今さら聞けない財務と数字の話⑮~費用と収益は対応する

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費用と収益は対応する

売上と売上原価の関係を見てみましょう。

売上原価には、販売するために作った製品の費用や販売のために仕入たモノが含まれます。例えば工場で働く人の人件費や商社が販売するために輸入したモノの仕入れは売上原価に含まれます。

図表1でみてみましょう。A社は仕入れ先から車両2台を3,600千円(1,800千円/台)で仕入れ、それを4,800千円で販売しました。

前回、今さら聞けない財務と数字の話⑭~売上のルールで説明した通り、 商品をお客様が受け取った時点で販売金額は売上に計上されます。

ですから、この時点での売上は4,800千円。そして仕入れは売上原価に計上されるため、仕入れが金額である3,600千円が売上原価に計上され、売上-売上原価=1,200千円が売上総利益となります。

図表1:売上と売上原価の関係

 

では次に図表2を見てみます。A社は仕入れ先から車両2台を3,600千円(1,800千円/台)で仕入れ、その内の1台を2,400千円で販売しました。この時の取引とお金の流れが図表2です。

販売したものは車1台2,400千円ですから売上は2,400千円です。

仕入れた車両2台の3,600千円が売上原価になりそうですが、図表2では1,800千円となっています。なぜでしょうか。

理由は販売したものが車1台だからです。

売上はお客様がモノを受け取った時点で計上されます。売上原価は売り上げた金額に対するコストだけを計上するルールがあるのです。

企業の会計原則には、「企業の経営活動の成果(販売)とその成果を得るための努力(仕入れやその他費用)が対応関係のあるものは、対応させて損益計算書に計上しなければならないと定められています。」これを 「費用収益対応の原則」と言います。

つまり、1台販売した場合は1台分の仕入れコストを、2台売れた場合は2台分の仕入れコストを売上原価として計上しなければなりません。

図表2の場合、販売したのは1台ですから、1台分の仕入れコスト、つまり1,800千円が当期の売上原価になり、売上との差額である600千円が売上総利益となります。

 

図表2:売上と売上原価の関係(販売と仕入)

  

では、残った1台はどのようにP/Lに計上するのでしょうか。これは「棚卸資産(在庫)」としてP/LではなくB/Sに計上されます。

仕入れた車両が何台であったとしても、販売できたのは1台だけなら売上は1台分だけ。残りは全て「棚卸資産(在庫)」になります。

 

図表3:売上と原価の関係(仕入と在庫)

ところで、ちょっと復習です。

A社(資本金1,000千円)が、車両を2台仕入れて1台販売した際のB/Sはどのようになっているでしょうか。仕入れは1か月後の支払い、販売した代金は1週間後に振り込まれるとします。

答えは図表4の様なB/Sになります。

図表4:売れなかった在庫の計上

 

今回は仕入れが1か月後の支払いなので、今の時点でお金を使うことなく仕入れができます。こうした支払い猶予がある仕入れは前回説明した通り、「買掛金」として計上します。そうすると、買掛金は3,600千円です。

次に販売した車両代金は1週間後に振り込まれます。つまりこれも支払い猶予があるわけですから、「掛け」となり、売掛金として1台分の2,400千円を資産に計上します。

仕入れた車両の内、1台は売れていない訳ですから、在庫として資産に計上します。この在庫は2,400千円で販売する予定ですが、今の時点では1,800千円で仕入れたものですから、価値は1,800千です。そこで在庫1,800千円を計上します。

現金1,000千円と書いてあるのは資本金がそのまま残っているからです。もし買掛金として支払い猶予をもらえなければ、資本金として振り込まれたこの現金を使って仕入れをすることになります。ただ1,000千円では1台分にもならないので、その場合は借入を行う、支払猶予をもらえるように交渉する、或いは資本金を増やす必要があります。

ちょっと本題から外れますが、図表4のように、買掛金がたくさんあれば、銀行借入をする必要はなくなり、資本金も小さくてすみます。

ただ、例えば買掛金の期間が1ヵ月で、販売代金の回収に2か月かかる(つまり売掛金の期間が2ヵ月)ならば、入金される前に買掛金を支払う必要があるため、その間の資金が必要になります。

ですから、買掛金の支払い猶予期間よりも売掛金の猶予期間を短くしておくと資金繰り(お金の運用)が楽になります。

会社を立ち上げる時は、こうした点も考えて取引先と交渉をした方が良いと思います。この点については今さら聞けない財務と数字の話㉕~CCCとは」で詳しく説明しますので、そちらをご覧下さい。

もちろん、必ずしも長い買掛金の期間が良い方が良いわけではありません。

銀行借入が出来る会社ならば、買掛金と借入のコストを天秤にかけてどちらが有利かを考えれば良いと思います。

ここでは、売掛金の期間よりも、買掛金期間を長くした方が、お金の運用は楽になることだけを覚えていてください。

    


⇨ 今さら聞けない財務と数字の話⑯~費用と収益が対応しないとどうなるか

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