事業の収支計画~小規模M&Aのアドバイザリー事業②

顧客獲得方法
M&Aアドバイザリー事業の事業収支を試算します。顧客獲得ルートは下記の3つとします。
A. 関東圏の事業引き継ぎ支援センター
B. 関東圏以外の事業引き継ぎ支援センター
C. 金融機関からの紹介
譲渡価格の10%を成功報酬、最低報酬額は1,500千円とします。企業価値算定や事業プロフィールを作成し、M&A情報サイトに掲載する際は、リスティング契約料を徴求しますが、M&A契約が成立した場合は返却します。
従業員一人当たりの年間契約社数は12件から20件で設定しました。仲介会社や事業引き継ぎ支援センターの話では、通常のM&A取引が成立するまでの期間は最低でも6か月から1年程度が必要です。
しかし、大阪商工会議所の事例等から、サイト上でマッチングを行う小口のM&A取引であれば、3か月程度で成約に至ると考え、通常のM&Aよりも期間を短くし、年間契約件数を増やしています。
日本M&AセンターのIR資料によると、コンサルタント一人当たりの年間成約件数は約3件、ストライクは中期計画で、新人を除くコンサルタント一人当たりの年間契約件数を4件と見積もっています。
本事業のアドバイザーは、仲介業務と異なり、基本的に買い手をWEBサイト上で探し、売却側に対する支援しか行いません。このため、本事業に於けるアドバイザー1人当たりの年間契約件数は12件から20件程度がは可能と考えました。
売上高のベースとなる平均報酬額は2百万円を基準としています。最低報酬額は1.5百万円ですが、譲渡価格が30百万円以上になる企業が3割程度はあると考えました。【図表1】
図表1:売上計画の前提

(出所)筆者作成
【図表2】は事業引き継ぎ支援センターからの紹介案件による売上とその根拠です。Aについては、関東圏の事業引き継ぎ支援センターに於ける2017年の譲渡希望社の集計(一部推測)数字を1.2倍したものを初年度の潜在顧客数としました。
そして、その内の20%(1年目は10%)を事業引き継ぎ支援センターから橋渡しを受ける計画としています。現状では、事業引き継ぎ支援センター案件の9割は何もせず放置されているため、本事業がその受け皿になることが可能と考えています。
更に、橋渡しを受けた案件から契約に至る割合を20%(1年目は10%)で試算しました。これは大阪商工会議所から聴取した小規模企業のマッチング成約率と同じ割合です。
成功報酬については、本事業の認知度が向上するにつれて、案件金額と共に大きくなると考えています。
尚、一人当たり契約社数については、まずは12件からスタートし、毎年10%ずつの生産性向上を目指します。
Bについては、関東圏以外の事業引き継ぎ支援センター案件の譲渡希望者数を1.2倍して初年度の潜在顧客数としました。関東圏以外の取り扱いは事業開始後3年目から計画しています。また、橋渡しを受ける率としては、潜在顧客数に対し、3年目が5%、4年目以降は7%とAの関東圏よりも低くしています。
平均報酬金額については、関東圏と同じ2百万円をスタートとし、5年目まではその金額が変わらないものとしてで試算しています。
図表2:売上計画(事業引き継ぎ支援センターからの橋渡し)

【図表3】は全国の地方銀行等からの紹介案件取り込みによる売上計画です。地方銀行の譲渡件数は全国の事業引き継ぎ支援センターからの件数を4.5倍して試算しました。
これは現在、地方銀行への事業承継の相談数が、事業引き継ぎ支援センターに対する相談数の4.5倍程度となっていることをその根拠としています。
地方銀行からの持ち込み案件に対する平均報酬金額は、事業引き継ぎ支援センターよりも高いと考え、Aの事業引き継ぎ支援センター(関東圏)の3年目の報酬を1.2倍した金額としています。
銀行からの紹介案件が成約した場合は、紹介料として成功報酬の20%を銀行に支払う(キックバック)こととします。
図表3:売上計画(金融機関からの紹介)

以上の、事業引き継ぎ支援センター(関東圏、関東以外)と金融機関からの紹介による売上を集計したものが【図表4】となります。
図表4:M&Aアドバイザリー事業 売上計画

(出所)筆者作成
収支計画
売上計画に基づいて策定した事業計画が【図表5】です。同業となる日本M&Aセンターやストライクと業績数字を比較すると、小口で手間がかかる分だけ利益率は劣りますが、十分な売上・利益を上げることができています。
原価にある紹介料は、金融機関の紹介案件に対する手数料です。紹介された案件が成約した場合に、成功報酬の20%を金融機関にキックバックします。
地方銀行は、現状でもM&A仲介会社に対し自行の顧客を紹介し、手数料収入を得ています。M&A仲介会社が採り上げないような小規模な事業売却案件に対して、高い料率で紹介料を支払うことができれば、銀行から有力な情報を集約できるだけでなく、将来は、事業再生やPMI支援等の案件につながると考えています。
当社はM&A市場では後発となるため、ある程度事業が安定した段階で、広告宣伝費を投じて認知度の向上を図ります。対象顧客が60代以降のインターネットをあまり利用しない経営者であることを考えると、地方の紙媒体やテレビ・ラジオ等を利用した広告宣伝も必要と考えます。
このため、広告宣伝費は売上高の10%と、他社の2倍の投資を行う計画です。事業開始後3年目にはシステム関連の設備投資が増加することを予想し、減価償却費を増加させています。
図表5:M&Aアドバイザリー事業 事業計画

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