中小企業のM&A市場と活用され始めたPEファンド①

企業経営者の悩み
M&A仲介会社に続き、プライベート・エクイティファンドに話を聞きました。まずは、企業価値100億円前後の中堅規模の案件に投資するグローバルファンドのD社です。
2018年にD社が組成したファンド規模は400億円でした。同社は1社に対し、40億円から最大80億円程度を投資します。投資する企業規模はこれよりも大きいですが、ファンドが投資する資金以外は金融機関からのLBOローンで調達します。
投資からExitまでは3~5年を目指していますが、Exitは早ければ早いほど良いとのことでした。最近はじっくり育ててIPOを目指すのではなく、基本的に他のファンドや事業会社への転売が主となっているようで、その意味では、ある程度再生できれば早く手離れする案件の方が好まれるのかもしれません。
昨今のM&A仲介会社の躍進はあまり気になっていないようです。むしろ、M&Aを中小企業経営者に広めてくれているという認識でした。
D社が投資候補先の企業経営者と話をしていて感じることは、経営者がM&Aや事業の承継について、或いは承継した後の経営について相談できる相手がいないということです。
M&A仲介会社はもちろん、銀行にも企業を経営した経験がある人間は殆どいないため、経営者が経営に関することで相談しようと思っても相手にはあまり理解してもらえません。
特に地方の中堅企業経営者は、自分が退任した後の事業の将来像が描けず本当に困っているようです。昨今、ファンドが中堅企業に受け入れられるようになっている背景には、こうした悩みを相談できる経営の経験がある人材をファンドが数多く抱えていることもあるようです。
経営経験がある人材との相談や支援は、経営者にとって大変大きなメリットです。このため、経営者の相談相手になると謳うだけでもビジネスになるとD社は感じています。
相談相手としての経営人材
最近D社に話が持ち込まれる案件で多いものには2つのパターンがあります。ひとつは、バブル期に創業して業績を伸ばして、経営者が60代となった企業です。こうした経営者の中には、後継者もおらず、事業への意欲も薄れている人が多いようです。そしてもう一つのケースは、大企業のノンコア事業を切り離す案件です。
前者の案件は、経営者がまず銀行やM&A仲介会社に相談し、そこから持ち込まれるものが多いようです。親族に後継者がいないため、事業は、企業の役員や社員に承継しようとするケースが多くなります。また、金額もM&A仲介会社では扱えないような大きな金額になることも多いようです。
M&A仲介会社にとっては、MBAやEBOのような、クローズまで時間がかかり、且つ高度なスキルが必要とされる案件は、取り扱いに苦労するようです。このため、M&A仲介会社は、これらの案件をPEファンドに紹介し、ファンドが案件を成就できればファンドと事業会社双方から手数料をもらいます。
M&A仲介会社にとっては、手間をかけないで利ザヤが抜ける良いビジネスになっているようです。
D社は元々、ファンドが抱える経営人材を投資先に送り込み、現場で経営者と共に汗を流して再生するハンズオン支援付の投資を売りにしてきました。
昨今は、同様の方法で投資するPEファンドが増えており、優秀な経営者や番頭となる人材を市場で採用することが困難になってきています。
このため、D社はこうした人材を自社で抱え、投資候補先の経営者の相談相手として活用し、案件が成就した際にはすぐに送り込めるようとしています。
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