにするなら、その責任者はグループ長になります。また肩書は社内だけでなく、社外へのアピールを考えて作ることも重要です。一般的には部長の肩書を持っている人の方が、課長の肩書よりも権限が大きいと思われます。役職によって、相手も出てくる相手や対応が変わることもあります。肩書はこうしたことも考えて決めれば良いと思います。

余談ですが、私の知り合いにはオーナーであるにも関わらず、専務という肩書を名刺に書いている人がいました。本人は「なにも仕事をせんむだから」と駄洒落を言っていましたが、社長の肩書だと相手に即答しなければならないことも多いからこのような肩書にしているそうです。

取り敢えず「社長に聞いてみてから」と返事をし、落ち着いてよく考えてから回答するためのようです。

さて、こうして組織図を整理すると、どの部署に人が足りないか、誰を育てなければならないかが良く分かります。

部署の権限と責任を明確にしてレポートラインを決、組織の階層を整理することは重要です。変更後の組織図では、本部長-部長-次長-課長-課長代理-主任という役職に統一されましたが、B社の規模であれば、本来役職はもっと少なくて良いと思われるかもしれません。

組織や役職を整理する際は、本部長や部長といった肩書を持つ人が、本当にその役割を果たしているかどうかを確認し、責任に見合った役職とすべきですが、昨日まで本部長と呼ばれていた人が、今日から部長となってしまったり、部長であった人が課長という肩書になると、モチベーションが下がってしまう可能性があります。その点については十分な配慮と注意が必要です。

組織図を見直せば、経営者は自社のさまざまな課題に気づくと思います。

 

⇨ 今さら聞けない財務と数字の話㉖~売上が10%減ると利益も10%減る?

⇦ 中小企業に於ける組織図の重要性

『管理職のための KPIと財務【入門編】 』

↑↑↑Click to amazon

「今月の売上〇〇百万円を死守!」と気合を入れても目標は達成できません。目標を達成するためには、行動計画に落とし込む必要があります。本書では、売上を行動計画にまで落とし込む方法を簡単に解説します。

また、在庫が増えるとなぜ利益が増えるのか、赤字でも販売すべきなのか、大口の受注はどこまで値下げして受けるべきか等の管理会計の視点を説明します。

経営者や管理職に必要となる最低限の知識を、わかりやすくまとめていますので、新入社員、これまで全く経営戦略や財務に関わってこなかった営業員でも理解できる内容です。

ご興味がある方はぜひご覧ください。

 

中小企業が成長する組織図の作り方(階層、レポートライン、職務分掌)” に対して1件のコメントがあります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です