今さら聞けない財務と数字の話⑧~B/Sの中味

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前回に引き続きB/Sの話です。今回はもう少し詳しく中味を見て行きます。

図表1はB/Sの右下にあった純資産です。純資産には株主からの出資金や企業が経済活動の結果稼いだ利益が計上されます。

純資産には、資本金、資本剰余金、利益剰余金の3つがあります。これ以外にも自己株式や新株予約権、評価換算差額等と言った項目があるのですが、あまり気にする必要はありません。

純資産は、企業が経済活動を行った結果得た資産から外部に返済しなければならない負債を引いた金額になります。

B/Sの左側が「資産」、右上が「負債」、右下が「純資産」ですが、左側の「資産」から右上の「負債」を引いた残りの資産なので「純資産」です。

ですから、この金額が多ければ多いほど企業の安定度は高いということになります。

純資産の中の、「資本金」と「資本剰余金」は株主から集めたお金ですが、「利益剰余金」は企業が経済活動を行った結果で蓄積された利益です。

企業が経済活動を行って、利益ではなく損失を出し続ければ、この部分がマイナスになります。

そして、利益剰余金の損失が資本金や資本剰余金以上に大きくなると、純資産全体がマイナスになります。

純資産がマイナスになるとどうなるのでしょうか?

B/Sでは左側の「資産」と右側の「負債」+「純資産」が同じ金額になるわけですから、「純資産」がマイナスになると、その分「負債」が大きくなります。

つまり、「資産」よりも「負債」の金額が大きくなってしまいます。

B/Sがこういう状態になることを「債務超過」と言います。債務(借入や返済義務のあるお金)が「資産」の額を上回っている状態、返済義務があるお金が自社の資産よりも多い状態です。

この状態ではお金を返すことはできません。ですから銀行は債務超過に陥ると、基本的にはお金を貸してくれなくなります。

ちょっと話が横道に入ってしまいましたが、コロナウイルスの影響で、人が集まる施設や飲食店は収入が途絶え、費用だけが出ている状態です。この状態が続くと赤字になり、純資産から利益剰余金がどんどん減ることとなります。

国はこうした事態に備え、融資体制を整えていますが、「利益剰余金」が減った結果「純資産」がマイナスになり、その分を緊急融資で賄うことになった企業のB/Sは債務超過となります。

小規模事業者や中小企業はこの数か月、本当に大変な局面を迎えています。

 

図表1:純資産とは

 

図表2はB/Sの右上にある「負債」です。「負債」とは、外部に対して支払う義務があるものです。

例えば銀行借入や材料を仕入れた際に後日支払う必要があるお金(買掛金)や事務用品や備品を購入してまだその支払いをしていない代金(未払い金)等が「負債」に計上されます。

「負債」は大きく「流動負債」と「固定負債」に分けられます。「流動」と「固定」は資産側にも「流動資産」「固定資産」として出てきますが、基本的には1年以内に支払うべきものは「流動負債」、返済が1年超になるものは「固定負債」に分けられます。

図表2でいうと、短期の借入金(1年以内)は「流動負債」、社債や長期の借入金は「固定負債」になります。

短期間で支払う義務があるものは「流動負債」、長期になるものは「固定負債」という感覚でもOKです。

流動と固定については、次回もう少し詳しくお伝えします。

 

図表2:負債とは

  

図表1,2の「純資産」と「負債」で調達した資金を運用(投資)した結果が「資産」の中味です。生産設備である土地や建物、機械・設備、子会社や他社の株式(有価証券)、また販売に際し、後日お金をもらう約束になっている場合は売掛金や受取手形が計上されます。

売掛金は負債の科目にあった買掛金とは反対の取引になります。販売してもすぐに支払いがされず、一定期間の後に支払われる契約をしたお金です。相手にとっての買掛金は、こちらにとって売掛金になります。

資産の中には、もちろん現金や預金も含まれます。

「負債」同様、「資産」も流動資産と固定負債に分けられます。実際には繰延資産というものもあるのですが、繰延資産に記載されるものは、創立費や開業費等、会社の将来に渡って影響する費用のことです。

ほとんどの企業で繰り延べ資産は少ない金額しかないはずなのでここでは説明しません。そういう科目があることを知っていれば十分です。

 

図表3:資産とは

 

B/Sは企業の体力を表す資料です。「純資産」や「負債」で外部から調達したお金を「資産」で運用し、そこで儲けた利益を「純資産」に蓄積していく。

こうして企業は大きくなっていきます。

ところで「負債」は返済義務があるお金ですが、「純資産」は将来返す必要がないお金だと言いました。

もちろん義務はないのですが、企業は儲かった利益の一部を投資家に還元します。投資家は返済義務のないお金を企業のためにビジネスとして出資しているわけですから、当然見返りを求めます。

その場合、投資家はお金を貸す銀行よりも高いリターンを求めます。何故なら、銀行借入と違い、出資金(資本金)は企業にとって返済義務がないリスクのない資金だからです。

企業にとって借入よりもリスクがないということは、投資家にとっては借入よりもリスクが大きいということになります。

企業は、倒産しても返済義務がないわけですから、事業が上手く行けば、投資家は、銀行の借入金利よりもはるかに高いリターンを還元することを要求します。

こうした利益還元は配当という形で「純資産」の中の利益剰余金から出資者に支払われます。

ですから安定性を求めて「純資産」に利益をため込んでばかりいると、投資家から配当を増やすように要求されます。

投資家は事業が成長することを期待しているため、基本的には余剰資金を新たな投資に回すように経営者に求めますが、成長が期待できず、昔の利益の蓄積だけで上場を維持しているような安定企業には「成長する気がないなら今までの利益を株主に返せ」と言って配当の増額を求めます。

ハゲタカと言われる投資ファンドが、日本企業に配当の増額を要求しているニュースを見たことがある方もいるのではないでしょうか。

「純資産」は大きい方が企業にとっては安心ですし、利益が上がらなくても過去の蓄積を給料の支払い等に充てられます。しかし投資家にとっては、新たな成長が期待できない企業には投資を続ける意味もないため、「これまでの利益を分配しろ!」ということになってしまうわけです。

経営者が従業員や取引先ファーストで考えていても、投資家にとっては、「企業は株主のモノ」ですから。

実際、投資家は返さなくても良いお金(リスクマネー)を投資しているわけですから、当たり前の要求と言えば当たり前ですが。

 

図表4:B/Sは企業の体力を表すもの

  

⇨ 今さら聞けない財務と数字の話⑨~B/Sの構成

⇦ 今さら聞けない財務と数字の話⑦~B/S(貸借対照表)とは

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