中小企業が成長する組織図の作り方②~階層、レポートライン、職務分掌

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役割と責任は明確か

前回、権限と責任を社員に委譲するために、組織図に責任者の名前を書き込むことが重要であると説明しました。

組織図は、社員にとっては自らの役割と責任感を意識するための、経営者にとっては、今後の事業運営に際し、どの部門に人材が必要かを認識するためのツールでもあります。このため、階層、役職、レポートライン(指揮命令系統)を整理して作成することが必要です。

起業したばかりの頃は、経営者が全ての役割を一人で担います。そして事業が大きくなるにつれ、自らが担っていた役割を、少しずつ社員に任せるようになります。この過程で、業務内容と役割や、レポートラインが次第に不明確になってきます。そして、企業の成長に伴い組織が大きくなり、職位や役割が増えると、レポートラインや業務内容があやふやになってしまい、企業のガバナンスや業務運営に支障が出るようになることが多々あります。

図表1を見てください。こちらのB社では、創業者である先代は既に引退し、現在は子息が2代目社長として事業を運営しています。この2代目社長から、組織の再編と人事評価制度の構築について相談を受けました。

B社の社員は50名程度で、製造部門に最も多くの人員を抱えています。創業当時から番頭として経営を支えてきた高齢の工場長は引退を考えていましたが、前社長に引き留められ、組織図上は未だに全社の統括となっています。しかし実際には、工場の運営管理しか行っていません。このため、2代目社長は、自分と同年代の営業本部長を右腕として、全社の統括を任せています。

さて、この組織図を見て、皆さんはどのように感じるでしょうか。(図表1)

 

図表1:B社の組織図

 

工場長は、工場の運営管理しか行っていませんが、組織図上は全社を統括することになっています。また、工場長の下には、本部、部、課がありますが、其々の箱が置かれている階層がバラバラです。例えば、営業本部と調達部が同じ階層にあり、経理部の下には情報部があります。

中小企業では業務が増えるに従って、階層を意識せずに部や課を作ったり、人を配置したりすることがよくあります。中小企業の多くには、階層別のレポートラインという考え方がなく、経営者がトップダウンで指示を出す文鎮型のマネジメントが行われているため、必要に応じて組織を作った結果、このような組織図になっている企業が多いです。

このため、B社のように社員が50名程度しかいない組織でも箱(部や課)が多くなり、時間がたつにつれ、箱と責任者の役割が一致しなくなります。こうなってしまった企業は、それぞれの箱にどのような役割と責任をもたせるのか、責任者は誰なのかを、再度、明確に定義する必要があります。 

指示待ち社員を作らない

B社の状況を把握した上で、2代目社長、取締役、工場長に、各部署の仕事内容や役割と責任範囲を確認し、組織図を図表2のように書き直しました。

最初に行ったのは、階層とレポートラインの明確化です。中小企業では組織やレポートラインを気にする経営者はあまりいません。経営者は、部長や課長と同じ様に一般社員にも直接指示を出すため、担当者は、指示されたことの結果を部課長ではなく、経営者に直接報告します。

社員が少ない中小企業では、文鎮型マネジメントは非常に効率的ですが、組織が一定の規模になっても経営者が直接指示をだしていると、企業の成長は止まってしまいます。経営者の指示通りに動く管理職や社員は、組織が大きくなり、経営者が適切な指示を出せなくなっても、ひたすら経営者の指示を待ち続けます。

自分で考えて動く訓練がされていない組織では、管理職であっても自ら考えて行動できません。考えることができない管理職は、社長の指示を社員に丸投げします。丸投げされた社員も考えることができず、また上司に確認しても「そんなことはお前が考えろ」と言われてしまうので、結果的に経営者の意図とは違ったことをしてしまったりします。こうしたことを繰り返すと、企業の成長は止まります。

ですから、企業が一定の規模になれば、経営者は箱に持たせる役割や、管理職に与える責任と権限を再考し、その箱の責任者が、与えられた権限内で判断、決断できる組織を作り直す必要があります。

「責任は持たせても、権限は持たせたくない」という経営者がいますが、責任と権限はセットです。オーナー経営者が管理職や社員に権限を委譲することには抵抗があるかもしれませんが、事業の成長を望むのであれば経営者が持つ権限と責任を、徐々に彼らに委譲していくことは必須です。

 

図表2:B社の組織図(変更後)

階層、箱、配置人材を整理する

さて、図表2に戻りましょう。

箱の役割を決め、責任者が明確になれば、次はそれぞれの箱を階層別に分けていきます。B社では、階層を本部、部、課と3つに分けました。但し、工場は部や課ではなく「グループ」の方がわかりやすいとの意見があったため、箱の呼称は変えませんでした。

それぞれの階層に置く箱を決めたら、次は責任者を決めます。ひとつの箱の責任者がいくつもの箱の責任者を兼務している場合は、箱の機能を考えながら、二つの箱を一つにまとめても構いません。例えば、経理部と総務部がある場合は、これらをまとめて管理部としても良いでしょう。但し、変更後の図表2では、営業部門は殆ど兼務となってしまっています。本来、B社の規模であれば、営業部とマーケティング部を分ける必要はありませんが、マーケティングの重要性を社員に理解させたいという経営者の強い想いがあったため、変更後も部として残すことにしました。

このように、経営者の意志を社内に示すために箱を作っても構いませんが、今いる人の能力に応じて組織を作ると、組織図がいびつになってしまうので注意しましょう。

部の責任者は部長、課の責任者は課長や課長代理とし、部長や課長といった職責に適任者がいない場合は、一つ上の階層の責任者が責任者を兼務するようにしました(例えば営業本部長が営業部長、営業部長が営業課長を兼務)。主任やリーダーという肩書は、どちらの職位が上なのかわからないので、ここではリーダーという肩書を役職から外しました。

箱や役職の呼称は部や課でなくても構いません。グループにするなら責任者はグループ長になります。また肩書は社内だけでなく、社外へのアピールを考えて作ることも重要です。部長の肩書を持っている人の方が、課長の肩書よりも権限が大きいと取引先には思われます。役職によって、対応してくれる相手や対応がちょっとだけ変わることもあります。また、社員にとっても、課長よりも部長の方がモチベーションが上がるかもしれませんね。肩書を付ける時は、こうしたことも考えて決めると良いと思います。

余談ですが、私の知り合いで、オーナーであるにも関わらず、専務という肩書を名刺に書いている人がいます。本人は「何も仕事をせん(む)から専務」と駄洒落を言っていましたが、社長の肩書だと相手に即答しなければならないことも多いので専務にしているそうです。取引先から厳しい要求を出されたら、取り敢えず「一度社に持ち帰ります」と言って、落ち着いてよく考えてから回答するのだそうです。

部署の権限と責任を明確にして組織の階層やレポートラインを整理することは、企業の成長にとってとても重要なことです。組織や役職を整理する際は、本部長や部長といった肩書を持つ人が、本当にその役割を果たしているかどうかを確認し、責任に見合った役職とすべきです。

B社では、本部長-部長-次長-課長-課長代理-主任という役職に統一しましたが、この程度の規模ならば、本来役職はもっと少なくて良いと思います。しかし、これまで本部長と呼ばれていた人が部長になり、部長であった人が課長と呼ばれるようになるとモチベーションが下がる可能性がありますので、その点については十分な配慮と注意が必要です。

こうして組織図を整理していくと、どの部署に人が足りないか、誰を育てなければならないかも良く見えてきます。ただ、それがわかっても、中小企業では、不足した人材を補充したり、すぐに育成することはできないので、そこはまた別の問題として解決策を考えなければなりません。

組織図を見直せば、経営者は自社のさまざまな課題に気づきます。しかし、そこで気づいた課題は表面的なものかもしれません。そもそも企業の成長のために経営者がやらなければならないことは何のでしょうか。

  

⇨ 中小企業が成長する組織図の作り方③~組織図を書く前に

⇨ 企業の風土を変える(1)

⇨ 中小企業の人材制度~メンバーシップ型からジョブ型へ

⇦ 中小企業が成長する組織図の作り方①

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