地方企業・中小企業は外国人新卒を幹部として育成しよう!

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前回は、海外留学生のインターンシップでの受け入れが中小企業の新卒採用のチャンスとなる可能性があることを説明しましたが、アジア等に拠点を持っている企業であれば、現地の優秀な人材を採用できる可能性があります。

海外に拠点があれば、現地で採用後1年以上勤務する人材を企業内転勤で日本に異動させる在留資格が取れるので、比較的容易に海外人材を呼び寄ることができます。

アジアの中でも、私が中小企業にお勧めするのはタイの大学生です。昨今多くの日本企業が主に中国、韓国といった東アジアの国から新卒の学生を本社で採用しています。

しかし、東南アジアの国々については、東アジアと比較して文化や言語、習慣等が日本とはかなり違うこと、また国を長く離れて働くことに抵抗を持つ人が多い(除くフィリピン)ことから、未だに現地法人での採用が主流を占めています。

図表1は2018年にバンコクで行われた日系企業のJob Fair(就活セミナー)です。このイベントは2015年から行われており、2018年の来場者は2日間で約32,000人を集めました。図表2の通り製造業が多いこともあり、エンジニア、日本語の通訳、セールス関連の求人が多く見られます。

 

図表 1:タイで行われた新卒・中途向け日系企業就活セミナー(2018年6月)

(出典)Japan Job Fair 2018ウェブサイト(バンコク日本商工会議所)

 

図表2:就活セミナーで募集している職種

(出典) Japan Job Fair 2018ウェブサイト(バンコク日本商工会議所)

 

ここ数年、自動車業界や建設業界の大手企業ではタイやフィリピン等、東南アジアの大学生を採用し、日本での教育・育成を経て、現地拠点やアジアの統括拠点で勤務させるケースも出てきました。また最近では、アジアに進出するサービス業が増加しており、製造業であっても相手が日系企業ではなく現地企業や華僑系企業となるケースが増えてきています。

これを受け、企業のローカル化の必要性が高まり、どこの企業も、将来現地法人のマネジメントとなれる人材の採用、育成に注力するようになりました。

この様な状況下、中堅・中小企業の中には、日本のグローバル人材採用難や東南アジアの日本観光・日本語ブームを逆手に取って東南アジアで新卒を採用し、彼らを日本で育成してグローバル(グローカル)人材にしようとする企業が出てきています。

ある日本企業では、タイで優秀な人材を輩出する有名大学の新卒を複数名採用し、一定期間現地法人で日本語の学習と仕事をさせた後日本に派遣して日本採用の新卒と共に研修を行っています。研修後は3年程度、本社の製造部門や管理部門、営業部門でOJTを通じて育成し、本社で一定のスキルと人間関係を作った後に、出身国の子会社に戻して幹部又は幹部候補として勤務させています。

この際、採用する人材ターゲットは「①日本語ができない又はうまくない、②大学での専攻は非工学系、③学業成績が優秀な学生」とします。前述した通り、優秀な大学の工学系の学生は日系の超大手自動車会社や建設会社に青田買いされてしまいますので、中堅中小企業が彼らを採用することは非常に困難です。

タイの学生の多くは大学を卒業してから就職活動をします。近年はこの時期が少し早まっているかもしれませんが、日本のように新卒一括採用制度はなく、「セールス」や「エンジニア」等、職種別に募集採用が行われます。

日本の様に「事務職」や「総合職」といった曖昧な職種はありません。このため、経営学部や理工学部、一部の外国語学部の学生は就職しやすいですが、文学や歴史、生物学等、企業で働くための勉強をしていない学部の学生は、優秀な大学出身であっても就職で苦労します。

大学入学時に自分の将来の就職を考えて学部を選ぶ人はタイでもそれほど多くはありません。このため、優秀な人材であっても、例えば文学部に進んだ学生は、すぐに就職先が見つからない可能性が大きいのです。

そこで先の日本企業は、①、②、③を満たす人材をターゲットとして採用活動を行いました。当初は現地の人材紹介会社経由で履歴書を集めて面接をし、3月に採用した全員を1年間現地法人に勤務しながら日本語学校で学習をさせ、翌年の4月に日本に派遣して日本採用の新卒と共に研修を受けさせました。

元々優秀な人材で学習に対する意欲や姿勢が素晴らしい為、1年で日本語検定N2(日本語検定2級)に近いレベルまで日本語が上達しています。

そして日本で2-3年業務を行った後、タイに戻って管理部門や営業、製造部門で働く人、本社の調達部門に残る人と、其々のキャリアを積ませることで、今まで日本人が責任をもっていた部署を引き継いだり、本社から派遣された日本人の上司になったりする人材も現れる様になっています。(図表3)

 

図表 3:海外での新卒採用・育成方法

 

もちろん日本で育成した人材が、帰国した途端に転職してしまう等のリスクはあります。しかし、日本の新卒と同じ時期に研修を受けた同期意識やネットワーク、3年間の本社勤務で培った多様な人脈がこのリスクに対する大きなヘッジ策になっています。

仕事で困ったことがあればすぐに誰かに助けを求められる関係性があることに加え、自分が将来子会社の幹部になれると考えれば、余程の条件をオファーされない限り辞めていく人も少ないのかもしれません。

実際にこの会社では2013年度に現地で6名の新卒社員を採用し、5年経った現在では4名が営業、人事、総務、製造管理部門のマネージャーやリーダーとなっています。日本人派遣社員に代わって新規市場や顧客開拓、SCM改善、採用、育成等人事戦略を自ら打ち出す等、活躍しており非常に評判が良いとのことでした。

経営管理がしっかりしていれば、海外でもがっちり儲けることができます。そうじゃなければ、いくら営業や工場が頑張ってもザルで水をすくうようなことになってしまいますからね。

トップのリーダーシップが強く社内の隅々まで目が行き届く中小企業だからこそ、こうして採用した外国人材を将来のマネジメント候補として育成することが出来ます。

尚、海外人材を活用した企業の活性化と海外拠点の経営管理法については、本ブログ「安心して稼げる海外拠点の作り方」で15回に渡って詳しくお伝えしておりますので、ご興味があればご覧下さい。(⇨ 安心して稼げる海外拠点の作り方 第1回

また、Kindle書籍「地方・中堅企業のための海外人材育成マニュアル」でも同じ内容がご覧いただけます。

海外に進出している企業は、是非外国人新卒採用で、儲かる海外拠点を作ってください。

 

⇨ 中小企業にとっての組織図の重要性

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