なぜ経営ビジョンが必要なのか~組織の拡大に連れて難しくなる意思統一

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経営ビジョンを掲げる理由

経営ビジョンとは「何のために企業を経営するのか」、「どのような企業にしたいのか」といった企業のあるべき姿のようなものです。企業が存在する価値と言ってもいいかもしれません。企業によっては、それを「社訓」や「経営理念」と言ったり、「ミッション、ビジョン、バリュー」と言ったりしていますが、ここでは、「企業が果たすべき使命」、「企業が目指す将来のある時点での状態やあるべき姿」、「組織が共有する価値観、従業員の判断基準、行動指針や行動規範等のようなもの」等々をまとめて『経営ビジョン』と言うことにします。

経営者の頭の中には、多かれ少なかれ、「こういう企業にしたい」という願望があったはずです。「あったはず」と過去形にするのは、元々はその願望や想いを成しとげるために企業を立ち上げたとしても、多くの場合は、途中でそうした想いを忘れてしまう経営者が多いからです。こうした「願望」や「想い」が会社の経営ビジョンの元です。「経営ビジョンがない」という会社であっても、それは単に経営ビジョンが明文化されていないか、経営者が当初の想いを忘れてしまっただけだと思います。

経営者が一人で事業をしているなら、経営ビジョンが明文化されていなくても良いでしょう。しかし、組織が大きくなり、従業員が増えるとそうはいきません。目指すべきビジョンがなければ、組織や従業員の意思統一を図ることが難しくなるからです。

経営者に経営ビジョンがなければ、企業の方向性が決まらず、その方向性に到達するための戦略や戦術を作ることができません。企業として戦略や戦術がなければ、業績が継続・成長することもありません。

「業績計画はあるけど経営ビジョンはない」という企業も少なくありません。しかし、そもそも業績計画は、経営ビジョンがあって、それを成し遂げるためのロードマップが描かれ、そのロードマップに沿って毎年、毎月の業績計画が作られているべきものです。

企業という船の船長である経営者が、辿り着くべき港(目的地)を示さなければ、従業員は、その船に乗るべきかどうかわかりません。さらに、目的とする港にたどり着くまでに、どのような航路を辿るのか、いつまでに次の港に着く予定なのかを明確にしなければ、船員は自分たちが次の目的地まで何をどの程度やれば良いのか、そもそもこの船に乗っても良いものかどうかすらわからないはずです。

船長が目的地やロードマップを示さずに、目先の仕事だけを伝えているなら、自分の人生をかけてその船で航海に出ても良いかどうか船員は迷います。当然、下船して別の船に乗る人も増えます。そして残るのは、「取り敢えず船に乗って、言われたことだけやっていれば生活ができるから乗っている」という従業員だけになってしまいます。

従業員が船での仕事を、自分の生活の糧としてしか考えなければ、「お客様に対してもっと良いものを提供しよう」という気持ちや、「船が次の目的地にスケジュール通りに到達できるように他の仲間と一緒にがんばろう!」という気持ちは起こりません。「うちの従業員は何も考えてない」、「自発的に動く従業員が本当に少ない、言われたことしかやらない」と嘆く中小企業経営者は多いですが、そもそも船長が次の目的地すら示していないのでであれば、それは当然のことです。

「お客様に良いサービスや商品を提供することは当たり前、経営ビジョンがあるとかないとかの話ではない」と言う経営者もいることでしょう。しかし、経営者や経営者と同じ考えで長年船で働いてきた社員には、それが通じるかもしれませんが、新しく採用した人やこれから採用しようとする人にそれは通じません。彼らには、ひとつひとつの仕事を教えるのと同じように、企業の目的を伝え、この企業で働く意味を見出してもらわなければなりません。

経営者が企業に良い人材を集めたいと思うなら、経営ビジョンを掲げ、それを社内に浸透させることです。経営ビジョンを従業員に理解してもらうことで、従業員が経営ビジョンに向けて一致団結し、それが毎年、毎月の業績の達成につながる。これが企業が経営ビジョンを掲げるべき理由です。

 

 経営ビジョンと業績の関係

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