今さら聞けない財務と数字の話㉑~在庫が増えると利益が増える

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売上原価はどのように算出されるか

在庫が増えるとなぜ利益が増えるのか。それは、売上原価が算出される仕組みを知れば簡単に理解できます。

売上原価とは販売した製品の製造に関わるコストや、販売のために仕入たモノです。例えば工場で製造する製品の原料費や、店舗で販売するために輸入したモノの仕入れコストは売上原価に含まれます。(売上と売上原価の関係について忘れてしまった場合は、「今さら聞けない財務と数字の話⑬~P/Lを構成するもの」をもう一度見て下さい。)

例として、全国に店舗を持つお菓子会社が、材料を仕入れてクッキーを各店舗で売る場合のお金の動きを考えてみます。(この会社の決算期は3月31日とします)

 

 図表1:商品販売の際のコストの計上方法

 

 

図の真ん中の表の一番上にある、期首在庫200百万円は、全店舗の前期末(令和2年3月31日)の時点で売れ残っていた在庫商品です。この商品は、今期(令和2年4月1日~令和3年3月31日)販売される商品なので、期首の在庫商品となります。

当期仕入800百万円というのは、当期、新たに仕入れた商品です。前期からの在庫「期首在庫200百万円」と、当期新たに仕入れた「当期仕入800百万円」の商品が全国のお店で販売されます。そして、今期末に売れ残った商品100百万は、「期末在庫100百万円」となります。この「期末在庫100百万円」は、翌期になれば「期首在庫100百万円」となり、翌期の販売のための商品となります。

さて、ここが理解できれば、この商品の流れから原価がどのように決まるのかを考えてみましょう。

図表1では、期首在庫200百万円に当期仕入800百万円を足して1,000百万円で販売活動を行った結果、期末に商品100百万円が売れ残ったので期末在庫となっていました。

この期末在庫100百万円は、当期、販売活動のために手元にあった1,000百万円の在庫の残りですから、当期商品(期首在庫200百万円+当期仕入800百万円)から期末に売れずに残った100百万円を除いた分が当期の売上原価になります。


つまり、期首在庫(200)+当期仕入(800)-期末在庫(100)=売上原価(900)となるわけです。(図表2)

 

図表2:売上原価の決め方

 

期末在庫の金額で売上原価が決まる

さて、売上原価の仕組みが分かったところで、この会社の売上総利益を算出してみます。このお菓子会社の当期売上が2,000百万円だとします。当期の期首在庫は200百万円、当期仕入は800百万円、そして期末在庫が100百万円でしたから、売上原価は、期首在庫 200百万円 + 当期仕入 800 百万円- 期末在庫 100百万円= 900百万円 となります。(図表3)

 

図表3:売上原価をP/Lに当てはめると

 

在庫が増えるとなぜ利益が増えるのか

この算出方法を理解した上で、在庫が増えると利益が増える理由を考えてみましょう。

先ほどの計算で、期末在庫を200百万円に増やすと利益がどのようになるか考えてみましょう。今期販売できる在庫が1,000百万円(期首在庫200百万円+当期仕入800百万円)と変わらない中で、期末在庫が100百万円増えて200百万円となるわけですから、売上原価は900百万円から800百万円に減ることになります。(図表4)

計算式にすると、期首在庫200百万円+当期仕入800百万円-期末在庫200百万円=売上原価800百万円となります。

 

図表4:期末在庫を積み増す

 

売上は2,000百万円と変わらないのに、売上原価が900百万円→800百万円に減るわけですから、当然売上総利益は売上原価が減った分(100百万円)だけ増えます。(図表5)

 

図表5:期末在庫を増やすと売上総利益が増える

   

利益を操作できる

売上は変わらないのに、期末の在庫を増やしただけで利益が増えてしまいました。この方法は非常に初歩的ではありますが、決算の粉飾の時などによく使われます。

また、粉飾ではありませんが、上場企業であっても在庫の量が目立たない程度であれば、期末に若干在庫を積み増して利益を確保することもあります。 

ですから、企業の決算書を見て、売上がそれほど増えていないのに期末在庫が過剰になっている、或いは、過去と比較して在庫の回転期間(月商に対する在庫金額)が、急に長くなっているような場合は、中身をよく確認する必要があります。

また、単に決算書で数字をチェックするだけではなく、実際に工場や倉庫を見て、在庫がどの程度あるのか確認することも大切です。

このように、B/Sは決算期末時点の数字しか記載されません。P/Lでは1年間の損益はわかりますが、実際にその利益は在庫を積み増した結果かもしれず、本当に企業の利益やお金が増えているのかはわかりません。

そこで財務三表の3つめ、キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement-C/S)が登場します。

新刊『いまさら聞けない財務と数字の話』 財務~管理会計の初歩

財務会計の初心者向けの本は書店にたくさん並んでいます。しかし、ほとんどの人は、本を読んで理解しても、それを実際に経営の場で使える様にはなりません。

その理由は、財務の初心者向けの本は、ほとんどがB/SとP/Lの見方や財務分析までで、キャッシュフローについてもごくわずか、ましてや、管理会計の話には全く触れられていません。 

しかし、その程度の財務分析ができても、商品を値引きしてでも売るべきかどうかの判断はできません。事業計画を立てる時に、計画上の営業利益を算出することも、資金繰りがどのようになるかもわかりません。

B/SやP/Lの理解はできても、自分の仕事にそれが結びつかなければ興味を持つことはできません。

そこで、「財務って勉強しても良くわからない」「P/Lは大事だけど、B/Sなんて借入の金額ぐらいしか見ていない」という人から、「一応、財務分析もできる」という、財務がわかったつもりの過去の私の様な人にまで、実際に経営に必要になる財務について、できるだけわかりやすく伝えたいと思い本書を出版しました。

本書では、経理の視点からではない、経営の視点から見た数字と財務の話を書いています。駆け出しの営業員から事業責任者や経営者、或いは銀行員まで、実際にビジネスで使える財務数字を学んで頂ければと思います。

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