「事業承継、事業再生、M&A関係の資格を取りたい!」という人のために

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事業再生・承継やM&A業務の資格とは

「M&Aの勉強がしたい」とか「事業承継や事業再生の資格を取りたい」という方から相談を受けることがあります。

中小企業の事業承継や事業再生の実態について調べた際に、その支援をする側の資格についても調査し、さまざまな資格があることに驚きました。

この領域には国家資格がないため〇〇協会というそれらしきものが乱立しており、講座や資格の内容も良く分かりません。講座を受講すれば、〇〇承継士とか〇〇再生士というような、士業っぽい肩書を与える団体もあります。

そこで実際にいくつか受講してみることにしました。

今回は「事業承継やM&Aの資格を取りたいと思っているけど、どんな資格を取ったら良いのかよくわからない」という方のために、私が調べ、経験した内容をお伝えしようと思います。

資格取得には、10~30万円の講座を受講する必要が

M&Aや事業承継・再生に関する資格は、まず2日~1週間程度、時間にして15~30時間程度の講座を受講し、最終日の試験に合格する必要があるものがほとんどです。

受講料は10万円~30万円程度と安くはありません。更に試験に合格しても、協会に入会しなければ資格を名乗れないものもあります。中には、毎年一定数以上の講座受講が必要だったり、年会費を支払わなければ資格の更新が出来なかったりする団体もあります。

名刺に肩書を書くことはできるが

金融の世界にいる人は、恐らく名刺の肩書には余り興味を持っていないと思います。M&Aを行う場合、ストラクチャーを作ったり、契約書を締結するために弁護士や税理士に業務を依頼しますが、どこの事務所で何の専門家なのかということだけです。

ただ、独立した経営コンサルタントや士業等、組織的な背景がない人で、かつ中小企業をお客様にする人にとっては、「M&Aアドバイザー」とか「事業再生マネージャー」のような資格を名刺に書けることには、ある程度メリットがあると思います。

もちろん、30時間の受講で取得できるような資格は、ある意味「ハッタリ」に近いかもしれませんが、それでも普通の士業よりも内容を理解しているわけです。それに、顧客となる中小企業だけでなく、金融機関、公的機関、銀行や専門家といった支援者と仕事をする場合は、この「ハッタリ」が意外と役に立つこともあります。

実際、 私が某県で公的な仕事をしていた際、「名刺に書ける肩書があれば何でも書いといて」と言われ、M&Aアドバイザーという(なんちゃって)資格を名刺に書いていました。

ある時、信金の専務との名刺交換で「伊藤さんはM&Aのプロなんですか、すごいですね」と言われ驚きました。

最初は「いじられてるのかな(苦笑)」と感じました。しかし、お話を伺っていると、M&A業務に全く携わったことがないとのこと。

この時初めて、地方銀行がM&Aシニアエキスパート資格の取得をアピールしている理由がわかりました。

名刺に、M&A関連の肩書があれば、業務内容を知っている人が少ない地方金融機関や企業には「M&Aの専門家」として、一目置かれるのだろうと思います。

主催する組織内でのネットワークの広がり

資格を選ぶ際は、認定している組織のネットワークや信頼度、今後の仕事に繋がりそうかということを勘案して決めるのが良いと思います。

経験や実力があって人柄が良い方なら、資格講座の受講や取得後の組織の会合を通じて講師や団体に所属している方々と仲良くなれるかどうかは大事なポイントです。

そうした交流を通じて「この人と一緒に仕事がしたい」と相手に思われれば、多分、どこかで声をかけて頂けると思います。

そういう意味では、費用対効果を考えると、中小企業診断士の資格よりもこれらの資格の方が良いかもしれません。  

数ある事業承継や再生の資格の中で、私が実際に受験や受講してみて、中小企業診断士や経営コンサルタントにとって、比較的役に立つかもと思える資格や講座は下記の4つです。

金融検定協会認定 事業承継マネージャー」  

2019年8月に、事業再生・承継コンサルタント協同組合(CRC)が主催した事業再生マネージャーの養成講座に参加してきました。

1週間の講座で、189,000円(税別)です。参加者は40名程度で、 内容は基礎的なものが多かったですが、 現場で実際に再生支援をしている方々の話を聞ける点は非常に良いと思います。

中小企業診断士の他、金融機関からの派遣者、会計士、会社の社長と参加者の顔ぶれも多彩です。飲み会も数回企画されていて、参加した受講生や講師と仲良くなれる楽しい講座でした。

最終日に試験があり、合格すれば金融検定協会認定 中小企業事業承継マネージャーと名乗って名刺に書くことができます。試験自体は参加者の7割程度が合格するようです。

事業再生・承継コンサルタント協同組合(CRC)に所属している事業再生マネージャーには中小企業診断士が多いので、診断士の方は更に広いつながりができるかもしれません。

また、信金や銀行からの参加者は日本全国から受講に来ていたので、自分が住んでいる地域以外の情報を交換できる点も新鮮に感じました。

CRCは毎月セミナーを開催しており、そのセミナー後にも懇親会があります。私は養成講座を受講後、2度ほど定例のセミナーに参加しましたが、金融機関の方が比較的たくさん参加されていました。

このように、講座終了後も、定期的に受講者や事務局、講師の方々と会う機会もあるので、皆さんのビジネスにつながるネットワークができるかもしれません。 

「M&Aシニアエキスパート認定試験」 

M&Aシニアエキスパート認定資格はきんざい(金融財政事情研究会)と日本M&Aセンターが共同で行っています。

資格は3段階に分かれており、事業承継・M&Aエキスパート資格を取得すれば、次のレベルである事業承継シニアエキスパートかM&Aシニアエキスパートの資格が取得できる養成講座に参加ができます。講座費用は132,000円(税抜き)となっています。

弁護士・会計士・税理士や、銀行に一定期間以上勤めている人は、いきなり最上級のM&Aシニアエキスパートになれる養成講座への参加が認められます。

一般の人は、まず事業承継・エキスパート資格試験を受け、合格すれば同シニアエキスパート資格を受講しなくても、最上級のM&Aシニアエキスパート資格が取得できる養成講座への参加が可能となります。

3日間の養成講座を受講し、4日目の試験に合格すると、M&Aシニアエキスパートを名乗ることができます。

みちのく銀行や秋田銀行等の地方銀行などは、 このシニアエキスパートの 有資格者が何名になったかを競うように新聞で発表しているので、評価はされているようです。

試験の合格率はほぼ100%のようですが、「M&Aの専門家」という肩書は、地方ではそれなりのアピールができるのだと思います。 

一般の人がM&Aシニアエキスパートの資格を取得するためには、まず事業承継・M&Aエキスパートの資格試験に合格しなければなりません。試験はCBT形式なので、席が空いていれば最短で3日後ぐらいから受験できます。

合格には100点満点中70点が必要で、不合格になった場合、90日間同じ試験を受験することはできません。

M&Aシニアエキスパートの養成講座は年2回(5月、11月)開催されており、2019年の東京では11月6日~8日が講座、9日が試験となっていました。

講座の申し込み期限は10月18日ですから、このブログを書いている9月28日の段階で、もし今年の11月に最上級の資格を取りたけいと思うならば、すぐにCBT試験に申し込み、金融業務2級事業承継・M&Aコースの受験をして合格する必要があります。

場所にもよりますが、CBT試験は申し込み後、3日程度で受験できますし、合格証は即日発行です。受験費用は1回7-8千円です。

「10月18日までには合格が難しい、もう少し勉強時間が欲しい」と思った方は、事務局に電話すると「合格前提」で手続きだけ先に勧められると思います。

前回私が事務局に確認したところ、養成講座の申し込みは金融業務2級事業承継・M&Aコース試験は、開始日までに合格していれば良いとのことでした。

CBT試験はマークシートで、基本的なことを理解していれば1か月程度の勉強で合格できるはずです。試験内容や日程等、詳細はHPで確認して下さい。

「認定事業再生士(CTP)・認定事業再生士補(ATP)」

日本ターンアラウンド・マネジメント協会(TMA)が主催する、認定事業再生士(CTP)と認定事業再生士補(ATP)という資格があります。

CTPの取得については、かなり勉強が必要なようです。合格すれば協会員として会費を払う点は上記と同じです(年会費 ATP5,500円、CTP44,000円、入会費別)。

事業再生の資格で最初に気になったのがこの資格なのですが、資格の保有者に話を聞いたところ、「ATPならすぐ取れるし、あまり意味ないよ」と言われたので興味がなくなってしまいまいした。(あくまでもその方の意見です)

ATP試験は「経営」「財務会計」「法律」の3科目です。中小企業診断士やMBA修了者であれば「経営」、会計士・税理士であれば「財務会計」、弁護士・法科大学院修了者であれば「法律」の試験が免除になります。

ATP試験の対策は良く分からなかったのですが、TMA協会のホームページに過去問題が掲載されています。この試験を受験する際には、認定教育機関での研修60時間が必要とされていますが、金融検定協会の事業再生アドバイザー(TAA)試験に合格すれば、この60時間の研修は免除になるそうです。

TACのDVD講座を受講した場合もこの研修は免除になるようです。ただ、ATPの受験者と合格者を見てみると合格率は6割以上で、TACのDVD講座は59,000円もするので、私は興味を持ちませんでした。

CTPは事業再生関係の資格としては最も難しいのではないかと思いますが、取得にかかる手間や年会費等のコスト、更に資格所得後の仕事という点で、他の資格と比較して魅力があるのかどうかはわかりません。

興味がある方はホームページで確認してみて下さい。

「事業承継支援研究会」

最後に、東京都中小企業診断士協会のお知らせで知った事業承継支援研究会です。事業承継コンサルティング株式会社が主催しているようです。

ここでは、 資格は取得できませんが、 毎月事業承継のセミナーとケーススタディによる勉強会を行っています。

中小企業診断士だけでなく、他の士業も参加しているので、実際の事例研究やネットワーク作りには良いのではないでしょうか。

このセミナーは中小企業診断士協会内の研究会ですが、銀行員やその他事業会社等、診断士ではない人でも参加が可能なようです 。

会費は半年で9千円、毎回資料代として1千円が必要です。会費を払わなくても、1回3千円程度と資料代1千円を支払えば、スポットで参加できます。

勉強会の後は懇親会も行われていますので、士業の方や金融機関の方々と知り合いになる機会があると思います。

会は毎月第一月曜日に日本橋で開催されていますので確認してみて下さい。

資格や養成講座は内容もレベルもさまざま

私が事業承継やM&Aの資格について調べた時は、まだ情報が少なかったため、「地方銀行が新聞にわざわざ記事を載せるぐらいなら結構難しい試験なのだろう」と思っていました。

最初はM&Aシニアエキスパート資格を取得するつもりでCBT試験を受験し合格しましたが、その後、日本M&Aセンターと地方銀行との仕組みや、養成講座を受講すればほぼ試験はパスできるということを知ったため、講座には申し込みませんでした。

CBT試験は、中小企業診断士一次試験の法務に出てくる問題が多く、問題集も薄いので、頭の整理という意味では受験してみる価値はあるかもしれません。

CRCの事業再生マネージャーは、資格を取得するというより、ネットワークが広がりそうだったため受講しました。こちらは中小企業診断士や銀行員を中心に色々な人が参加しており、講座を通して知り合いになれて楽しかったです。セミナーでは吉野家の安倍会長もスピーカーとして登壇されました。

このCRCという組織は金融機関から取引先企業の事業承継や事業再生を依頼され、そこに事業承継マネージャーや事業再生マネージャーを派遣する仕事を主としています。

元々、事業再生等ができる人材を養成し、派遣することを目的に講座を開催しているようですので、試験に合格して仲良くなると仕事が来るかもしれません。講師の方々も養成講座に参加して、今の仕事に繋げている人が多いようでした。

事業承継や事業再生の資格や養成講座はネットで検索すると沢山出てきますので、ここで紹介したもの以外にも良い講座はあると思います。

取得は、「期待すること」と「費用」を考えて

最初に申し上げた通り、M&Aや事業再生・承継の仕事に資格は不要です。

M&A等や事業承継の仕事を進める上で、法務に関するものであれば弁護士や司法書士、会計・税務関係であれば会計士や税理士に依頼しなければなりません。しかし、それ以外の業務に資格は不要。誰でも業務に関われます。

不動産取引を行う人に資格が求められるのに、より複雑なM&A取引を行う人に資格が不要であるというのもおかしな気もしますが。

実際に資格取得を検討する場合は、それぞれの団体の背景や所属会員等を理解し、ご自身がその講座に期待することと費用のバランスを見極めた上で、決められることが良いと思います。

⇨ 若手や女性こそ取るべき資格「中小企業診断士」①

 中小企業のための事業承継と事業売却  

 

事業再生やPEファンドの投資先に興味がある方のために

「中小企業支援者のためのM&A・事業承継入門」には、数字や事実に基づきながら、実際に現場で起きていること、これから中小企業のM&Aや事業承継の現場で起こるであろうこと、そして、そこで必要とされる中小企業支援者のスキルや能力が書かれています。

事業承継やM&Aばかりがクローズアップされますが、根本的に必要とされるのは事業の再生です。事業再生なくして事業承継もM&Aもあり得ません。

PEファンドや事業会社、それぞれの立場から見た事業再生の実態や今後増加する中小企業の事業承継に際して必要となる小規模M&Aアドバイザリー事業の可能性について、ご興味がある方はご覧下さい。

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