経営者に求められる「融合する力」

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皆さま、あけましておめでとうございます。私は、2020年の年始は久しぶりにゆっくり過ごすことができました。でも、年末から正月にかけてやるべきことを片付けている内に、のんびりした連休があっという間に終わってしまい、明日からまたお仕事ですね。

新たな年の始まり、皆さまが素晴らしいスタートを切れることを願っております。

さてこの1月から、某大手事業会社が投資する貴金属商社の経営に携わることとなりました。これまで貴金属にはまったく関わったことがありませんが、業界の仕組みや世界の中での日本という視点で見ると、他の業界で培った経験とノウハウを役に立てられるのではないかと考えています。本質的な問題を探し出し、解決に導く手助けするために、気分を新たに臨もうと思います。

そこで、今日は「プロ経営者」と呼ばれる人たちについて考えてみたいと思います。

投資ファンドと仕事をしている時、「伊藤さんはプロ経営者としてどういうゴールを目指しているのですか」と言われることがありました。しかし当時、私は自分のことを「プロ経営者」と呼ばれることに違和感をもっていました。

何故なら、自分で事業を立ち上げたわけでも、リスクを取って経営を行っているわけでもないからです。

だから私は自分のことをブログのタイトルのように、「雇われ経営者」だと思っています。まあそれでお金をもらっているのでプロと言えばプロですが、そんなこと言ったら所謂サラリーマンだってプロですからね。

独立して経営代行という仕事を行うようになった今でも、事業のために個人保証を銀行に差し入れ、多くの従業員やその家族の生活を全て背負って汗を流しているオーナー企業の社長と比べれば、自分とは抱えるモノの重さは全く違うと思っています。

私にとっての「プロ経営者」とは本来このようなオーナー経営者のことですが、世の中一般的には「プロ経営者」と言うと、業界や業種に関係なく会社を渡り歩き、経営を行う人材をイメージされるのではないでしょうか。

日本の会社組織では、新卒で入社して何十年も同じ企業で働き、課長、部長を経て、役員や社長になるのが一般的です。

社歴の古い上役は部下よりも会社の人脈もあり、業務内容にも精通しています。社歴の浅い人間が同じ土俵で勝負しても勝ち目はありません。

日本企業は会議で役職が下の人が意見を言うことが少ないのもそれが理由の一つだと思います。

しかしアメリカの企業では、昨日までたばこの企業で働いていた経営者が今日からはコンピューター企業で働く様なことが普通に起こります。

新たに来た経営者は、その企業が何をどのように作ってきた、どの部署の人がどういう性格で何ができるかということよりも、これからの市場がどう変化して、顧客が何を求めるのか、自社にはどんな資源があるか、今後どうやって顧客が求める製品を作れるかという点にフォーカスします。

そして企業が持つ知的資産を有効に使って経営を行います。

早稲田大学大学院の入山章栄教授は、人・組織が新しい知を生み出すためには、自分の現在の認知の範囲外にある知を探索し、それをいま自分の持っている知と新しく組み合わせる『知の探索』が必要であると説いています。

そこで探索された知を徹底的に深掘りし、何度も活用して磨き込み、収益化する『知の深化』を行うこと。それによって知の探索で得られたものが、商売として成り立ち、企業に持続性をもたらすとしています。(「世界標準の経営理論」ダイヤモンド社)

日本の企業は知の深化には非常に優れていますが、知の探索については十分とは言えません。

戦後の成長期には、貪欲に海外や他業種のビジネスモデルを自社の経営に応用し、新たな研究や事業にチャレンジしてきた日本の大企業も、今や目先の収益を追って、リスクを最小限にすることばかりに気を取られています。

このため日本の企業では、中長期的なイノベーションが枯渇してしまっていると入江は指摘します。

様々な業界でマネジメントを行ってきた人材には、この『知の探索』能力があるはずです。

しかし企業は『知の探索』を導入するだけでは動きません。

多くの日本企業は、その企業独自のスキルや技術で高い品質の製品やサービスを作ってきました。そして規模の大小はあっても、それらを徹底的に磨き上げ収益化する『知の深化』を行ってきたはずです。

オーナー経営者ではない「プロ経営者」と呼ばれる人たちは、この『知の探索』能力を外部から導入し、それを企業内部にある『知の深化』と融合させることで、企業を一段も二段も上の成長ステージに導くことができる人材でなければなりません。

日本の大企業は、外部からなかなかマネジメントを採用しませんが、投資ファンドは「プロ経営者」を外部から連れてきて、その企業が持つ素晴らしい技術や製品をより大きな市場に広げ、組織をあるべき姿に再構築させます。

そうすることで『知の探索』と『知の深化』を融合させ、企業を新たなステージに押し上げることが実現できるのです。

日本企業が世界の市場で戦い、生き残っていくためには、中長期的な知の探索によるイノベーションが重要な要素になります。

そして『知の探索』と『知の深化』をバランスよく推し進めるためには、経営陣をどのように構成するかが重要となります。 

長い間、同じ会社で仕事を続けた経営者は『知の深化』に囚われてしまいがちです。

経営陣をプロパー人材だけで固めずに、外部から「プロ経営者」を採用し、中長期的な成長に向けた化学反応を起こすことが、今後はどこの企業でも求められることでしょう。

ただ、実際にメディアでもてはやされる「プロ経営者」が本当に中長期的な視点をもっているかどうかは疑問ではありますが。。。

新しい企業で、良い化学反応が起こせるように努力したいと思います。本年もよろしくお願い申し上げます。

 

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