今さら聞けない財務と数字の話⑯~費用と収益が対応しないとどうなるか

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費用と収益が対応しないとどうなるか

前回、「車を1台販売した場合、1台分のコストだけを売上原価として計上する」という「費用収益対応の原則」について説明しました。

なぜ売上原価は販売と対比させなければならないのでしょうか。

図表1を見てみましょう。車両を2台仕入れて1台だけ販売した場合の数字の動きをそのままP/Lにしてみました。

まず3,600千円で車両を2台仕入れ、1台2,400千円だけ販売するわけですから、今期の売上純利益は1,200千円の赤字になります。

 

図表1:仕入れた商品の全額を売上原価に計上したら(今期)

 

では翌年の期(翌期)はどうなるでしょうか?今期2台の車両を仕入れたため、翌年の決算期は仕入れがなく、前期に仕入れた車両1台を販売したとします。

そうすると、翌期は仕入れがないため売上原価はゼロです。販売したのは1台で2,400千円の売上ですから、翌期の売上総利益は2,400千円になります。

図表2:仕入れた商品の全額を売上原価に計上したら(翌期)

 

売上は今期も翌期も同じ2,400千円ですが、売上総利益は前期が1,200千円の赤字、今期は2,400千円の黒字です。売上総利益だけを見ると、かなり大きな幅で増減しています。

このように、費用と収益が対応しなければ、同じものを仕入れて販売したとしても、その時期の違いによって決算書の業績が大きくぶれてしまいます。

これでは株主や取引先、銀行等、外部の利害関係者(ステイクホルダー)に対し会社の状態が正確に伝わらず、ステイクホルダーが将来の判断をすることが難しくなります。

図表3では一つの取引だけを採り上げて、今期と翌期の数字を比較しているためまだわかりやすいですが、数が多くなったり、仕入れと販売の間が長くなったりすると大変です。

それに、販売する時期を少しずらすだけで大きな利益を操作することも可能になってしまいます。

このため日本の会計基準では、お客様が受け取った時点で売上を計上し、その売上に関して実際にかかった費用を同じ期に計上することになっています。

図表3:今期と来期の利益を比較すると

 

決算書の役割は、会社の実態をステイクホルダーに正確に伝えることです。

決算書を見たステイクホルダーが会社の状態を判断できなければ、間違った判断をしてしまいます。このため、誰が見ても状況がわかりやすい決算基準で決算書は作られています。

日本の会計基準ではお小遣い帳のように現金の入出金で帳簿をつけるのではなく、売上と売上原価については、お客様が受け取った時点で売上を計上し、その売上を作るするために実際にかかった費用を同じ期に売上原価として計上します。

また、会社の販売活動、一般管理活動に付随して発生する販売費及び一般管理費(販管費)は、売上高との対応関係ではなく、その発生した期間に基づいて計上されます。

売上原価の場合は売り上げた製品を作るための費用や仕入れた金額だけを同じ期に計上しますが、販管費の場合は、その期に役務提供を受けた分だけを計上します。

例えば広告宣伝費などは、先にお金を支払ったとしても、期中に広告を行った分だけをその期の費用としますし、給与等も同じでその期に支払った分をその期の販管費に計上します。

ボーナスを12月と6月に支払っている3月決算の会社があったとすると、その会社では、3月までの働きに対するボーナスを今期費用として計上し、4月から6月までのボーナス分は翌期に計上します。

この辺は引当金等の概念が出てくるのでまた別途「今さら聞けない財務と数字の話⑱~引当金とは」で説明します。

何れにしても販売するモノを作るために掛かったコストは売上原価として同じ期に計上し、販売するための営業活動や管理のための費用はその期中に発生したものだけを計上するということを覚えておいてください。(現金がいつ支払われたかは一切関係ありません)

 

図表4:決算書の役割

⇨ 今さら聞けない財務と数字の話⑰~減価償却とは

⇦ 今さら聞けない財務と数字の話⑮~費用と収益は対応する

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