小規模M&Aアドバイザリー、事業再生・PMI支援ビジネスモデル~まとめ

所有と経営の分離による更なる成長
事業承継では、法制度、税制の改正への対応等、さまざまな対策が必要となります。国は中小企業のM&Aを支援するための相談窓口を全国に設立して、民間仲介会社への橋渡しを積極的に行うようになりました。
また、新聞、テレビ等でも第三者への事業承継の話題を頻繁に採り上げるようになり、書店には事業を売買するための経験談やノウハウ本が溢れています。
かつて、M&Aを行う企業や外資系PEファンドが「乗っ取り屋」、「ハゲタカ」等と呼ばれ、「外資ファンド=極悪非道」のイメージであった時代と比較すると、第三者への事業承継に対する社会の受け止め方はかなり変化してきているように感じます。
本ブログでは、中堅・中小企業の事業承継に於いて、事業の譲渡側と譲受側企業それぞれが抱えている問題を発見し、解決するビジネスモデルを提案してみました。
小規模企業の事業承継問題の解決策については、事業引き継ぎ支援センターへのインタビューや支援者向セミナーに参加するに従って、税務や法務といった定型スキル面以外での事業承継の支援ができる人材が少ないことがわかりました。
当初は事業引き継ぎ支援センターでの成約率が5%でしかないことに疑問を感じていましたが、調べていくうちに、支援が必要な企業対比、担当者が少なく、全く手が回っていないこと、そもそものスキルが足りないこと等が理解できました。
事業引き継ぎ支援センターや商工会議所が開催する支援者向セミナーには、多くの税理士や中小企業診断士が参加しています。しかし「実践編」と謳ったセミナーであっても、実践的なスキルやノウハウのような説明はほとんどありません。
事業引き継ぎ支援センターの説明を行った上で、M&A案件があれば支援センターにつなぐことを促すだけです。実践編と銘打っている割に、経営と税務のプロを対象にしたものとは思えない内容にいささか驚きます。
しかし、実際に参加している側の人たちの話で感じたことは、参加した士業の人たちにとってもM&A自体が未知のものであり、何をして良いのか良く分らないという人が殆どであったため、このようなセミナーになっても仕方ないのかと感じます。
現在M&A仲介会社の業績は絶好調であり、仲介会社はコンサルタント人材を何人増やせるかが業績のKPIになっています。これは私が在籍した人材紹介会社でのKPIと非常に似ており、話を伺う限り、マネジメントも同じような感じで行われているのだろうと想像しました。
今後もこの傾向は続くはずですが、仲介会社に所属している人材は、数年もすると独立し、市場に多くの仲介会社や人材が増えることで、日本のM&A市場も、米国のビジネスブローカー市場に近いものとなる予感がします。
現状では、小規模なM&A案件を積極的に採り上げる仲介企業は少ないですが、だからこそ今の段階から、この市場を獲り込むビジネスモデルを確立させることができれば、顧客が抱える問題を少しでも早く解決できるのではないかと考え、一つ目の小規模M&Aアドバイザリー事業を提案しました。
二つ目の事業承継に向けた事業再生支援は、企業の経営者の支援や経営代行を行うビジネスモデルです。経営の再建に金融が必要な場合は多いですが、PEファンドが投資する企業は、オーナーの株式を取得する為にお金が必要ではありますが、企業自体が多くの資金を必要とする場合はあまりありません。
ファンドは、買収した企業に経営の革新が出来る人材を送り、その人材のマネジメントをサポートしながら株主として監督します。ブログ内のインタビューからもわかる通り、企業の価値を向上させるには、送り込んだ経営陣の能力や働き次第です。
中小企業の経営者が事業を再生して従業員や取引先を守りたいのであれば、PEファンドに株を渡すのではなく、PEファンドと同じマネジメント方法で事業再生を実施することです。
つまり、優秀な経営者(いわゆるプロ経営者)を雇い、自らはオーナーとしてその管理に当たる。例えばイタリアのハイブランド企業の経営者はたいていがプロの経営者です。
所有と経営を分離し、経営を優秀な人材に任せるイタリア等の中小企業が行っている経営ができれば、日本の中小企業はまだまだ成長の余地はあると考えます。
最後の三つ目めは、M&Aで買収した企業のPMIです。先行調査やインタビューの結果、そして私自身の経験から、たとえ大企業であっても、買収した企業のPMIをしっかりと行っている企業は非常に少ないと言えます。
PMIでやるべきことはどの案件でもほぼ同じですが、実施する場合は、相手の状況等によって手法や強度の順序を調整する必要があります。特に、クロスボーダーの場合は、その国の習慣や宗教、従業員同士や元経営者との関係等々も考慮しなければなりません。
そのため、PMIを支援する場合は、単なるコンサルティングではなく現場で旗を振り、共に汗を流すコンサルティングが求められます。
ブログ内ではPMIをコンサル会社に丸投げする企業の話を書きましたが、日本企業にはまだPMIの重要性や、やるべきことが理解されていません。今後増加が予想される中堅中小企業のM&Aを成功させるためにも、PMI支援事業の重要性を広める必要があると考えます。
小規模M&Aアドバイザリー事業、事業再生・PMI支援事業とも、それぞれのサービスを提供する相手は異なりますが、行政にも民間にも支援者が少ない領域で、「事業の再生~承継~成長」を一貫して支援することには大きな意義を感じます。
本件のような事業の取組が進めば、引退後の生活に不安を抱える小規模企業の経営者のサポートや、事業を引き継いだ企業の更なる成長に役に立つことができると考えます。
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