中小企業が「考える社員」を育成するために

Pocket

何故社員は「考えない」のか

中小企業の経営者と話していると、「うちの社員は考えないから」、「それほど優秀な人材がいるわけでもないから考えろと言っても無駄」という話をよく聞きます。

中小企業の社員は、同じ仕事を何年も担当しています。つまり、新たなことを考えなくても良い環境で働いています。こうした環境で長く仕事を続けると、全ての仕事が「属人化」します。

例えば業務や会計システムは、担当者が使いやすいように長年かけてカスタマイズされるので、次第に限られた担当者しか使用方法がわからない状態になります。基本的には引継ぎが不要なため、当然業務がマニュアル化されることもありません。

経営者は「うちの業務はシステム化しようとしても、できないんだよね。みんな自分の周りのことしか考えないから、その人しかわからなくなってしまってる」と嘆きます。

しかし、そうなってしまったのは経営者の責任です。がむしゃらに走ってきた経営者が、3年後、5年後の組織を考えずに、その場しのぎで経営を行ってきたツケとも言うことができます。

社員は、経営者からの様々な要求に応えるために、自分が最もやりやすい方法で業務プロセスを考えます。全体のことなど考えて仕事をすることはありません。そもそも、仕事を誰かに引き継ぐことなど考えたこともないので、わざわざ時間をかけてマニュアルを作るようなことはしません。

中小企業では文鎮型のマネジメントが行われます。役員や部長、課長といった階層があったとしても、実際、ほとんどの業務指示は経営者が直接部下に出します。

ですから「業務の見える化をやろう!」と経営者が言っても、それを真に受ける社員はいません。「マニュアル化、見える化」を実行するためには、今の仕事を止めなければなりませんが、せっかちな経営者は、必要な情報や資料が遅くなることを許してはくれません。結局、誰も本気で見える化には取り組みません。

文鎮型マネジメントは5人、10人規模であれば意思決定が早く行われるため、会社にとってはメリットがあります。しかし、1人で管理する人数が10人を超えると管理は大変になります。

Amazonの ジェフ・ベゾスCEOは、会議や組織マネジメントはピザ2枚が行きわたる人数が適正としています。

ピザ2枚となると、1人2切れとしても4~5人でしょうか。 これ以上の人数が会議で議論したり、チームとなっていると生産性は落ちると説きます。つまり、あまりに大きな文鎮だと、組織としての動きに問題が出るわけです。

企業が成長を続けるためには、経営者の仕事を分担してくれる責任者が必要となります。例えば5人の部長を置いて、各部長が5人のメンバーを管理する組織を作ります。これができれば5×5で25名のマネジメントが可能となります。

中小企業では、組織図上は部長、課長等の階層があることになっていますが、「情報が早く伝わらない」、「意思決定が遅くなった」、「部長には安心して任せられない」等の理由から、実態は経営者が直接社員に指示を出す文鎮型マネジメントが行われます。

そして、経営者は前述の通り、「うちには考える奴が誰もいない」と嘆くわけです。

いつまでも文鎮型の組織のままで、経営者が直接末端の部下まで指示を出し続ければ、経営者の器が一杯になったところで組織の成長は止まります。

社員が考えるようになるためには、全てを社長決裁にすることを辞めて、事業責任者に権限と責任を持たせることが必要です。

まずは任せる

こういう話をすると「では、まず人事制度や評価システムを見直さないと」と言う経営者がいます。しかし、評価基準やマニュアルを作ることが重要なのではありません。

考える社員を育成するためには、マニュアルや制度よりも、信頼する(人材に育てようとする)社員に一部の業務判断を任せ、その社員に責任を持たせることが重要です。「自分で考え、動き、その責任を負う」という経験をさせることで、管理職や社員が考えるようになります。

経営者は、管理職に任せた業務には口出ししてはいけません。たとえ「うちの部長は頼りない」と社員が不満を言っていたとしても、それを聞いて行動を起こしてはいけません。一度任せたら、最後まで任せることが大事です。

「でも、何を任せて良いのかわからない」という経営者もいます。

まずは各部門の責任者に、中期経営計画や年度計画、月次の計画を立てさせると良いでしょう。経営者が事業責任者(候補)と共に計画を作り、各事業部門の責任者にその達成を任せる、それで十分です。

「中期計画を作れといわれても、作ったことがないからわからない」という経営者もいるかもしれません。

中期経営計画が作れない理由は、MissionやVision、経営理念等の、「企業の目的」がないからです。ゴールがどこなのかわからずに走っている会社は来年の計画は作れても、3年後、5年後の計画を作ることはできません。

中小企業には、そもそも目的や目標がない企業や、経営理念があっても壁に貼ってあるだけの企業も少なくありません。

ゴールがない会社では社員が何を目指して仕事をしているのか考えなくなります。つまり、考えない社員を作っているのは、企業に目的がないからです。

ゴールがなければ、経営者がゴールを決め、そこに向かうための道順(中期計画)を立てなければなりません。ゴールも決めていない経営者が社員に考えることを強制しても社員は何を考えて良いのかわかりません。

企業の目的(ゴール)と目標(到達するための道順)はっきりさせ、事業部や責任者、社員に浸透させ、その目標を如何に達成するかを一緒に考えさせる。達成できなければその理由を、達成できたら、なぜ達成できたのかも考えます。

社員はそうやって考える力をつけていきます。

『管理職のための KPIと財務【入門編】』

↑↑↑Click to amazon

売上を達成するために、「今月の目標〇〇百万円を死守!」と気合を入れても目標は達成できません。目標を達成するためには、行動計画に落とし込む必要があります。本書では、売上を行動計画にまで落とし込む方法を簡単に解説します。

また、在庫が増えるとなぜ利益が増えるのか、赤字でも販売すべきなのか、大口の受注はどこまで値下げして受けるべきか等の管理会計の視点を説明します。

経営者や管理職に必要となる最低限の知識を、わかりやすくまとめていますので、若手営業員や新入社員からこれまで全く経営戦略や財務に関わってこなかった人でも理解できるような内容となっています。

ご興味がある方はぜひご覧ください。

 

⇨ 正しく評価するためではなく、成長を図るために行う人事評価

⇦ 社員を生産性とアウトプットで評価するために企業が行うべきこと