今さら聞けない財務と数字の話⑳~「のれん」の続き

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「のれん」の続き

皆さんがご存知の事例で「のれん」を説明してみましょう。

2011年11月、DeNAが横浜ベイスターズを65億円で買収することを発表しました。この時のB/Sの動きを図表1に示しています。

当時の横浜ベイスターズの純資産は6億円、負債は16億円でした。純資産と負債は集めたお金ですので、B/Sの右側に記載されます。この集めたお金を使って購入した資産が左側に資産22億円です。

DeNAが横浜ベイスターズを買収するということは、ベイスターズの投資家から株式(純資産6億円)をDeNAが買うということです。この購入価格が65億円でした。(但し実際に購入した株式は全額ではなく67%程度のようですが)

純資産が6億円でしたから、65億円での買収は、簿価(帳簿の価格)の約11倍です。かなり高く評価していることがわかります。

この買収で、DeNAは横浜ベイスターズの純資産(=株式と思ってもらって良いです)6億円を65億円で購入したため、「のれん」が65億円-6億円=59億円発生しています。(図表1の買収後DeNAのB/Sでは、左側の一番下に「のれん」の59億円が計上されています)

DeNAの買収前の資産は1,524億円ありましたが、現金で横浜ベイスターズを買収したことによって65億円の現金が減り、流動資産は買収後に1,459億円となりました。

その流動資産の下にある22億円は横浜ベイスターズの元々の資産を引き継いだもの、更に一番下の資産は「のれん」の59億円ということになります。

  

図表1:DeNAの横浜ベイスターズ買収によるB/Sの動き

 

「のれん」は固定資産に計上され、日本では減価償却の対象になります。59億円を20年間で償却したとすると、毎年3億円程度の費用計上をしなければなりません。

私は銀行時代にプロ野球球団の親会社を担当していたことがありますが、そのプロ野球球団は選手の年俸や運営費用が非常に大きく常に赤字でした。何故赤字でも保有し続けるかというと、親会社にとってのプロ野球球団は、事業ではなく広告宣伝費としての位置付けだったからです。

当時の横浜ベイスターズも恐らく同じような運営状況だったと思いますが、そのような事業を純資産の11倍で買収して、のれんを毎年3億円ずつ費用に計上する。DeNAは横浜ベイスターズに、広告宣伝費以上の価値を見出していたということかもしれません

その後のDeNAの球団運営は、さまざまなアイディアによって大改革されていますし、広告効果も非常に高かったと思いますから、この時の判断は今のところ成功しているのかもしれません。

 

図表2:横浜ベイスターズののれん

 

ここまでは一般的な「のれん」について説明してきましたが、「のれん」には「負ののれん」というものがあります。

ダイエットのサポートで有名なRIZAPが買収した企業に負の「のれん」があることが一時期クローズアップされました。

「のれん」とは、買収される企業のブランドや技術力等、B/Sでは表せない資産価値に対して買収企業が支払った対価と、買収される企業の純資産との差額です。負の「のれん」とは、簡単に言えば、買収される企業のブランドや技術力、その他B/Sに表せない資産価値が純資産よりも小さい状態の時に発生します。

例えば、買収しようとしている企業が訴訟になりそうな案件を抱えているとか、B/S上に記載されている在庫が実際は売れそうもない在庫が多い等、実態の資産がB/Sに記載されている資産より少ない場合にこうなります。

もちろん、簿外債務があるというような、実際の負債がB/Sに記載されている負債よりも大きい場合にも同じことが起こります。

このように、企業の価値を毀損するリスクの方が大きい場合には、逆にその分だけを純資産から差し引いて買収する必要があり、その際に負の「のれん」が発生するわけです。

負の「のれん」が発生した場合は、その金額は一括して買収会社の利益になります。例えば、表面上は1億円の純資産がある企業を80百万円で買収することができれば、20百万円儲かったことになるわけです。この20百万円が特別利益として買収した企業のP/Lに計上されることになります。

こうして「負ののれん」が発生する企業の買収を続けたのがRIZAPです。買収の方法や交渉が上手かったのかもしれません。1億円以上するものを80百万円まで叩いて買うわけですから。

ブランド価値が毀損している会社であれば、そのブランド価値をどのように回復するか 、RIZAPであればそれができると踏んで買収したのかもしれません。

しかし、そういう会社は単にブランドだけでなく、他にもさまざまな問題を抱えていることが非常に多いのです。何故相手がそこまで譲歩して売却したかということを考えると、買い手の財務諸表上で利益が出たと言って、喜んでいるわけには行きません。

「負ののれん」が発生する場合は、十分気をつけて実態を見る様にして下さい。

 

 

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