中小企業のグローバル人材戦略 第11回

海外新卒の採用と育成方法
海外子会社幹部の現地化は日本企業にとっては高いハードルです。そこで、まずは管理部門の幹部を「インサイダー」である現地人材に置き換え、彼らを本社の新卒と同じように育成することからトライしてみましょう。
【図表】は、 コンサルティングに関わった企業(Z社)のタイ子会社で実践した採用と育成方法です。タイ国内の優秀な大学から、幹部候補生として新卒を6名採用しました。彼らは非常に熱心に日本語を勉強し、その内の4名がわずか1年で日本語検定の2級を取得しました。Z社は、この4名を翌年の4月から日本採用の新卒と共に同期として新人研修に参加させました。(2名は次の年の新人研修に参加)
4名は、日本の調達、営業、経営管理部門で業務トレーニングを2~3年行った後、帰国してタイの子会社に配属され、人事、製造、管理部門等のマネージャーやリーダーとして活躍しています。残念ながら営業部門に配属された1名は、退社してしまいましたが、3名は、帰国から5年経った今でもZ社のタイ子会社のコア人材として高い評価を受け、順調に昇進しています。
【図表】海外子会社の幹部社員候補育成事例

手間とコストをかけて育成しても、帰国した途端に彼らが転職してしまうリスクは当然残ります。しかし、彼らには、日本で培った同期との強いネットワークや、困った時に本社に何でも聞ける社内人脈があります。こうした環境に加え、自分がグループの幹部候補であることを理解していれば、余程の好条件をオファーされない限り、すぐに辞める可能性は少ないはずです。ただ、優秀な人ほど、目先の報酬だけで仕事を選ぶことはないとは言っても、実際に、優秀な人材は引く手あまたです。当然その点を考えて企業は人事制度や育成方法を検討する必要はあります。
これからの人事部には、過去や日本国内の人事制度に拘らず、グローバルな視点を持った採用や人材評価制度、育成方針を検討することが求められます。
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