中小企業のグローバル人材戦略 第6回

駐在費用は適正か
【図表】は、日本企業R社の、東南アジア子会社に於ける日本人駐在員と現地従業員の報酬比較です。A、B、Cの3名は日本人駐在員、X、Y、Zの3名は現地従業員です。同じ営業課長という役職のB(日本人)とY(現地)の報酬を見ると5.5倍の開きがあります。日本本社に新卒で入社して2年目のCの報酬は、海外赴任の諸手当が付与された結果、現地社員のトップである管理本部長のXとほぼ同額となっています。
R社の報酬体系を見る限り、日本人駐在員のコストと現地社員のコストの差は、1990年代からそれほど変わっていないように見受けられます。
【図表】駐在員のコストは適性か ~ R社の東南アジア子会社に於ける報酬比較

(出典)R社からの聴取を基に作成
R社の現地子会社は、顧客の8割以上が現地の日系企業ということもあって、営業員20名の内、営業部長、マネージャー等の幹部6名が日本人駐在員でした。R社の顧客である大手日系企業では、幹部の現地化が進んでいるため、営業員が日本人である必要はないようです。若手社員を海外駐在させている理由は、教育的な意味合いが強いのかもしれません。
しかし、管理本部長とこの新人社員が同じ報酬となると、費用対効果について疑問を持ちます。従業員の報酬がわかる管理本部長は、この報酬体系を見るとどう思うでしょうか。また営業課長についても、顧客である日系企業のローカル社員化が進む中で、日本人駐在員との報酬に5.5倍の差がある理由を説明することは非常に困難です。
海外では個人のキャリアは自分で作るという考えが当たり前です。そのため、勤めている企業に昇進や昇給の可能性がなければ、優秀な人材はすぐ辞めてしまいます。R社を見ると、日本企業が「優秀な現地従業員はすぐに辞める」と嘆くのも自業自得に感じます。
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