中小企業が「考える社員」を育成するために

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中小企業の経営者と話していると、「うちの社員は考えないから」、「考えろって言っても全然考えない、まあそんなに優秀な人材がいるわけでもないから言っても無駄なのかもしれないが」という話をよく聞きます。

中小企業では、仕事が「属人化」しているケースが少なくありません。

業務や会計システムも、担当者が使いやすいように長年かけてカスタマイズされているため、限られた担当者しか使用方法がわからないという状態になっている企業はかなり多くあります。

そうした企業では、経営者が「うちの業務はシステム化しようとしても、できないんだよね。みんな自分の周りのことしか考えないから、その人しかわからなくなってしまってる」と嘆きます。

中小企業ではこのように、多くの業務がマニュアル化されずに個人の力に頼った業務運営がなされています。

しかし、それは経営者の要求に応えてきた結果です。 業務が属人化する理由や社員が考えて動かない理由は経営者にあります。がむしゃらに走ってきた経営者が、ある意味その場しのぎで経営を行ってきたツケとも言えます。

従業員は、経営者からの様々な要求に応えるために、自分が最もやりやすい方法で業務プロセスを考えています。要求全体のことなど考えて仕事をする暇はありません。

大体、仕事を誰に引き継ぐかもわからないのに、わざわざ時間をかけてマニュアルを作るようなことはしません。

多くの中小企業のマネジメントは文鎮型となっています。役員や部長、課長といった階層があったとしても、実際はほとんどの業務指示は経営者が直接部下に出しているのではないでしょうか。

例えば、「業務の見える化をやろう!」と経営者が言ったとしても、それを真に受ける社員はあまりいません。「マニュアル化、見える化」を実行するためには、今の仕事を止めなければなりません。

経営者は「見える化をやりたい!」とはいうものの、そのために自分が必要な情報や資料が遅くなることを良しとはしません。

だから誰も本気で見える化には取り組みません。

文鎮型マネジメントは5人、10人規模であれば意思決定が早く行われるため、会社にとってはメリットがあります。しかし、10人を超えると管理は大変になります。

Amazonの ジェフ・ベゾスCEOは、会議や組織マネジメントはピザ2枚が行きわたる人数が適正としています。ピザ2枚となると、1人2切れとしても4~5人でしょうか。 これ以上の人数が会議で議論したり、チームとなっていると生産性は落ちると説きます。

つまり、あまりに大きな文鎮だと、組織としての動きに問題が出るわけです。

何でもかんでも社長決裁をしている経営者には、自分の仕事を分担してくれる責任者が本来必要となります。例えば5人の部長を置いて、各部長が5人のメンバーをマネージする組織を作ります。これができれば5×5で25名のマネジメントが可能となります。

しかし、多くの中小企業では、会社組織としての階層があるものの、「情報が早く伝わらない」、「意思決定が遅くなった」、「部長には安心して任せられない」等の理由から、実態は経営者が直接社員に指示を出す文鎮型マネジメントが行われています。

このため、管理すべき責任者も社員もこれまで通りのやり方で仕事を行い、その結果、経営者は「うちには考える奴が誰もいない」と嘆くわけです。

事業責任者や社員は、経営者が行き当たりばったりで経営をしている限り、今まで通りの仕事のやり方を変えることはありません。変えたら経営者の意向に沿えなくなってしまいますから。

いつまでも文鎮型の組織のままで、経営者が直接末端の部下まで指示を出し続ければ、経営者の器が一杯になったところで組織の成長は止まります。

社員が考えるようになるためには、何でもかんでも社長決裁にすることを辞めるべきです。事業責任者や社員にある部分を任せ、実行させることが必要となります。

こういう話をすると「うちにも人事評価システムみたいなものが必要なんでしょうか」という経営者がいます。しかし、評価基準やマニュアルを作ることが必要なのではありません。

考える社員を育成するためには、コンサルタントに仕組みを作ってもらうのではなく、まずは、信頼する(或いは信頼できる人材に育てたい)社員に一部の業務判断を任せ、その判断に対し責任を持たることです。

責任者や社員が「自分で考え、動き、その責任を負う」という経験をさせることが必要です。

そして事業責任者に任せた業務には口出しをしないことです。たとえ「うちの部長は頼りない」等の不満を社員が言ったとしても、それを聞いて行動を起こしてはいけません。任せたら任せきることが必要です。

こういう話をすると、経営者は次にこう言います。「でも、何を任せて良いのかわからない」

企業には事業を行う目的があります(「企業の目的と目標」)。そしてその目的に到達するために目標を立てます。その目標を達成するために、各部門に中期経営計画や年度計画、月次の計画を立てさせます。

そうやって各事業部門に任せた数字を責任者や担当者に達成させることから始めれば良いのです。

中小企業には、そもそも目的や目標がない企業、あっても紙にかいてあるだけで年度の途中でいつの間にか変わっている企業も少なくありません。

まずは経営者が企業の目的をはっきりさせ、それに向かうための目標を決めることから始めなければなりません。そういうこともできていないのに、従業員に考えることを求めることはできません。

企業の目的と目標を社内に浸透させ、事業部や責任者、社員の目標に落とし込み、その目標を如何に達成するかを考えさせる。達成できなければその理由を、達成できたら、なぜ達成できたのかも考えさせます。

社員はそうやって考える力をつけていきます。

経営者が企業の目的もはっきり示さず、事業責任者や社員に「考える」ことを強いること自体無謀な話です。

本気で「考える社員」を育成したいのであれば、経営者は経営の目的に沿った目標を事業責任者や社員に委ね、目標が達成できてもできなくても、その結果を検証することから始めて下さい。

 

⇨ 正しく評価するためではなく、成長を図るために行う人事評価

⇦ 従業員を適正な労働時間で働かせるために企業が行うべきこと

 

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