業績計画より企業の目的が大事な理由

なぜ企業には目的が必要なのか
企業の目的とは、「企業は何のために存在するのか」という企業の価値観や存在意義を表すモノです。会社によっては、「経営理念」とか「Mission、Vision」とか言われます。
経営者に目的がなければ、企業の方向性が定まらず、戦略や戦術は全てその場限りのものになってしまいます。(そもそもその場限りのモノを戦略とは言いませんが)
その場限りの考えでは、長期的に企業が成長・存続することは困難です。旅行と同じで、目的地が決まっていなければ、ノープランでふらふらするしかありません。
中小企業の中には、毎年、経営計画発表会を開催している企業もあります。年度経営計画は、中期経営計画で策定された計画の1年目であり、その中期経営計画は中期ビジョンや経営ビジョンに基づいて作成されているはずです。
中期経営計画も、年度計画も、さらに毎月の目標も、全ては経営ビジョンのような、企業の目的に基づいて作成されるべきものです。【図表】
図表:経営ビジョンと年度計画、業績の関係

中小企業の経営者と話をすると、「理念だけで飯は食えない」と言われることがあります。企業の理念よりも、「売れてなんぼ」ということなのでしょう。実際に私が一緒に働いていたファンドもそうでした。「経営理念は良いですから、中期経営計画をしっかり作ってその達成を目指してください」と最初の頃はよく言われました。
しかし、どんな大企業も、成長する過程で企業理念や経営方針を定めて事業を大きくしています。
計画は大事ですが、計画を立てて「この計画を達成しよう」と言っても人は動きません。人が動かなければ業績は伸びません。数字は人が行動した結果です。
目的もわからないのに、「この数字を目指そう」と社員に発破をかけても、社員は「給料がもらえないと困るから」という理由で受動的に働くだけです。そこには働くことに対する意味を見出すことはできません。ただ「目標を達成しないと社長に怒られる」という理由しかありません。
これでは、「何の為に勉強するのかわからない」という学生と同じです。勉強することが苦痛であるように、仕事をすることが苦痛になります。
旗を立てる
たくさんの社員を抱えている会社ほど、目的を作る重要性は高まります。集団を同じ方向に向かわせるためには目的が必要だからです。
昨年行われたラグビーのワールドカップで、日本は見事にベスト8に進みました。世界2位のアイルランドまで撃破することを予想した人は殆どいなかったと思います。
しかし、コーチや選手は本気で「絶対勝とう、必ず勝てる」と信じていました。彼らには、4年前の南アフリカ戦の勝利で盛り上がった日本でのラグビー人気を、更に大きくして、「日本にラグビー文化を根付かせる」という目的があったからです。
日本ラグビーフットボール協会のホームページには、「ラグビーファミリーを国内外に増大させ、日本ラグビーの国際力を高める」というミッションが載っています。そして日本のラグビー文化を豊かなものにするということを大きな目的として掲げています。
この協会のミッション(目的)に基づいて、ワールドカップの目標が設定されました。それがベスト8進出だったわけです。
代表チームは、日本のラグビー文化を豊かなものにする、日本にラグビーを根付かせるという壮大な目的に向け、今回の目標達成はMustであると信じ、様々なことを犠牲にして練習を積み、戦い、見事に目標を達成しました。

集団を目的地に向かわせたいのであれば、目指す場所に旗を立て、そこに行きたい人を集め、経営者が先導する必要があります。
経営者は常に目的地を確認しながら集団を牽引しなければなりません。そうしなければ集団は目的地を見失い、ばらばらになってしまいます。
学生が就職先を選ぶ基準にも
学生は社会人よりも企業が掲げる経営理念に敏感です。就活に於ける企業選びで、学生が重視するものの一つが、企業の理念や存在意義です。
学生は、単に大企業だからとか有名だからという理由だけでなく、大企業の中でも、自分が働きたいと思える企業をまず選ぶ傾向があります。まだ本格的に働いたことがなく、会社の内情もよくわからない学生でも、「メーカーでモノ作りがしたい」とか、「世界を相手に商売がしたい」とか、「社会を支える裏方さんを、マスメディアを使ってもっと世の中に知ってもらいたい」という想いを持っています。
例えば、アナウンサー志望の学生は、テレビやラジオ局を中心にエントリーするでしょうし、世界を相手に大きな仕事をしたい学生は、大手商社や銀行、大手メーカーと、業種に関係なく大企業にエントリーするかもしれません。また、大企業では大きな仕事は任せてもらえないから、ベンチャーや中小企業で若いうちから責任を持って仕事をしたいという人もいます。
最近は、企業の規模や知名度ではなく、その企業の経営理念、社会的な存在意義を重視する学生が増えてきています。中小企業であっても、社会に貢献する企業や、若手人材の成長に力を入れている企業、社会問題を解決しようとしている企業には大変興味が持たれます。(☞「就職活動で新卒学生は何を重視しているのか」)
良い人材を集めるためには、企業の目的を明確に示す必要があります。中小企業が良い人を採用したいと思うなら、企業の目的を明らかにしなければなりません。そして経営者は、ただそれを紙に書いて壁に貼るだけでなく、その目的を目指すことで、社員にどのようなメリットや楽しみがあるのかを理解させる必要があります。
大手企業であれば、こうした啓蒙活動を行う「エバンジェリスト(元はキリスト教の伝道師)」を、社内でアサインしている企業もたくさんあります。人数が少ない中小企業であれば、経営者が自ら社員に企業が目指すモノを語ることができるはずです。
どうやって自分の想いを企業の目的という形にすればよいかわからないという方は、「最高」「断トツ」のMissionを考える で自社の経営理念やMission、Visionを作ってください。
企業を経営するには、企業の目的を示し、その目的を目指して戦略を作り、社員をひとつにまとめて動かすことが必要です。
企業の目的を示し、その目的に賛同する社員を集め、彼らと共に、一つ一つ目標をクリアしながら成長する。そうやって企業は大きくなっていきます。
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