今さら聞けない財務と数字の話⑱~引当金とは

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引当金とは

減価償却と同じぐらいわかりにくいと言われるのが引当金です。

引当金を学ぶ前に、もう一度減価償却の復習をしておきましょう。

減価償却とは、時間の経過や使用で価値が減少していく固定資産を取得した場合、その取得費用を、耐用年数に応じて費用計上していく会計処理のことでした。

例えば、2019年3月が決算期である会社が、期末に営業車を2,400千円で買った場合、3月の決算で費用として全額を計上すると、2019年の決算に大きな影響が出てしまいます。このため、この2,400千円を、耐用年数である6年間に渡って均等(或いは率に応じて)に費用として計上することが減価償却(価値を減少させて返していく)という決まりです。

6年間均等に減価償却するわけですから2,400千円÷6年間=400千円となり、毎期400千円が減価償却として費用になります。(図表1)

 

図表1:減価償却のイメージ

 

図表2は減価償却を行った場合のB/Sの動きです。

2019年に固定資産として計上された自動車(車両運搬具)の価値は2,400千円ですが、翌年の末には400千円が減価償却として費用に計上されるため、資産の価値も同額減って2,000千円となります。

費用計上するということは、利益がその分減るということですから、P/Lの当期純利益が減り、その当期純利益が計上されるB/Sの純資産(利益剰余金)が400千円減るということになります。

2020年以降は、毎年400千円を費用計上するので、資産としての車両運搬具は400千円ずつ減り続け、最終的には0(実際帳簿上には1円で計上)となります。

 

図表2:B/S上では減価償却された資産はどのように動くか

 

少し長くなりましたが、以上が減価償却の復習です。

では、引当金とは何でしょうか。

引当金とは、将来発生する特定の費用や損失に備えるため、あらかじめ当期の費用として繰り入れて準備しておく見積もり金額のことです。

引当金には様々な種類がありますが、比較的よく目にする「貸倒引当金」と「退職給付引当金」を例に説明したいと思います。

貸倒引当金の「貸倒(カシダオレ)」とは、取引先が倒産したことによって、売掛金や貸付金が回収できなくなってしまったことを意味します。そして、「引当(ヒキアテ)」とは、将来の支出のために準備しておくという意味です。

つまり、貸倒引当金とは、将来に発生するかもしれない取引先債権の貸し倒れに備え、前もって用意しておく積立金のようなイメージです。

図表3を見て下さい。青い折れ線グラフはある企業の売上額を表し、その企業が積み立てている貸倒引当金の金額をオレンジの棒グラフで表しています。

貸倒引当金は売上に対し、一定の割合で積み立てをしてきます。図表3のケースであれば、20,000千円前後の売上(左の目盛り)に対し、毎年200千円弱の引当金が積み立てられています(右の目盛り)。

例えばこの企業が2020年に1,000千円の債権を回収できなくなってしまったとします。何も準備をしていなければ、2020年の期に1,000千円の貸倒損失を計上しなければなりません。しかしこの企業は、2014年から毎年200千円弱の貸倒引当という積立をしてきました。2020年の時点では、その金額は1,000千円以上になっています。

この場合、回収不能となった債権1,000千円を貸倒引当金でカバーすれば、2020年の決算期に一気に全額を損失(貸倒損失)計上する必要はなくなります。

減価償却は購入したものの費用を1期で落とさないための法定期間に応じて費用を分割して計上しました。

引当金は、今後発生するかもしれない不測の事態に備えて会計上積み立てを行っているのです。

そもそも取引先によって、売掛金のような債権が回収できるリスクは違ってきます。

例えばトヨタ自動車に対する売掛金であればまず100%回収できるでしょうが、まだ創業したばかりの赤字のベンチャー企業に対する債権は、間違いなくトヨタ自動車向けの債権よりも回収できる可能性が低いため、リスクは高くなります。

このため、売掛金のような債権に対しては一定額の貸倒引当金を計上することが認められています。

事業を行っている限り、貸し倒れのリスクがあるわけですから、それがたまたまある年度に起こったとしても、その金額を平均して分散させる仕組みが「貸倒引当金」というわけです。

 

図表3:貸倒引当金とは

 

次に退職給付引当金についてです。 今さら聞けない財務と数字の話⑨~B/Sの構成でも触れましたが、固定負債の中に 退職金の支払い義務に応じて積み立てる退職給付引当金というモノがありました。

就業規則に基づく退職金制度がある会社では、将来の退職金支給に備えて、企業会計上、退職給付引当金の計上が必要となります。

図表4の通り、退職金は従業員の社歴が長くなるほど金額が増えていきます。退職金制度がある会社では、従業員が辞めることになれば退職金を支払う必要があります。つまり企業は従業員に対し、退職金を給付する債務を負っているわけです。

貸倒引当金と同じで、退職債務に対し引き当てを積んでいなければ、退職者が出るたびに損失を計上しなければなりません。そうした事態に備えたものがこの退職給付引当金です。

図表4:退職給付引当金のイメージ

 

退職給付引当金は債務になるため、B/Sの右側、固定負債に計上されます。これに対し、貸倒引当金は単なる負債ではなく売掛金という資産勘定の価値を下げる役割をもっているため、B/Sでは左側の流動資産にマイナスで計上されます。

 

 

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